大学生協のアプリ化に賛否 “大学キャッシュレス化”は本当に浸透するのか

“大学キャッシュレス化”は本当に浸透するのか

 大学生活協同組合(以下、大学生協)は利用者の一人一人が出資金を出し合うことで組合員となり、大学生活の充実に貢献する組合である。加入率は各大学により多少の差があるものの90%を占めている。(引用元:よくいただくご質問|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)

 大学生協は、大学の講義に必要な教科書や専門書を5%割引で購入可能であることや、学生が使いやすい機能をもった4年間の保証付きのパソコンの販売、麺類や丼もの、定食などの種類豊富なメニューが500円前後で食べられる大学生協食堂の運営などを通して、学生のお財布に優しいサービスを数多く行っている。

 だが、今年から導入された「大学生協アプリ(公式)」のサービスに対し、不満が数多く寄せられる事態となったのだ。

 筆者も一組合員であることから、大学生協の実態について紹介するとともに大学生協のアプリ事情を踏まえたうえで、現代の学生のキャッシュレス化の浸透について考えていく。

大学の食堂に毎日できる“長蛇の列”で昼食難民が多数 その原因とは

 今年1月、大学生協の組合会員証として利用することができる「大学生協アプリ(公式)」に「生協電子マネー機能」が追加された。これまでは、組合員が構内で教科書を購入する場合、レジで「大学生協アプリ(公式)」を起動して組合証を提示することで大学生協会員対象の確認をとり、値引きが適応される形式だったが、電子マネーが追加されたことで「生協電子マネー」での支払いが可能となった。「生協電子マネー」では、スマホ一台で教科書の購入が完了できるだけでなく、金額に応じてポイント付与が行われるため組合員が大学生協の店舗で通常よりもお得に商品を購入することができるアプリとして生まれ変わったのだ(※所属の大学生協により対応は異なる)。

 そんな「大学生協アプリ(公式)」への不満が顕著に現れているのが食堂での使い方だ。これまで、大学生協食堂では自身の所有するSuicaやPASUMOなどのICカードを「学食パス」として利用することができ、ICカードにチャージされている金額分は食堂にてタッチするだけで支払いが完了する仕組みになっていた。

 しかし今年から本アプリに電子マネー機能が追加されるとともに、非組合員価格が割高になった。つまり、大学生協の組合員は半ば強制的に生協アプリをダウンロードさせられることになり、学生の間では「ICカードで支払いができるほうが楽だった」「電子マネーの初回ログインができず困っている」などの戸惑いの声が聞かれる。従来通り現金でのレジ決済も可能ではあるが、「生協電子マネー」の利用者は事前に「大学生協アプリ(公式)」のインストールや組合員登録、「ポケペイ認証」(オリジナル電子マネー発行プラットフォーム「Pokepay」への認証)などが必要となるため、電子マネーが利用できるまでに数々の登録をしなくてはならないことが混乱を招いているのだ。

 また、決済にいたるまでのアプリの使いやすさも混乱を招く要因だと考えられる。「生協電子マネー」は「教科書マネー」や「学食マネー」など種類ごとにコードが異なるため、決済したいマネーごとに表示を変更しなくてはならないのだ。やはり学生としては、決済に至るまでどれだけタップの回数が少ないかも求められる基準であり、「生協電子マネー機能」にとっては改善するべきポイントだろう。

 そんな学生の戸惑いの声とは裏腹に進められた“大学生協アプリによるアプリ決済計画”は、登録手続きが不十分で結局現金で支払うことになる学生が多く現れたことで、サービス開始早々、複数の大学内の大学生協食堂で待ち時間が3時間になるなどの混乱が生じる事態につながったと考えられる。

  大学の食堂の問題点の一つとしてあげられるのが「混雑」だ。特に2限から3限にかけての休み時間は、最も食堂を利用する学生が多い時間帯である。だが、毎日食堂には長蛇の列ができるため、次の講義に間に合わなくなり、近くのコンビニで昼食を済ませる人も少なくない。大学生協加入者は生協食堂で安く食事を済ませることができるのにも関わらず、長蛇の列により食堂での食事を断念せざるを得ない状況に陥ってしまうのは問題である。

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