リサイクル率はなんと96%超! 『ボーイング777』を無駄なく再生するJALのこだわり(前編)
近年、世界的に加速しているSDGs的な取り組み。個人、企業を問わずあらゆるレベルでの動きがあるが、なかにはこんな巨大なものまでと驚かされたのが『ボーイング777』のリサイクルだ。実際の作業などが見られる貴重な機会があったので、羽田空港に隣接するJALメインテナンスセンターを訪ねてみた。
航空機が複数収まる巨大なハンガーに鎮座していたのが今回の主役である、退役機『ボーイング777-200』(機番JA772J)。外観は綺麗で素人目にはリサイクル対象に見えないが、高い品質を求められる航空機材としては退役となり、そして今、JALが力を入れている国内リサイクルフェーズへと移行していくという。「燃費のよい機材への更新、機材待機が増えており、航空機リサイクルが注目を集めている昨今、JALエンジニアリング(以下、JALEC)では国内での航空機リサイクルへの取り組みを進めていきます」とJALEC事業推進部の亀田氏が紹介した。
具体的には「航空機部品としての再利用」「アップリサイクル品として再活用」「アルミニウムなど素材の資源化」といった3つの項目に取り組んでいる。JALECの発表によれば約96%のリサイクル率になる見通しだという。また、それらを国内でおこなうことで、海外へ航空機を飛ばしてリサイクルすることもなくなり、燃料資源の消費も抑えられるそうだ。
実はJALがこの取り組みを始めたのは2021年の7月。羽田空港内での構内営業権3類を取得し製作物を製造・販売できるようになったため、同年10月よりライフベストをリサイクルしたポーチなどを販売。現在では、機体構造を活かしたオブジェや、小型部品を『整備のお仕事ガチャ』、シートカバーを再利用したバッグや革小物などを展開しているという。
航空機リサイクルにあたっては「航空機は約300万点を超える部品から構成されているのですが、それに付加価値を付けて再利用していきたいというのがJALECの目標となります」(JALEC部品サービスセンター企画グループの矢田貝氏)。そのため、アップサイクル品も部材毎に適した企画化も施されており、読書灯などはガチャにしたり、シートなどの大きな部品はホテルと提携して客室をJAL仕様にするなどの試みを進めているという。
また、航空機部材ではないが年間約2000着が交換・廃棄されるライフベストも前述のようにオシャレなポーチにしたりペンケースにしたりなど展開を広げている。今回は実際にエンジンの取り外しやファーストクラスの椅子が解体される様子も見てきたが、「一見すると大丈夫そうでも、航空機部品として適さない部材もあります。特に、重要な強度部品は、見た目では判らないため、非破壊検査を通じ徹底的に検査し、航空機部品として使えるか、または廃棄対象となりアップサイクル品などで活用するか、判断しております」と語るのは現場整備士の談。
一口にリサイクル品といっても、高度な知識を持つ整備士たちがチェックしている。さすがはJALならではのこだわりという所だが、アップリサイクル品では更に企画と絡めてプロダクトとしての面白さも昇華している点も見逃せない。
ちなみに現在のところリサイクル品で一番人気なのは『整備のお仕事』ガチャだそうで、羽田空港で購入可能(時期は不定期)なので是非ともチェックして欲しい。後編ではアップリサイクル品としてのこだわりを詳細にご紹介しよう。