『相席食堂』から着想を得たホラーミステリー? 『この動画は再生できません』制作陣が語る“現代の映像トリック”
着想を得たのはまさかの「相席食堂」
ーーInstagramのストーリーズやYouTubeライブ、ジャンプカットを用いた映像トリックは比較的新しい切り口のように思えます。なぜSNSと絡めたのでしょうか?
谷口:心霊ビデオのジャンルにおいては、InstagramやYouTube、生配信がギミックとして取り入れられることが年々増えているんです。これは昔からそうなのですが、映像システムが変わっていく中で、進化せざるを得ないのが心霊ビデオというジャンルの宿命です。メディアが変わっても、そこに霊がうつるかもしれないというロマンは、ずっとあるんですよね。
河口:貞子がまさにそうですよね。最初はVHSでしたけど、いまはもうVRにまで登場しますから。
ーー今回の番組を作るに当たって、着想を得た作品があれば教えてください。
河口:ミステリ作家・綾辻行人さんが手掛けた短編ドラマで、映像ならではのトリックを使ったミステリ作品があり、その影響はかなり受けています。実は、ご本人がTwitterで、この番組を「おもしろい!」と言ってくださっていて、すごくうれしかったです。
谷口:これはあまり誰にも話していなかったのですが、かが屋のおふたりが登場する編集室のシーンは『相席食堂』から着想を得ています。編集室って独特のグルーヴ感があって、どうでもいい素材がおもしろくなっていく瞬間があるんです。その感じがまさに『相席食堂』の「ちょっと待てぃ!!」なんですよね。
それから映像トリックに関しても、余白を多くして視聴者に委ねる感じは、かなりヒントを得ています。ぱっと画面が切り替わったら、角刈りになっていたり、夜になっていたり、視聴者が「カットされた!」ってわかった上で見ている感じも影響されていますね。
ーーいまのお話を聞いて、動画編集がわりと一般的に認知されているからこその作品のようにも感じます。視聴者が置いてけぼりにならない程度の映像トリックというのは、どの段階で意識されたんでしょう。
河口:あくまでも素人の投稿という設定なので、ギリギリスマホ一台でできる編集というのは意識しました。
谷口:たしかに映像から隠したいものというのは、作り手が常に意識していることですもんね。たとえばですけど、そのシーンにそぐわない印象の人が映り込むのを避けて画角角度を変えたり、発言の一部をテーマに沿うように切り取ったり。あれって、自分もほとんど無意識的にやってしまいますけど、ものすごく意図を持って映像を作っているんです。その感覚が当たり前になっていることの残酷さは入れたいと思いました。
続編は配信とテレビでマルチエンディングもあり?
ーーかが屋のおふたりをキャスティングした理由は、なぜでしょう?
河口:企画段階で、かが屋さんにお声がけしていました。ホラーパートで得体の知れない映像を流すのなら、解決パートではぱっと見で「いままでのはドラマだ」とわかるようにしたいなと思っていて。見た目もキャッチーでお笑い芸人として知られている2人が出ることで、いい意味で作り物ということがわかる安心感を与えられるかなと思ったんです。
谷口:実際にご一緒して感じたのですが、もともと放送作家志望だった賀屋さんと、カメラが趣味の加賀さんという、普段からクリエイティブな目線を持っている2人だからこそ、すぐに役に入ってくださったなと。あと、コンビという関係性に、編集室で長い時間共にしてきた人たちの空気感に近いものを感じました。どちらかに演出をつけるときに、自然と2人で聞いて、2人で作り上げている感じも心強かったです。
ーーすでに放送は終了していますが、Amazonプライムでの配信を見た方からはかなり高い評価を得ています。なぜだと分析していますか?
河口:Amazonプライムではホラーパートと謎解きパートを繋げた全4話で配信しているのですが、あれって苦肉の策なんですね。テレビで放送していた時は15分。ホラーパートと謎解きパートをそれぞれ1話として放送していました。本来はモヤモヤで終わらせて1週間引きずってほしいところを、その2つを組み合わせた時にどうなるんだろうというのは読めていなかったのですが…おかげさまで火がついたようで。エンタメの消費速度が早まった現代で、スピーディーに解決するというのも受けた理由かなと思っています。
谷口:「あの形式、初めて見た!」というコメントをいただくのですが、そういうつもりで作っていなかったので、正直驚いています(笑)。完成したものを見て、これはこれでおもしろいなと思いました。
ーー続編や現代テクノロジーを駆使したトリックを使う作品を作る予定はございますか?
河口:構想はあります。ただ、テレビ局の枠を確保しなくてはならないのと、かが屋さんも監督も、かなりお忙しいので……。
谷口:いえいえ、そんな!
河口:今回、Amazonでの配信で火はつきましたが、私としてはテレビ番組としてやれるところ、毎週繋げてみたら楽しめる内容にチャレンジしていきたいなと思っています。たとえば、副音声をつけたり、dボタンを使ったりとか。
谷口:それはおもしろいですね。いまって、テレビでも見る、配信でも見る、再放送でも見るというのができる時代なので、どこでみられるかを意識するかというのが非常に難しいんですよね。ただ、そこは変えずにテレビで見ている人たちに向けて作りたいですよね。
河口:配信とテレビで別のクライマックスにするとかもありますしね。テレビでできることはテレビでやりつつ、配信でひとつの作品としてまとまるような仕掛けができたらなと思います。
谷口:それから、Amazonでの評価では「ホラーだけど怖くない」「ホラー苦手だけど意外と見れた」との声もありましたが、僕としては怖がらせようと思って作っていたので。続編があったら、こちらとしてはより真剣に怖がらせたいです。
■この動画は再生できません(再放送)
放送日時:毎週火曜 深夜24:00~24:15
放送局:テレビ神奈川
Amazon Prime Video、 U-NEXTほか各種動画サイトでも配信中
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