「お待たせ、待った?」でお馴染み にじさんじの雑談女王・アンジュ・カトリーナの“衝動”は止まらない
マンガ・アニメ・ゲームからの影響は、自身の性格や嗜好性に深く影響を与える。その強さを、この記事を読む多くの読者であれば分かっていただけるだろう。
アンジュも御多分に漏れず、それらのコンテンツからかなりの影響を受けている。そのなかでも注目されるポイントは、センシティブな話題、つまり性的な話題に強いという点だ。
彼女は腐女子・夢女子といわれるようなGL系の作品だけでなく、男性が読むような成人漫画も好んでおり、頻度は少ないものの自身が持つさまざまな趣味性・嗜好をあけすけに話すことがある。
これに伴って成人漫画や同人界隈のカルチャーやその著者への造詣も深く、”エロ”に対する耐性が高いことも影響してか、鈴鹿詩子、竜胆尊、郡道美玲と意気投合し、彼女らとともに「SKB部(スケベ部)」を結成している。このSKB部では、その名の通りセンシティブなエロいネタを取り扱うだけでなく、メンバーとともにゲーム配信などもしてきた。
下ネタやエロいネタは、他のメンバーの間でも会話のアクセントとして話題に上がったり、配信の一企画として取り上げられることがある。ただ、基本的には「お笑い」のひとつとして扱われ、あくまでも配信を盛り上げるエッセンスとして受け取られることが多い。アンジュ自身は積極的に下ネタを話すタイプではないのだが、こういったセンシティブな話題における嗜好性にはどこかヒネったものが多く、ファンの注目を集めることが多いのだ。
そんな彼女が2021年1月11日から3年連続で続けている有名企画が、「おすすめ成人向けマンガ」を紹介するという企画だ。企画の内容としては、前年までの1年でアンジュが読んだ成人向けマンガを40本から50本チョイスし、サクサクと簡単にそのマンガの内容を語っていくというもの。
「個々の優劣をつけるのではなく、ここが好き!と思えるものを話したい」「エクセルを用意して、バーっと作品をあげて真面目に考えた」と話しているように、そのチョイスは様々。ただ、やはりそこで挙がる作品は「純愛」「ネトラレ」「触手」「BL」などシチュエーション・関係性などが強く押し出されたものが多い。そうしたカルチャーに興味を持つ人にとって、日本の成人マンガ・エロ同人特有の「作風」「癖」を知るには打ってつけの配信かもしれない。
「女性が男性向けの成人漫画について熱く語る!」というと違和感を覚える方も中にはいるかもしれない。しかしこういった配信が許容され、多くのファンから楽しまれているという状況は、LGBTQへの理解やセクシー女優の社会的地位向上・偏見の是正といった動きが広まってきている2020年代らしい一面にも筆者は感じられる。
この1~2年は影を潜めているが、じつはアンジュにもゲーマー気質なところがあり、連日とまではいわないまでも5時間を超えるような長時間のゲーム実況配信を行なうことも多い。
なかでも『Minecraft』『ARK: Survival Evolved』といったコツコツと作業をこなすようなゲームは彼女の得意としているところだ。他方で、名作『UNDERTALE』のクライマックスシーンではその幕切れに心動かされ、プレイを中断して泣き初めてしまうなど、ここまで書いてきたような「内内で済まそうとする秘やかな性格」「自分では抑えきれない情動」「うまくこなしているのに何故かドジを踏んでしまう」といったアンジュらしい一面が、何度も顔を覗かせる。
VTuberに限らず、配信者やストリーマーにハマるキッカケの一つとして、「人柄や言動が共感を誘う」という部分があるだろう。
社会経験が多いからこそ、自身の嗜好性との距離感や他人との違いをしっかり認識し、一層自身を厳しくみてしまう。一方で、インターネットの中だからこそ秘めた趣味や衝動を隠すことなく、存分に発することができる。彼女の言動・振る舞いは、現代日本に生きている人々の生き様・悩みそのものを見せてくれるようであり、その姿・表情に共感する方も多いだろう。
お酒を飲みながら雑談配信をしていると、ほぼ確実にコップからお酒を零してしまい、デスクトップを汚してしまう。リスナーから咎められると「うるしゃいなぁ!こぼしちゃって大変なんだよぉ!」と情けない声をあげながら反論してくる。そんな自身を飾らない姿や、情けない姿を隠そうとしないところさえも、彼女の魅力の一つなのだ。
しかもアンジュの場合、家族や友人たちが彼女の活動について知っており、またにじさんじ内には沢山の同僚に加え、長年仲の良い幼馴染らまでいるのだ。本当なら隠していたいことであっても、隠さぬまま、それまでの人生で経験したものや自分自身のすべてを活かし、そうした在り方から滲み出てくる人間味こそがアンジュ・カトリーナの一番の魅力といえよう。
「好きなことで生きていく。そこで生まれた責任も背負って生きていく」それを体現する彼女の姿は、まさに「バーチャルYouTuber」としてのロールモデルといえるかもしれない。