マーダーミステリーを『水ダウ』や『逃走中』のように観て楽しむ――ノーミーツ広屋佑規×放送作家・白武ときおが語り合う『POLARIS』の挑戦

ノーミーツ広屋佑規×放送作家・白武ときお 対談

「お笑い芸人チーム」と「YouTuberチーム」の違いと面白さ

――事前情報をほとんど入れずに公演の当日に拝見しましたが、確かに想像していたよりも非常にシンプルで、新しくもありながらバラエティとして気軽に楽しめる感覚がありました。今回はお笑い芸人チーム/YouTuberチームと分かれていましたが、キャスティングにはどのような意図があったのでしょうか?

白武:ある程度関係性のある、初対面同士が少ない形でチームを編成しています。プレイヤーの皆さん、マーダーミステリー自体初めてという方がほとんどですし、アドリブの会話で進行していくので、完全に初対面というのは少し難しいかなと。

 2つのチームに分けたのは、同じマーダーミステリーでも参加する人によって推理の仕方や取り組み方がどのように違うのかを僕たちも見てみたいなと思いまして。

広屋:みなさん、ゲームを進めるうちにだんだん感覚を掴んでいきましたね。

白武:プレイしている最中は皆さん真剣そのものだから、公演で客観的に観ることで、プレイヤーのみなさんもようやく純粋に楽しめたんじゃないかなと。ほかのプレイヤーが裏で何をやっていたか、誰にどんな意図があったとか、そういうこともプレイ中はお互い知らないので。

広屋:その点はお客さんたちと同じ目線というか、いち視聴者として楽しまれていた部分もありますよね。YouTuberチームは映像を観ながらメタ的なコメントを結構入れていて、すごいなと思いました。お笑い芸人チームはもう、芸人としての振る舞い自体がめちゃくちゃ面白い(笑)。

白武:出演者目的でご覧になった方々もいますけど、中にはマーダーミステリーに興味を持ってご覧いただいた方もいたみたいで、それも嬉しかったです。

――プレイと公演それぞれで、予想外だったことはありますか?

白武:(お笑い芸人チームの)檜原くんがとりわけ早く物語の中でキャラクターの面白さを発揮していたというか、立ち回りを掴んでいたのが良かったなと思います。あとはサツマカワRPGさんはいつでもサツマカワRPGなのでその異物感があって、ストーリーの中でどうなるかと思っていましたけど、演技やゲームプレイがめちゃくちゃ上手で驚きました。

広屋:いや、そうなんですよ。あれだけキャラクターが強烈でありながら芝居もうまいんだなって。普段から、かが屋さんのコントなどは拝見していましたけど、アドリブ芝居ではこう振る舞うんだなとか。芸人さん3人とも全然違う方向に笑いを生み出していてすごかったです。

 そこにひとり、芸人ではない田島芽瑠さんが参加したわけですけど、3人との関係性がないのに堂々としていて、果敢に食ってかかっていく感じもすごかった。

白武:田島さんがいたので、加賀くんがツッコむ回数が減っているくらいでしたね。

広屋:YouTuberチームのみなさんは、プレイの組み立てから公演でのコメントの選び方、どれも本当にすごかったですね。まずマーダーミステリーのプレイとして一級品だと思いましたし、それでいてみなさんのキャラクターも発揮される面白さも兼ね備えていましたから。

白武:公演でいえば、お客さんも含めみんな一緒にテレビを観ているような感覚を共有できていたのか、早い段階で頻繁に大きな笑いが起きていて嬉しかったですね。

広屋:視聴し始めてすぐにプレイヤーのみなさんがテンポや面白さを掴んでいて、コメント力が光っていましたね。僕は普段お笑いライブを作っている人間ではないですけど、今回あらためて同じ場所に人が集まって笑いが生まれる瞬間のすごさを感じたというか。高揚感があるし、満足度が高くて、いい時間になった感覚があります。

白武:確かにそうですね。

広屋:すでに、観ていただいた方々から「これは新しいエンタメなんじゃないか」と反響をいただいているのですが、それは現場のグルーヴ感というか、場の熱狂から生まれたものもあるんじゃないかと。配信+副音声コメントの形だけでもできたわけですけど、公演をやることの意味があったと改めて思いました。

――マーダーミステリーはネタバレができないゲームジャンルですが、今回の公演は(犯人を明かさなければ)60秒までの動画シェアが許可されていましたよね。あれはかなり画期的な取り組みだなと。

広屋:いまってみんなスクリーンショットだけじゃなくて、YouTubeとかでもありますけど切り抜きによってセンスを発揮するというか。編集力のようなものがあるじゃないですか。

 個々人が「自分はここが一番面白いと思った」「特に見せ場だと思った」といった箇所を動画で切り抜いてシェアしてもらうことで、面白がり方が広まっていくんですよね。これって、難しい企画や番組においてすごく効果的だと思うんです。

白武:どこをどう面白がって観てもらえたのかがわかると、作る側としてもいいですよね。実際、結構シェアしていただいているようで、ありがたいです。

広屋:正直な話、今回は宣伝が一番の懸念だったんです。マーダーミステリーは事前にネタバレできる範囲が限られているし、新しい取り組みなので、面白がり方を事前に伝えるのも難しくて。でも公演をご覧になった皆さんが、面白いと感じた場面をシェアしてくれる。するとアーカイブ視聴につながるし、次回以降の企画にも活きてくるので、やってよかったと思います。

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