連載『エンタメトップランナーの楽屋』

アニメ『チェンソーマン』異例となる「100%出資」の理由は? FIREBUG佐藤詳悟×MAPPA大塚学が語り合う“アニメビジネスの未来”

アニメ業界はガワのビジネスに引っ張られている

ーー大塚さんは、20年間アニメ業界にいらっしゃいますが、なにか業界全体が変わるようなターニングポイントはあったのでしょうか。

大塚:実はアニメ業界って面白い特徴があるんです。“ガワのビジネスに引っ張られている”という状況がずっと続いていて。僕が業界に入った時はパチンコだったんです。パチンコ業界がどんどん成長していて、エンタメにも投資し始めてパチンコやスロットの台にアニメが使われたりするようになったんです。その制作単価も高く、MAPPAも一時期はパチンコ業界に支えられていました。

次いで、ソーシャルゲーム業界が台頭してきた頃は、IPコラボの需要も一気に高まりました。うちもCygamesさんと組んでいろんな取り組みをやっていましたが、もしそのタイミングで組めていなかったら、会社としての成長スピードは今より遅かったかもしれません。そして、その後は中国の新興IT系企業の投資マネーが盛んになった時期もあり、今はNetflixやDisney+、Crunchyrollといった動画配信の波が押し寄せているような状況です。

佐藤:結局、アニメが求められてきたのって、コアなファンが集まるからこそ、そこに企業が投資をするという図式になっているわけですかね。

大塚:潜在的なアニメ好きは世界にいるので、そのようなポテンシャルがあるからこそ、企業もアニメを活用したいという発想に結びつきやすいんですね。中国にも日本のアニメのテイストが好きな人が多かったので、巨額のマネーを投資したのだと思いますし。

佐藤:オンラインの英会話レッスンを受けているんですが、東南アジアの講師陣のほぼ100%が「ジャパニーズ・アニメを観ている」と答えるんです。割と日本のアニメって、配信が出てくるまではそんなに海外で観られていたのかなあと思っていて。その辺りってどう思います?

大塚:テレビで再放送が流されていたのも影響していると思いますね。サッカーのネイマール選手が『キャプテン翼』のファンであったり。ブラジルやメキシコって、アニメ人気が強いんですよ。配信云々というよりも、テレビで再放送を観ていて。ただ、日本発のアニメだと知らないで観ている人も多いみたいです。

佐藤:つまり、日本のアニメってポップカルチャーなんですね。日本のアニメは子どもも含めた大人も楽しめるエンタメコンテンツだと思うんですが、海外でもアニメは作られているわけで。グローバルから見ると、日本のアニメ業界の立ち位置って、どのように捉えられているものなんですか。

大塚:現状はサブカルチャーのように思われていると感じていますね。国によっても異なっていて、僕自身は今年の7月と8月にExpoを見にアメリカとフランスに行ったんです。アメリカは日本のオタク文化を理解したうえでアニメを愛しているのに対し、フランスは一般的な楽しみ方をしているような感じでした。もしかしたら、日本よりもアニメをおしゃれなものとして捉えているのかもしれないというのが、フランスに行って感じたことです。

ーーアニメのタイトル数で考えると、日本とアメリカの2強みたいな感じですか。

大塚:そうですね。日本はアニメの数は群を抜いているかもしれませんが、スタジオとしてのビジネスはまだまだ伸び代はあると思っています。

佐藤:アニメビジネスについては、大きくいうとどういうものがあるんですか。

大塚:グッズだったり配信だったり、あとは催事だったりと色々あるんですけど、結局多くのアニメを制作する会社は作っているだけになってしまっているのが現状なんです。パッケージや商品を作って売るのは別の会社がやっていて、そっちの会社の方が利益を出せているんですよ。

 無論、初期段階での資本力がないから、このような図式になりやすいんですが、それだけではなく作り手側に「アニメでビジネスをやる」という発想がこれまで少なかった。なので、これからビジネスの発想を持つことがすごく大事になってくると思っています。

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