The Game Awards 2021大賞の『It Takes Two』、Switch版もやっぱり面白かった

 一般的な「ビデオゲーム」には、一人で腰を据えてじっくりと楽しむシングルプレイのゲームと、ローカル/インターネットを通じて様々なプレイヤーと競い合うマルチプレイのゲームなどがある。だが、Hazelight Studiosが手掛けた『It Takes Two』は、その中間にある「友人や家族と一緒にじっくりと楽しむ」という協力プレイの魅力を徹底的に追求した、業界でも異例の「二人プレイ専用」作品である。

 2021年3月に発売された本作は、登場から間もなく大きな反響を巻き起こし、ゲーム業界における最大級のアワードである『The Game Awards』を筆頭に数多くのメディアで同年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに選出されるほどの高い評価を獲得した。本作の登場は、ゲーム業界全体においても大きなインパクトを与えたのである。

 そんな『It Takes Two』に、ついに待望のNintendo Switch版が登場した(11月5日発売)。これで、より多くの人々が気軽に本作に触れることができるようになることだろう。筆者個人としても、本作は昨年発売されたゲームタイトルの中でも特にお気に入りの一本であり、本稿では実際にSwitch版を触ってみた感想と合わせて、改めてその魅力について紹介していきたい。

離婚を決意した夫婦が挑む、予測不可能な冒険の物語

 「仕事のプレッシャーに追われる夫のコーディと、娘のローズの子育てに奮闘する妻のメイ。やがて、それぞれの抱えるストレスは限界に達し、二人は離婚を決意してしまう。その光景に大きなショックを受けたローズは、二つの小さな人形を手に、両親の関係が元に戻ることを願いながら涙を流す。その瞬間、不思議なことに夫婦の意識がその人形へと乗り移ってしまった!

 戸惑いを隠せない二人の目の前に現れたのは、自らをDr.ハキムと名乗る、言葉を話すお節介な自己啓発本だった。「絆を修復するんだ」と語る彼に導かれるまま、かつて仲違いしてしまった夫婦は、元の姿に戻るため、最愛の娘に再会するため、互いに力を合わせなければ進むことのできない冒険へと挑むことになる。そんな二人に待ち受けていたのは、それぞれが背を向けてきた過去の様々な出来事と、その代償だった。

 これが『It Takes Two』の物語だ。二人のプレイヤーは片方がコーディを、もう片方がメイを操作することになるが、本作の「協力プレイ」とは、文字通り二人が「協力」しながらゲームを進めていくことを意味している。二つのスイッチを同時に押したり、二人分の力でやっと動かせるレバーを操作したりといった具合に、冒険の道中には「二人で力を合わせないと進めないギミック」が大量に散りばめられているのだ。もし片方が調子に乗って突っ走ったとしても、恐らく数分で進行不可能に陥ることだろう。

 それだけではない。ゲーム内の各チャプターでは、それぞれ状況に応じてコーディとメイに個別のアビリティが割り当てられている。たとえば、序盤のチャプターでは、コーディは釘を投げられ、メイだけがその釘に掴まって先に進むことができる。つまり、コーディが釘を投げないことにはメイは先に進めないし、進んだ先でメイが別のルートを作らないとコーディは動けないのだ。

 プレイヤーはそれぞれのアビリティの違いを理解し、目の前のコースの障害をどのように乗り越えるか相談し、足並みを揃えて共に行動していく必要がある。この「お互いの違いを理解し、相談し、共に行動する」というプロセスは、ゲームを操作するプレイヤー自身の姿と、ゲーム内で冒険を進めていく夫婦の物語の双方に共通するものであり、それこそが『It Takes Two』の核となっているのだ。とにかくお互いを理解した上で話し合わないことには、このゲームをクリアすることはできないのである。

 さらにプレイヤーが飽きたり夫婦仲がダレたりすることを防ぐため、チャプターが切り替わるごとに、アビリティはまったく異なるものへと変貌していく。本作はいわゆる『スーパーマリオ』シリーズに代表されるプラットフォーム・アクションだが、チャプターによってはゲームのジャンル自体がまるごと変わってしまうほどで、その都度、お互いに新たな環境に慣れる時間を必要とする。そんな予測不可能な冒険を終える頃には、コーディとメイは勿論のこと、実際のプレイヤー同士の関係性においてもポジティブな変化が訪れているはずだ。

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