連載『エンタメトップランナーの楽屋』

アニメ『チェンソーマン』異例となる「100%出資」の理由は? FIREBUG佐藤詳悟×MAPPA大塚学が語り合う“アニメビジネスの未来”

オタクカルチャーからポップカルチャーへ。アニメの行く末とは?

ーー大塚さんも佐藤さんも、いわばプロデューサーとしての立場で仕事をされているわけですが、“オタク気質”の方が良いとかはあるのでしょうか?

大塚:難しいですよね。オタクという言葉の解釈にも寄りますが、たとえば「『呪術廻戦』が好きでMAPPAに入りたいです」という気持ちだけで、うちに入社してもだいたいうまくいかないんです。アニメを観るのが好きな人と作る人では、興味や志が違っていて、そういう意味ではアニメを作りたいという気持ちが重要になってきます。アニメ好きとしての知識を持ちつつ、それを生かしてどのようにアニメを生み出していくか、という考えにつながるのであれば、プラスに働くと思います。

佐藤:僕も今までアーティストのファンクラブとかに入ったことないですし、『ドラクエ』とかもレベル10くらいで諦めていましたけど(笑)、エンタメを作っていく裏にいるのがすごく好きで。むしろ、そういうサークルとかがあったら昔入っていたと思います。これが好きというよりは、作っているところに関わっているのが好きという感覚で、逆にそっちの方が長続きするんじゃないですかね。

 とかくエンタメって1回では成功しないですし、マラソンのようなものですから、地に足をつけて取り組めるかどうかだと思うんです。別に特定のIPが好きじゃなくても、何かを作るのが好きと思える人なら長く打席に立てるわけですし。100%うまくいくと思って、そうならないのがエンタメの難しさでもあり、やりがいを感じられるところでもあるので。

大塚:いやあ、辛いことも多いですからね。

佐藤:打率を多少高めることはできるかもしれませんが、読めないことも多いですしね。トレンドも極端な話、明日には全然違うものが流行ることもあるだろうし、コロナ禍みたいな社会を揺るがす何かが急に降って湧くこともありうるし。

ーーアニメがここ最近、若い世代のオタクカルチャーから、ポップカルチャーへ移行しているような印象を受けています。作り手目線ではどのような変化を感じていますか。

大塚:それは明らかに感じていますね。イベントや催事をやっても、来てくれる方は以前とは違う層だなと目に見えてわかりますし、『鬼滅の刃』の大ヒットからもその一端は伺えると思っています。昔のサブカルを知っている身からすると、いまの時代はだんだん“サブ”じゃなくなってきている。そう感じていますね。

佐藤:Netflixなどの配信が普及したことで、昔のテレビで深夜枠に追いやられていたアニメのころのような「え、そんなの観ているの?」という偏見がなくなったと思っています。いまは面白いものを平等に観られるプラットフォームが出てきたため、その中で面白いものが注目されているからこそ、変化が起きているのではないでしょうか。

ーーありがとうございます。それでは最後に今後お二人がやっていきたいことがあれば教えてください。

佐藤:うちはエンタメを中心として広告回りや音楽の制作とかをやっているので、MAPPAさんが今後アニメ作品を作る際のひとつのビジネスとして関わられたらなと思っています。IPを使いたい企業も増えているので、企業マッチングなどのパッケージを作っても面白いかもしれません。ただ、なかなか領域が違うところもあるので、一緒にやりましょうと声を大にしては言いづらい部分もありますが(笑)。

大塚:僕、実はロバートの秋山さんが大好きなんです(笑)。面白いコメディを生み出すキャラクターは本当にすごいなと思っていて。

佐藤:秋山さん、ついこの前アニメ作りたいって言ってました。

大塚:カリスマボイストレーナーとして、岡村隆史さんの『ナインティナインのオールナイトニッポン』に秋山さんが出演したのをずっと聴いていたんです。笑わせることってまさにエンタメで、普遍的なものだと思うんですけど、アニメーションって、ちょっとその辺りが難しいんですよ。

佐藤:脚本家の方でも、お笑いの要素を入れるって難しいじゃないですか。そういうときにお笑い関連の人を紹介して、この部分だけ笑いをとるコンペ作ってもらうとかも面白そうですね。

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