業界の最前線を走るキーマンが語り合う“VRゲームの現在地” MyDearest・岸上健人 × あまた・高橋宏典対談

業界でも珍しい2社作品を詰め合わせたバンドル販売。その柔軟さが生んだ思わぬ発見

――先日、両社が『オノゴロ物語』と『Last Labyrinth』、『東京クロノス』、『ALTDEUS: Beyond Chronos』をバンドルでリリースすることを発表しました。業界にとってもすごく良いことだなと感じたのですが、実現に至った背景は?

高橋:僕の方から岸上さんに「日本のVRゲームを盛り上げていきたいので、バンドルとかやりませんか?」とラフに提案したら、「いいですね!」と二つ返事で返していただいて、あっさりと実現しました(笑)。

――高橋さん側からの提案だったんですね。ラフな形で決定こそしましたが、VRゲームかつ開発会社をまたいでのバンドルは、異例でもあると思います。

岸上:先ほど高橋さんが配信にシフトしたとおっしゃっていましたが、配信でセールをするのは比較的簡単なんですよね。

高橋:Steamはシステムの自由度が高くて、ああいうパック形式での販売は基本的に同じパブリッシャーしかできないのですが、Steamはどんな会社のものでもひとつのバンドルに入れられる仕組みが整備されているんです。なので、それを日本のVRゲームの括りでやれるなら、すぐにやらない方が損じゃないかと感じ、提案した次第です。

――実際にバンドルでの販売を行ってみて、反響はいかがでしたか?

高橋:レポートを見ていても、継続的にバンドル経由で購入していただいていると感じます。Steamのバンドルは柔軟性が高くて設定の仕方がいくつかあるのですが、デフォルトの設定だとバンドルの中のどれか1本でも持っていると、残りのタイトルを割引の価格で買えるので、『オノゴロ物語 ~The Tale of Onogoro~』から興味を持ってくれた方が同じ会社の繋がりで『Last Labyrinth』を遊んでくれたり、バンドルを組んでいる『ALTDEUS: Beyond Chronos』や『東京クロノス』を割引になるからと遊んでくれたり。なにかのきっかけで知ってくれて、そこから買ってくれる、という流れは一定数できています。

高橋宏典氏

――今の時代ならではですね。あとはプラットフォームの部分で言うと、VR機器以外への対応についても注目が集まっています。今回『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』がSwitch版をリリースするとアナウンスしたのは、業界的にエポックメイキングな出来事なのかなと思いました。岸上さんに伺いたいのですが、Switch版の開発を行っていくなかで、新たに気づいたことなどがあれば教えてください。

岸上:リリース前なので未知数な部分も多いですが、個人的にはアリなのではないかと思っています。VRゲームはテクスチャを綺麗に描くのですが、それをSwitch用に起こしてみると、すごくグラフィックが綺麗に見えるんです。

高橋:VRで見る面積とSwitchの液晶や有機ELで見る面積を比べると、Switchの液晶の面積の方が詰まって見えるんですよね。

岸上:そうです。なので想像以上にハイエンドに見えたことは“偶然の発見”でした。ぜひみなさんにも楽しみにしていてほしいです。

高橋:コンソールからVRに移植するより、VRからコンソールに移植する方が楽なんですよ。プラットフォームによってレギュレーションは違うんですが、VRのゲームって右目と左目の2画面分の絵を秒間60枚描かなきゃいけないんですね。普通のゲームだと、アクションゲームでも60フレームで1画面。そう考えると平面モニター向けに移植する方がスペックの余裕があるんです。それはメリットといえるかもしれませんね。

――では今後も、VR機器以外への対応の余地もありそうですか?

岸上:あると思います。

高橋:もちろん向き不向きはありますが、両対応できるようなタイプのゲームも結構あると思っています。VR初期は、FPS型の平面ゲームをVR化したらその方が受けたということもありましたし。『SUPER HOT VR』なんかはむしろVR版の方が避けるときの感覚がしっくりくるみたいな。VRと平面の両対応でそれぞれの面白さを引き出せるようなデザインのゲームは結構あると思っているので、両対応タイトルも今後増えてくるのかなという気はします。

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