連載『エンタメトップランナーの楽屋』
アニメ『チェンソーマン』異例となる「100%出資」の理由は? FIREBUG佐藤詳悟×MAPPA大塚学が語り合う“アニメビジネスの未来”
「教育=投資」。アニメ産業の発展には人材教育が不可欠
ーー中身のクリエイティブについてお聞きしたいんですが、他社との差別化を測るためにどのようなことをやっているのでしょうか。
大塚:アニメ産業を成長させていくためには、人材教育が最も大切だと考えています。僕の中では「教育=投資」だと捉えていて、最新の機材をクリエイターに与えることはもちろん、コロナでリモートワークが求められるようになってからは、会社と自宅に一人2台の機材を貸与しています。アニメーターや演出家、3Dクリエイターなどを雇って、教育している人数はおそらく業界でもトップクラスではないでしょうか。
佐藤:階級が上がっていくような評価システムみたいなのはあるんですか。
大塚:テストのようなものはないんですが、管理部の管理のもと、師匠と弟子の関係性で修行期間を設けています。その先生の判断と管理部の判断で、独り立ちできるかを決めている感じですね。
佐藤:採用はどのようにされていますか。新卒のほか海外の人材も採っているとか。
大塚:うちは海外の人材も雇っています。そういう方はまず日本に来て日本語学校で学び、その後は専門や大学に進学してMAPPAに入ってくることがほとんどですね。海外の人材は覚悟が強く、優秀な人材が多いんです。また、最近の注目すべき点として、今年は高卒でMAPPAヘ入社した人が何人かいるんです。今後はより若い人たちがアニメを職として意識してくれる人が増えてくるのではと感じています。
佐藤:あとお聞きしたかったのは、アニメはチームでクリエイティブを創るじゃないですか。逆に漫画とか芸人のマネージャーって、小規模なクリエイティブチームの体制になっている。僕も経験がないんですが、たとえば『チェンソーマン』のような作品を一つ作るのに何人くらいの人が関わるものなんですか。
大塚:300人くらいですね。関わる人数でいうともっといるかもしれません。
佐藤:それでいうと、並行しているタイトルも含めると数千人が関わっていると思うんですが、どういうチーム編成になっているんですか。
大塚:最終責任者は僕になりますが、プロデューサーと監督を中心に、作画監督、美術監督、撮影監督、CG監督などがいて、それぞれのセクションごとにディレクターを中心に制作を進めていく形態になりますね。ただ、社員のみならずフリーランスの方も多く抱えているので、不安定な部分ももちろんあります。そういう不安点を払拭するには、会社が確固たるポジションを取って指揮をしていくことが必要で。
企業としての意思決定が明確にないと、今後はやっていけないなと思っていて。それこそクリエイター一人ひとりがどうやってグローバルに打って出るかなんて、なかなか踏み込みにくいじゃないですか。そこら辺のバランスがずっと悪くなってしまっているのが日本のアニメなのかなと考えています。人数かけてアニメーションを制作するのって、良いところもあれば悪いところもあるんですよ。
ーー今後、AI技術も台頭してくることも予想されていますが、ことアニメーション制作においてはどのような活用が見込まれるでしょうか。
大塚:主にテレビシリーズにおいては、量産の観点から生産性も問われてくるので、AIが利用できるのであれば将来的に取り入れていく流れになることも十分に考えられます。もし実現すれば、少人数でアニメが制作できるかもしれないと思うと、AIは注目すべき技術かなと考えています。