NHK×Spotifyの相乗効果で生まれた「音声コンテンツの新たな可能性」 『その後のプロフェッショナル 仕事の流儀』住吉美紀&制作キーパーソンが語り合う

 Spotifyは9月21日、ドキュメンタリーからエンターテインメントまでNHKの多彩な番組を数多く手がけてきた株式会社NHKエンタープライズと、Eテレの教育・教養・実用番組を中心に制作を行う株式会社NHKエデュケーショナルが新たに制作するオリジナルのポッドキャスト5番組の独占配信を開始した。

 その先頭を切って配信されたのが、『その後のプロフェッショナル 仕事の流儀』。人気ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』で取り上げた、各分野のプロフェッショナルたちのその後を追ったもの。パーソナリティは番組の立ち上げ時にNHKのアナウンサーとして同番組を支えた住吉美紀が務めており、当時の秘蔵エピソードなどが住吉とゲストの両方から聞けるとともに、それぞれのその後などが対話形式で引き出されていく過程が、非常に聞き心地の良い音声コンテンツとして展開されている。

 そこで今回は、パーソナリティの住吉氏と、番組を手掛けるNHKエンタープライズ シニア・プロデューサーの末次徹氏、スポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括の西ちえこ氏による鼎談を実施。超大型といえる取り組みが生まれた経緯や、番組の反響などについて迫っていく。

厚い支持を得る『プロフェッショナル』がポッドキャストに展開された理由とは

ーー今回のプロジェクトが始動した経緯を教えてください。

Spotify 西ちえこ(以下、西):今年の春先ぐらいにNHKさんの方から、「なにかコラボできませんか?」とお声がけいただいたところから始まりました。NHKさんは、最初から明確に「テレビだけではリーチできないオーディエンスへリーチすること」をビジョンに掲げられていたので、こちらも提案がしやすくて、進行はスムーズでしたね。

スポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括 西ちえこ氏

 コンテンツに関して言うと、Spotify用の番組を企画してくださるのかと思っていたら、『プロフェッショナル』というすでに多くの支持を得ている番組をポッドキャストで展開したいと提案してくださったので驚きましたし、嬉しかったです。ポッドキャストは学習系・教育系コンテンツと相性がいいので、Spotifyとしても強化したいと思っていたジャンルですから。既存の番組ファンの方はもちろん、まだ見たことがない方にもポッドキャストを聞いていただいて、テレビ番組の『プロフェッショナル』にも興味をもっていただくといったサイクルを作れたらと思います。

ーープロジェクトの企画には、末次さんも携わられていたのでしょうか?

NHKエンタープライズ 末次徹(以下、末次):僕は途中からこのプロジェクトに加わった形で、今年の夏まではテレビの『プロフェッショナル』のプロデューサーをしていたんです。そんなときにたまたまこのプロジェクトの担当プロデューサーから、『プロフェッショナル』のスピンオフをポッドキャスト番組として制作できないか、と相談を受けました。テレビだけではリーチできない層もいますし、今後は様々なメディアを駆使してコンテンツを発信していくべきだと考えていたので、ぜひやりましょう、と返事をしました。

ーー住吉さんは、この話を受けたとき、どう思いましたか?

住吉美紀(以下、住吉):企画アイデアについて聞いてすぐ、私が30代、40代でやってきたことの総決算だ、と運命を感じました。『プロフェッショナル』は私の人生を変えた大事な番組ですし、スタッフとも家族のように付き合っていました。私はNHKを離れましたが、今一度大好きな仲間と大切な番組をテーマに、こうして別の形で仕事をするチャンスが巡ってくるなんて、と鳥肌が立つような思いでした。しかも、この10年ラジオとガッツリ向き合ってきて、音声メディアやポッドキャストの強みや可能性をヒシヒシと感じていました。なので、このプロジェクトに「興味ありますか?」と声をかけられたとき、「めちゃくちゃある!!」と飛びつきました。

 実際に番組を制作するにあたっては、私が今まで培ってきた人間関係と、この10年間でラジオ番組から得た知見を大いに活かすことができました。より良い番組にするためゼロから議論しながら作ったので、無事に配信ができたときは個人的にも本当に感慨深かったです。多くの方にぜひ聞いていただきたいです。

ーー西さんは、実際に完成した番組を聞いてみてどう感じましたか?

西:住吉さんの熱量がとても感じられて、なにかすごいものが出来上がったぞ、とワクワクしました。ゲストの方と住吉さんとの信頼関係や親密さが、声を通して感じられるんですよ。冒頭を少し聞いてみただけでも、とてもいい番組になったという手応えがありました。

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