友人からの「Zenly入れようよ」あなたならどうする? 位置情報アプリを利用する背景とは

 友人から「Zenly入れようよ」あなたならどうする? 位置情報アプリ利用背景

 現在若い世代でよく使われている位置情報共有アプリ『Zenly(ゼンリー)』。大人たちからすれば「そんな危ないアプリを入れてはいけない」「お互いの居場所を知って何になるんだ」とアプリ自体を否定する人が多くいるなか、親に隠れてまでアプリを入れてしまうことには、一体どのような背景があるのか。位置情報アプリのメリットデメリットをもとに、現在大学生である筆者の視点から、周囲の大学生たちがどのような理由で使っているのか、今後の利用方法について考えていこうと思う。

友人からアプリを入れようと誘われた時に感じたこと

 大学に入学し、授業を通じて仲良くなった人から誘われた「Zenly入れようよ」という一言。私は怖くなってしまい、その場では「アプリは入れない」と断り、その人と現在は全く話さなくなってしまった。これは私が悪かったのか、それともそもそも考えが合わない人なだけだったのだろうか。いまだに考えがまとまらず、議論は平行線を辿ってしまう。

 現在、私自身はZenlyをインストールしていないが、先述した同級生とは別にZenlyを友達同士で使っている人たちはいる。その友達は無理に誘ってくるわけでもないため、うまく関係を続けていけているように思う。

 そして、ふとこの記事を書く前に質問をしてみた。「なんでZenlyを入れているの?」と。返ってきた答えはなんと「意味はない」。この答えを聞いて私は驚愕した。意味もないのに誰がどこで何をしているのか見ていたいと感じてしまう、ということなのだから。

 このことに関して私は否定をするわけではないが、何気なく繋がりを感じていたいがために位置情報アプリを利用しているという人もいるのだということを改めて知り、興味深いと感じた。さらに聞くと、本当に仲良い友達しかつながっていないとは言っており、共有する範囲には気をつけているという。

位置情報アプリが使われている背景

 この手のアプリが使われている理由として、親しい友達と常につながりを感じていたいといった、ある種「Instagramのストーリーに自分が今どこで何をしているのかを投稿する感覚」と同種の行動原理が働いているのではないかと考えられる。また、恋人同士がどこにいるのか誰といるのか、ある種、お互いが安心するために利用しているという例も聞く。

人との繋がりを感じていたいと思ってしまう背景

 学校教育で集団行動を教えられたにも関わらず現在の就職活動では特に個人では何ができるかといった周りよりも優れていることや実力を重視されることから、筆者は今の若い世代には、「個人の主体性」を持ちつつ、「集団行動」を心がけようという、なんとも矛盾したものが求められていると考える。若い世代にとってまだそこまで考えることができるわけでもなく、どちらかというと誰かの言うことを聞いていたり、周りと同じ行動をした方が楽という考えがあり、いまの若い世代にとっては「集団行動」の方が簡単に身につきやすい。

 このような「集団行動」が身についてしまったことで周りと違うことをしてはいけないという、ある種の「同調圧力」を感じてしまい、「個人の主体性」を持つことが難しくなってしまっている。

 しかし、今回取り上げている位置情報アプリは誰かとつながっているという意味で「集団行動」でもあり、自分がどこで、いま、なにをしているかを紹介する視点が「個人の主体性」を持っていると考えれば、歳を重ね社会に馴染んでいくために、自分に求められる役割と自分のアイデンティティを同居させることができるサービスであるため、このようなアプリが流行っている、と考えることもできそうだ。

 これは現在だけではなく、人間はなんらかの形で人との繋がりを感じていたい生き物なのだろう。TwitterやInstagramなどのSNSが生まれる以前も、人は2ちゃんねるなどの掲示板やモバゲーなどのゲームを通して交流を行ってきたし、インターネット以前でも知らない人同士が会うことや繋がることには一定の需要があった。

 SNSの登場は、その繋がりを簡単かつより強固にしたため、寂しさを増幅させているといってもいいだろう。SNSで他の人は楽しく遊んでいるのに自分だけ行けていない、充実した生活が送れていないなど、実際の自分の状況にかかわらず、相互監視している相手からの劣等感に押し潰される人も多い。

 筆者がみるに、現代の若者は「上下の関係」よりも「横の関係」を大切にしていると感じることが多い。「上下の関係」については、部活などが大きな起点になるが、ここでは引退や卒業など、入れ替わっていくことが前提のシステムなので、こと学校内でと考えれば、強固な繋がりがそこまで長期間持続するわけではない。

 しかし、「横の関係」は、中高生であれば少なくとも3年間、同じ学校に進学すれば6年間と長く関わることになるし、横並びのライバルでもあるため、良くも悪くもお互いが何をしているかが自分の精神状態に強く寄与してくる。

 このような結果、より深く繋がり、仲良くなって、良いことも悪いこともなんでもないことも互いに共有し合おうという深層心理が働き、お互いの位置情報を共有し、なにをしているのかを相互にゆるく監視する状態が生まれたのではないかと考えられる。

現代の若者の傾向から考えられる位置情報アプリとは

 世代によって利用されるSNSアプリは変わってくる。たとえば以前は「Instagramをやっていない人はどうなの?」と言っている人を見ることもあった。そのツールが、新しい世代の若者たちの繋がり方として、Zenlyなどの位置情報アプリに変わっただけであると考えると不自然ではない。

 待ち合わせ場所に集まるのが楽になったり、お互いの行動がわかることで連絡が取りやすくなるため、うまく使いこなすことができれば良いアプリケーションである。

 アプリの性質上プライベートが丸見えになってしまうため、友人間とのトラブルが起こったり、仲良くなるつもりがない人と繋がってしまったりと問題が起こるかもしれないが、マイルールを作るなどしてリテラシー管理をすることで、便利に利用することはできるだろう。いつの時代も人々はそうして、SNSを使いこなしてきたのだから。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる