広告収入が10分の1になったYouTuberは、果たして「オワコン」なのか? アナリストに聞く“市場の現状と専業YouTuberの未来”

YouTubeはオワコンではない

――YouTuberの広告収入は減少しているのですか?

森:ただ単に再生されなくなり、広告収入が減っているのではないでしょうか。「YouTubeはオワコン」という論調もありますが、株式会社サイバーエージェントが発表した『2021年国内動画広告の市場調査』によると、むしろ動画広告市場は右肩上がりです。また、株式会社CA Young Labと株式会社デジタルインファクトが共同で発表した『国内YouTuber市場動向調査』でも、国内YouTuber市場規模推計は増加傾向を見せています。

 テレビを主に見ていた視聴者がYouTubeに流れ、これまでGoogleやYahoo!など検索エンジンを利用していた人がYouTubeで検索することも増えています。テレビCMを打っていた企業がYouTubeに変更するケースも珍しくありません。

(参考:サイバーエージェント サイバーエージェント、2021年国内動画広告の市場調査を発表
(参考:サイバーエージェント CA Young Lab、2017年国内YouTuber市場調査を実施

――YouTubeは今後も盛り上がりそうですね。

森:インパクトのあるコンテンツを出して再生数を伸ばしてお金を稼ぐ、ということが以前の流れでした。ただ、似たようなコンテンツが溢れて、視聴者から選択されなくなり、収入が減少した人が増えているのかなと思います。とはいえ、収入が増えているチャンネルがあるのも事実です。

――ただ、「広告単価が下がった」という可能性もあるのでは?


森:それは考えられますが、それは公表されていないので何とも言えません。ただ、「再生数は多いけど途中で再生を止めてしまう」という動画が多い場合、YouTube側が「視聴者の質が低い」と判断して、そのチャンネルの広告単価は変化します。「再生数は変わっていないけど収入が落ちた」と嘆いている人は、この可能性が疑われますね。

――最後まで閲覧できる動画を作れるかが重要ですね。

森:そうです。ただ、最後まで見てもらうために「動画時間が短い動画を制作する」という手法もありますが、短い動画も広告費が低いという話を聞いたことがありますね。とはいえ、YouTube Shortsは2023年2月からの広告収益化を発表しており、短い動画だからこその戦い方を見出せれば収入アップも望めるのではないでしょうか。

専業YouTuberとして参入する難易度は上がる

――得られる利益が分散している?

森:そういう見方もできます。YouTubeに対して企業が投下する広告費も大きくなっています。以前は100を分け合っていましたが、今現在は200を分け合っているイメージ。広告費は200に増えましたが、チャンネル数も増えたため、より分散している印象です。

――迷惑系YouTuberが台頭して広告主がつかなくなった、というわけではないのですね。

森:そうですね。過激な企画で再生数を稼ぐ人は、一時は注目されました。いま現在はそういう動画は淘汰されつつあります。そもそも、「どういうチャンネルに広告を流すか」は広告主がある程度は選択できるので。

――今後、個人がYouTuberとして生活することは難しくなりますか?

森:よほどコンテンツに工夫や独自性がないと「YouTuber一本で飯を食う」ということは難しいでしょう。その場合、動画編集のスキル、先述したアルゴリズムを仮説検証する分析力も必須です。一方で副業レベルの収入を求めたり、自身のネームバリューを高めたりしたい場合は参入する選択肢もありだと思います。

――たしかにYouTubeで知名度を高めて、note購入やLINE公式の登録を促すケースも増えていますね。

森:総務省が発表した『令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』によると、YouTubeの利用率は87.9%。最多は20代(97.7%)でしたが、60代(67.0%)でも約7割です。メディアとしてすでに確立されています。今までのような一攫千金は難しくなりましたが、個人やサービスを認知させ、ファン作りをする場としては有効です。今後は新しいメディアやSNSが登場すると思いますので、そこに誘致してマネタイズすることが一般化するかもしれません。

(参考:総務省情報通信政策研究所 令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

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