追悼・高橋和希先生 『遊戯王』が遺してくれた“本当の宝物”

 さらに遊戯王には、高橋和希のマンガという「バイブル」も存在した。カードゲームをプレイする遊戯や海馬に憧れ、彼らのマネをして、そして勝敗に拘泥する彼らの情熱に惹かれた。特に作中で一貫したメッセージは「友情(YU-JYO)」であり、「結束(UNITY)」。自分のエゴをぶつけながらも、時に相手のエゴを飲み込み、リアクションして、最後は友情を築く。曖昧な原作から作られた、曖昧なゲームだからこそ、偶然かもしれないが高橋和希の伝えんとする「友情」を自分たちも築けたのではないか。

(なお、原作『遊戯王』では、遊戯たちが「モンスターワールド」や「D.D.D.」などのTRPGに挑んだり、特に王国編の迷宮兄弟戦など特殊デュエルも挑むなど、カードゲームに限らず作中全体に色々な遊びが散りばめられている。そのため作中の「デュエルモンスターズ」もかっちりとしたTCGというより、ロールプレイを含めた柔軟なゲームとして描写されているため、当初の遊戯王の曖昧な設計は、ある程度意図されたものと考えられる)

 筆者が当時、遊戯王を経て得た友人とは、いまも連絡を取り合う仲の者もいる。彼らとはマンガ「遊戯王」を通じて憧れたゲーム越しの友情、そして実際にTCG「遊戯王」をプレイしてコミュニケーションを行った体験がなければ、本当に「友達」になれていたかわからない。自分のほかにも高橋和希の「遊戯王」を通じて友達を作ったデュエリストは世界中におり、高橋和希が遺した本当の宝物はマンガでもTCGでもなく、デュエリストたちの笑顔であり友情なのだと思う。

 高橋先生のご冥福をお祈りします。

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