噂の“猫ゲー”『Stray』がゲーマーの心を掴む3つの理由 2022年屈指のトレンドタイトルについて考える

 7月19日にリリースを迎えた“あるアドベンチャーゲーム”が話題を呼んでいる。

 そのタイトルの名は『Stray』。フランスのマイナーディベロッパーが開発したインディータイトルだ。Steamの同時接続数ランキングでは、上位100傑にランクイン。その勢いはとどまるところを知らず、さらに新しいプレイヤーへとリーチしつつある。

 『Stray』が支持される理由とは。2022年屈指のトレンドタイトルについて考えていく。

1匹の迷い猫の視点で世界を感じるアドベンチャー『Stray』

『Stray』

 『Stray』は、Annapurna Interactive(アンナプルナ・インタラクティブ)発売のアクションアドベンチャーだ。プレイヤーは1匹の迷い猫となり、廃墟と化したサイバーシティからの脱出を目指す。ゲーム内には多くの謎が用意されており、それらを“ネコならでは”のアクションを通じて解き明かし、少しずつ結末へと近づいていく点が、同タイトルのゲーム性だ。

 開発を担当したBlueTwelve Studioは、フランス南部を拠点にゲーム制作をおこなう少数精鋭のクリエイター集団。チーム内には開発者より猫の数の方が多いのだという。PlayStationプラットフォームの公式ブログ「PlayStation.Blog」では発売日の7月19日、開発に貢献した同社の“従業員”として、3匹の猫たちが紹介されている。

 そうしたインディータイトルらしい開発背景を持つ『Stray』は、6月3日配信のPlayStationプラットフォームの新作情報番組 『State of Play』のなかで取り上げられ、より注目を集めるようになった。リリースと同時にPlayStation Plus エクストラ・PlayStation Plus プレミアムのゲームカタログへと追加されたことから、気になっていた多くのフリークたちが実際に手に取ったようだ。

 2022年7月29日現在、Steamでは、53,000余りのレビューのうち、52,000以上が「好評」となっている。同プラットフォーム内での購入に限れば、全体の97%がポジティブな評価を下しているという“異常事態”だ。まだ発売から10日ほどしか経過していない同タイトルだが、すでに「2022年を代表する一作」と言っても過言ではないほどの爪痕を残しつつある。1匹の迷い猫がいま、カルチャートレンドとなっている状況だ。

『Stray』が支持を集める3つの理由

主人公のモチーフとなったBlueTwelve Studio所属の猫・マートー

 なぜ『Stray』はフリークたちの心をこれほどまでに掴むのだろうか。そこにはいくつかの理由がある。

 ひとつが、イヌと並び高い人気を誇る愛玩動物のネコを主人公に据えたゲームであるという点だ。世の中には「イヌ派」「ネコ派」という言葉があり、そのような自己紹介が成立するほど、この2種類はペットとして絶大な支持を得ている。おそらくネコ好きにとっては、「自らが愛してやまないネコの視点で世界を感じたい」という現実世界では叶わぬ願いがあったはず。それを具現化したゲームが存在するならば、手を伸ばさずにはいられないだろう。

 また、開発がそうした層の気持ちに応えるべく、高い解像度でネコを理解し、描写している点も外せない。『Stray』に登場する猫たちはみな、どのような仕草がネコ好きを喜ばせるかを理解している。爪をとぐ姿、水を飲む姿、おもちゃで遊ぶ姿。猫たちの一挙手一投足にネコ好きは感激し、その世界へとのめり込んでいくのだ。BlueTwelve Studioにいる猫たちが“従業員”と考えられていることにもうなずける。彼らの存在なくして、これほどまでにリアルな描写は実現し得なかっただろう。もしネコに対する描写が共感の得られないものだったとしたら。ネコを主人公に据え、その目線で世界を感じられるゲームだったとしても、これほどまでの評価は獲得できなかったはずだ。

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