24歳男性の「手取り14万円の日常」発信する動画がYouTube急上昇入り “幸せ”について考えさせられる内容が反響呼ぶ

 1月3週目、YouTubeの急上昇に24歳男性の日常を切り取った「だいチャンネル」がランクイン。男性、女性問わずYouTubeで人気を博すVlogのなかで、なぜ視聴者はだいチャンネルに魅了されるのか。今回は、このチャンネルの魅力を分析してみたい。

 だいチャンネルは、24歳男性が運営する「生きた記録」を投稿しているチャンネル。登録者数は5.73万人とまだ小さなチャンネルながらコンスタントに再生回数を稼いでおり、中には139万回という驚異的な数字をもつ動画もある(数値はどちらも1月22日時点)。

孤独な男 怠惰

 今回急上昇入りしたのは、だいの仕事終わりの様子を収めた動画。帰宅しただいは荷物を置くと、そのまま畳の上でしばらく動けないほどクタクタな状態だ。寒さが伝わってくる台所で米を研ぎ、部屋では半纏とストーブ、こたつで暖をとる様子が写しだされている。この日の夕食は母親が「作りすぎたから」とお裾分けしてくれた肉じゃがと、湯気の上がった炊き立ての白米。口いっぱいに頬張り、子どもの頃から慣れ親しんだ母の味を噛み締めている。食後はよく見ているというYouTube動画を視聴し、ペットのメダカに餌をあげて就寝という内容だった。

 ほかの動画を見ると、だいは現在日給1万円の仕事で生計を立てており、2022年11月の月収は手取りで14万円ほど。以前勤めていた会社を退職するタイミングで、倉庫として借りていた築80年ほどの一軒家に引っ越してきたことを報告していた。割れてしまったガラス戸や襖の障子が破れた箇所は新聞紙で塞ぎ、風が入ってくるのを防いでいる。台所は傾いており、ところどころに家の古さが感じられる。

 都会のキレイな部屋で撮影されたオシャレVlogが人気を集める一方、だいの動画は素朴な生活を捉えたもの。給与は高くはなく、裕福な暮らしをしているわけでもない。あまり喋りが得意ではないようだが、伝えようとする気持ちが伝わってくる話し方や、日々直向きに仕事をし、いつも感謝の気持ちを忘れない姿が印象的だ。こういった素朴な生活やだいの姿に、視聴者からは「癒される」「穏やかな気持ちになる」という感想が寄せられているのだ。

 だいの動画には、昔ながらの日本の冬の風景があり、懐かしさや温かみがある。ゆったりとしたBGMの効果も相まって、ホッコリさせられる視聴者が続出している。給与をもらうことが当たり前になってしまった社会人にとって、だいの動画は給与がもらえることへの感謝の気持ちを思い起こさせるきっかけになっていることがコメントから読み取れる。子どもをもつ視聴者には、だいの擦れていない性格や「当たり前のことが当たり前ではない」ことを教える見本としての役割もある模様。すでに子どもが巣立っていった世代の視聴者たちのなかには、自身の子どもとだいを重ねて見ている者もいるようだ。

 視聴者のコメントを見てわかるように、このチャンネルの特徴は視聴者層が驚くほど幅広いことにある。しかし1番興味深いことは、何不自由無く生活を送っている視聴者に、質素ながら温かみのあるだいの生活が「幸せとは何か」を考えさせる機会になっていることだ。YouTube上には独身男性のVlogチャンネルは数多存在し、それぞれのイメージ・カラーをしっかりと出し、コアなファンをもつVlog系YouTuberも多い。だいがYouTubeで投稿を始めた際、上述のような視聴者の反応を想像していたのかはわからない。しかしながら、真っ直ぐに生きる姿を写し、ほかのVlogチャンネルではみられない誰しもが抱く「幸せ」への疑問を提起した動画になった結果、業種や性別、年齢に関係なく支持され、注目が集まったのではないだろうか。

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