成功したらMCUを超える巨大ユニバースになるかも……DCコミックス映画のゲームを含んだユニバース化に考える「アメコミとゲームの関係性」

映画でもコミックでもない……独自の路線で走っていったDCコミックのゲームたち

 それに対して、これまでのDCコミックのゲームはマーベル作品と比べれば、映画との繋がりをあまり大きく考えずに作られてきたと言えるだろう。たとえば、2009年リリースの『バットマン アーカム・アサイラム』は、前年の2008年に公開された実写映画『ダークナイト』がの世界には合わせず、コミックで人気のエピソード「アーカム・アサイラム」から着想を得て作られている。そのため、本作にはジョーカーだけでなく、ベイン、ポイズン・アイビー、リドラーをはじめとした多くのヴィランが登場した。

『バットマン アーカム・アサイラム』ストアページより

 『バットマン アーカム・アサイラム』が高い評価を得た後、DCコミックの親会社ワーナーブラザーズは開発元であるRocksteady Studiosを子会社化し、作品をシリーズ化、『バットマン アーカム』シリーズとして、番外編含む計6作品をリリースし、ゲームだけのバットマンユニバースを拡大していった。

 ほかにも、DCコミックのゲームに対するスタンスがわかるゲームが『インジャスティス』シリーズだろう。本シリーズは『モータルコンバット』シリーズを手掛けるNetherRealm Studiosが制作した格闘ゲームで、「ジョーカーによって洗脳されたスーパーマンが街を崩壊させた世界線」に「スーパーマンがジョーカーに洗脳されなかった世界線」のジャスティス・リーグが転送され、洗脳状態のスーパーマンたちを食い止めるというマルチバース展開となっており、本作でしか楽しめないストーリーが用意されている。

Injustice 2 – Official Gameplay Reveal Trailer

 この2つのシリーズを見ると、DCコミックのIPをまんべんなく使い、コミックにも映画にもないゲームオリジナルのストーリーを展開させている。このような動きは近年の作品も同様で、バットマンが死んでしまったゴッサム・シティを舞台に、バットガール、ロビン、ナイトウィング、4人のバットマン・ファミリーを操作するオープンワールドRPG『ゴッサム・ナイツ』や、『バットマン アーカムナイト』から5年後の世界で、洗脳されたジャスティス・リーグから世界を守るため、”スーサイド・スクワッド”ことタスクフォースXが戦う『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』など、しっかりとそのスタンスを確立させている。

ユニバースのリセットで、ゲームも一度リセットされるのか?

 このようなゲームが出ている中で、映画同様、一度ゲームの世界もリセットさせ、新たなユニバースに合わせたゲームを作るというのは、筆者的には少しもったいない気もする。『バットマン アーカム』シリーズに関しては、『バットマン アーカム・ナイト』にてバットマンの話自体は、区切りのいい終わり方をしたが、『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』はさらなる広がりを見せそうだし、『インジャスティス』シリーズに至っては、2018年にはコミック、2021年には劇場版アニメもリリースされ、物語の続きを心待ちにしている人も多いはずだ。

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』ストアページより

 しかし、決して今後DCコミックがリリースするゲームに期待していないわけではない。DCコミックの親会社であるワーナーブラザーズがリリースした『ホグワーツ・レガシー』は、原作小説や映画の世界を反映し、その2つでは語られることのなかった1800年代におけるホグワーツのストーリーを描き、ファンにさらなる考察の機会を与えた。ワーナーブラザーズが持つ自社IPへのこだわりが、DCU以降のゲーム作品にも繋がれば、『バットマン アーカム』シリーズや、『インジャスティス』シリーズにも匹敵するような作品作りができるはずだ。今後どのような形になるかはまだ不明だが、MARVEL作品とはまた違った作風を持つDCコミックの味を存分に活かしたゲームづくりを今後も継続して欲しいと願っている。

〈サムネイル=DC公式YouTubeチャンネル「Chapter 1 - Gods and Monsters | DC Studios | DC」動画スクリーンショットより〉

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