虹色侍・ずまに聞く、YouTubeやTikTokにおける「ヒットの法則」とリスニング論

虹色侍・ずまのリスニング論

 いまや生活に欠かせないガジェットと言っても差し支えない「イヤホン」。それぞれの生活スタイルに合わせて購入される製品たちは、さまざまな特徴や個性を持ちあわせている。

 今回は音楽リスニングや映画、動画サイトの視聴など、幅広い使用用途を持つイヤホンや、そこから生まれるリスニング体験について話を聞くべく、即興ソングを武器に人気を集め、YouTubeチャンネル登録者数119万人を誇る虹色侍のずまにインタビュー。虹色侍のキャリアにおける転機や、クリエイティブを生み出すためのリスニング方法、動画クリエイターという視点ならではの音楽論や、イヤホンについての考え方まで、じっくりと話を訊いた。(編集部)

『オドぜひ』出演のきっかけは、ニコ生のリスナーからの声

——まずは、ずまさんの音楽活動の原点を教えてください。

ずま:最初は「京都虹色侍」という名前のバンドから始まりました。当時はメンバーが5人いて、全員が京都出身だったので、“京都”をつけて。でも、途中でベースとドラムが大阪出身のメンバーに変わったんです。それがきっかけで、名前を変えることになり、虹色侍が出来上がりました。僕と相方のロット以外の3人が脱退してしまってからは、新しい曲を作って、「2人で売れていこう!」と頑張ってきました。

——そこから、ニコニコ生放送を始めたきっかけというのは。

ずま:「売れるためにできることといえば、路上ライブかな?」と思ったんです。でも、機材をいろいろと揃えなければならない。それって、かなりハードルが高いじゃないですか。でも、ニコニコ生放送は、月に500円払えば音楽を届けることができる。それって「雨でも晴れでも、24時間路上ライブができるようなものじゃん!」と思い、挑戦してみたら、徐々にお客さんが増えてきたんです。

——勢いが増したのは、やはり『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ/以下『オドぜひ!』)への出演からですか?

ずま:そうですね。当時の僕たちは、持ち曲がなかったので、相方が弾く曲に合わせて、即興で歌っていたんです。そしたら、ニコニコ生放送のリスナーさんが、『オドぜひ!』を教えてくれて。いつもやっている内容をそのままやったら、スタジオのみなさんがかなり盛り上がってくださりました。その後の反響も、すごかったですね。

即興歌唱「虹色侍」(オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです!)

——YouTubeをスタートしたことで、さらに盛り上がりが加速した印象があります。

ずま:『オドぜひ!』の出演後に、発信する媒体をYouTubeに切り替えました。ありがたいことに、119万人もの方がチャンネル登録をしてくださっていて。ただ、途中で相方が、YouTuberならではの壁にぶつかってしまったんですよね。どんどん新しいものを生み出さなければいけないとか、プレッシャーもすごいので。でも、僕は楽観的な性格だからか、あまり気にならない。なので、休んでいる間も「続けるよ」と伝えました。

——虹色侍さんは、本当にいろいろな動画をアップされていますよね。

ずま:常に、変化は続けていると思いますね。虹色侍には、“いろんな色が出せるバンドにしたい”という意味が込められているので。僕自身も、意識して変わり続けなきゃ! と思っています。

——そのなかでも、約1年前に投稿をスタートさせた「音程が1ミリも合ってない」シリーズは、ひとつのターニングポイントだったのではないでしょうか?

ずま:そうですね。このシリーズは、クリエイターとしての感覚を思い出すきっかけにもなりました。最初は、遊びの延長だったんですけどね。

YOASOBI『夜に駆ける』の音程が1ミリも合ってないやつ

——そうだったんですか!?

ずま:はい。音楽仲間とカラオケに行くと、遊びで知らない曲とか入れられるんですよ。コードを瞬時に聴き取って、それっぽいように歌えたら合格みたいな(笑)。その要領で、違うメロディで歌ったらどうなるかな? と思ったのがはじまりです。だから、僕だけが考えついたアイデアというわけではないんですけどね。それを、企画にしようと思った人がいなかっただけで。

——視点を切り替えて“当たり前を疑う”という姿勢が面白いです。

ずま:音楽をやっていると、一般の人がすごいと感じるポイントが分からなくなってくるんです。凝り固まってしまうというか。でも、音楽をやっていない人がすごいと思うのは、もっと根本的なところなんですよね。「ここのコードが、いい!」とか、「このメロディラインが素敵!」とかではなく、シンプルなところに惹かれたりする。そういう感覚は、忘れないようにしないといけないと思っています。

TikTokは、最初の5秒でどれだけすごいと思わせるかがカギ

——虹色侍さんの動画は、 TikTokとの相性もいいですよね。

ずま:YouTubeだと、サムネイルとタイトルがよくないと、どれだけいいものを作っても再生されずに終わってしまいます。でも、TikTokは上にスワイプして、たまたま動画が目に入ることもある。なので、最初の5秒でどれだけすごいと思わせるかを意識しています。最近は、表参道を歩いていると、「YouTube観てます!」って言われるのに、原宿だと、「TikTokの人ですよね?」って言われたりして。不思議だし、面白いですよね。

@nijiirozamurai

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♬ オリジナル楽曲 - 虹色侍 - 虹色侍

——通りを挟んで属性が切り替わるんですね(笑)。現在のように音楽が仕事になったことで、音楽との関わり方に変化はありましたか?

ずま:うーん。まったく変わらないんですよね。プロのシンガーさんとか、「カラオケに行かなくなった」とか言う人もいるじゃないですか。趣味でバンドをやっている人に、「音楽を仕事にしたら、嫌いになってしまいそうだから」と言われたこともあります。でも、僕は実際に音楽を仕事にしてみて、より楽しくなりました。より楽しくもなったし、より真剣に向き合えるようにもなりました。やっぱり、得意なことばかりできる生活は、いいですよ。

——そんなずまさんは普段、一人のリスナーとしてどのような音楽を聴くことが多いのでしょうか。

ずま:幅広く聴きますが、ローファイ、チル、HIPHOPなど……BGMとしても聴けるようなオシャレな曲が好きですね。家のなかでは、ひたすら流しています(笑)。アーティストで言うなら、清水翔太さんやAK-69さんから入って、最近は、SUKISHAやVaundyなども聴くようになりました。

——動画で投稿しているようなジャンルの楽曲とは、少し離れているようにも感じます。

ずま:そうですね。僕はロックが合うと思っているし、YouTubeは短い時間でどれだけインパクトを残すかが鍵になっているので。そこに小洒落たものを持ってきても、みんな聴く姿勢を持ってくれていないかな、と。なので、YouTubeで活動していく上では、ロックや激しい楽曲をメインでやっていきたいと思っています。もちろん、僕自身もそれらの楽曲を楽しんで歌わせてもらっていますし。

——そうしてある種の切り分けをしているんですね。ちなみに音楽を聴く際の環境は?

ずま:自宅にYAMAHA『HS5』というモニタースピーカーがあるので、そこで作業BGMとして音楽を聴くことが多いです。最終的なMIX作業をした音源を確認するときは、iPhoneのスピーカーや純正のイヤホンを使うようにしています。そう考えると、iPhoneで音楽を聴いている時間がいちばん長いかもしれないです。僕は音楽が大好きだから音質にこだわりたいけれど、聴いてくれる人はそれよりも大事なものを求めている。だから、いちばん使っている人が多いであろうiPhoneでのチェックは欠かせないですね。

——イヤホンで音楽を聴くのは、外出時のみですか?

ずま:僕、バイクが大好きなので、移動がほぼバイクなんですよね。なので、運転中は音量こそ小さいのですが、ヘルメットのなかにあるヘッドセットで聴いています。タクシーや電車に乗る時は、イヤホンを使いますね。新幹線を使うロケなどは、とくに移動が長いので、イヤホンは必須です!

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