ゼンハイザーの新立体音響技術をNetflixが採用 『ストレンジャー・シングス』S4でも体験可能に

 2022年7月1日、NetflixとSennheiserは、配信コンテンツを利用するすべての視聴者向けに、ステレオ機器で立体音響を楽しむことができる『AMBEO2-Channel Spatial Audio』の提供を開始した。

 Netflix対応のAMBEO2-Channel Spatial Audioでは、標準的なステレオスピーカーで没入型のオーディオ体験が享受できるという。オリジナルの没入型ミックスサウンドを2チャンネルオーディオに変換することで立体音響を実現している。開発プロセスではSennheiserはNetflixをはじめとする業界パートナーと協働しシステムのきめ細かな調整を推進。その後、この新技術のライセンス提供を開始した。Netflixはライセンスを取得した世界初の配信プラットフォームとして、厳選したタイトルで驚異的に向上したオーディオ体験をユーザーに提供するという。

 配信コンテンツの視聴者を対象とした調査で、多くのユーザーが標準的なステレオ機器でコンテンツを利用していることが明らかになったそうだ。Dolby AtmosやMPEG-H Audioで制作される音楽や映画が増える一方、こうした視聴者はその恩恵を受けられずにいたが、本サービスはこのような現状を打破するという。

 Netflixはこの新たな没入型サウンド体験を視聴者に提供する、世界初の配信プラットフォームとなり、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン 4 などタイトル厳選のうえ、AMBEO2-Channel Spatial Audioを2チャンネル環境に配信。ステレオシステムで視聴しているすべての Netflixユーザーは自動的に、拡張された立体音響を楽しめるようになるという。 

 SennheiserのAMBEOチームを率いるDr Renato Pellegriniは「Sennheiser は、これからのオーディオは没入型であると確信しています。今や世界中のクリエイターが弊社のツールを使って驚異的な没入型サウンドの作品を制作し、音楽および映画制作の限界を押し拡げています。AMBEO 2-Channel Spatial Audioはこの進化を次なるステップへと導き、新たなオーディオのリアリティをすべての視聴者にお届けします」とコメント。

 Netflixサウンドテクノロジー・マネージャーScott Kramerは「AMBEOSpatial Audioは、Netflixユーザーの皆様に重要な改善をもたらすでしょう。リレコーディングミキサーの間でも、AMBEO Spatial Audioはきめ細かなイマーシブミックスをステレオに変換しやすいと評判です。AMBEO Spatial Audioのプロセスは、オリジナルのサウンドミックスを100%保持し、クリエイターの意図を尊重しながら、驚異的にクリーンなサウンドを実現できます」と評価。リレコーディングミキサーのMark Patersonも「AMBEOの大ファンです。映画『フィアー・ストリート』シリーズでいろいろ実験し、サラウンドチャンネルの再現性に感銘を受けました。私は自宅で映画館のようなサウンドを楽しむ方法を常に模索していて、『アダム&アダム』ではハイエンドなサウンドバーからiPhoneに至るまで、あらゆるデバイスで楽しめる真の没入型サウンドを作ることができました。オーディエンスがよりエモーショナルに作品を楽しむ助けになったと思っています。『ストレンジャー・シングス』には、AMBEOはまさにぴったりのフォーマットでした。Atmosミックスではヴェクナの声をオーディエンスにまとわりつくような感じにして、ヴェクナの不気味さ、怖さを表現しています。AMBEOはその感じをステレオで再現できるので、実に見事だと思います」と話している。

標準的なステレオミックス(左)から 100%AMBEO エフェクト(右)への遷移:リレコーディングミキサーはサウンドの空間化を自在に制御・微調整することができる。

 Pellegrini は AMBEO の独自性を「Sennheiser「オリジナルのミックスやトーナルバランス、セリフ部分のインテグリティを尊重しているという点、リレコーディングミキサーのニーズに応えているという点です。『透明性のある』ツールのプロバイダーというSennheiserの評判通り、AMBEOのレンダリングプロセスはオリジナルサウンドに一切干渉しません。端的に言ってAMBEO 2-Channel Spatial Audioは、ミキサーの意図に不要なものを加えることなく、そのまま変換することを目指しています」と説明。

 仕組みは、NetflixのクラウドベースのエンコーディングパイプラインでAMBEOのレンダリングソフトウェアを実行し、業界標準のオープンフォーマットの既存ADM/IABファイルからAMBEO 2-Channel Spatial Audioを作る。リレコーディングミキサーはポストプロダクションの工程でプレビューツールを使ってステレオとAMBEOを比較し、ステム/グループごとにレンダリング設定を微調整する。AMBEOは特許取得済みの技術により、空間化のレベルを100%AMBEOエフェクトから標準的なステレオミックスまで微細に調整でき、さらに特定のチャンネルを除外することも可能。たとえば、セリフ部分はオリジナルを100%保持する、あるいは前後の没入型のシーンに合わせて少し手を加えるといった調整ができるという。

AMBEO 2-Channel Spatial Audio レンダリングソフトウェアのプレビューツール。右下のオブジェクトビューワーが、固定スピーカーの位置をエッジ部分に表示し、個々のレンダリングを青いドットで示す。薄青色のドットは音源の位置を上げている。

 トータルラウドネスもオリジナルの状態を保持できる。また、左右のチャンネルの音楽のミックスを保持しながら、それ以外のすべてのチャンネルにイマーシブなAMBEOレンダリングを加えることも可能。すべての信号とオリジナルコンテンツのタイムアライメントも適切に実行されるという。

 AMBEO Spatial Audioで楽しめるNetflixコンテンツの最新リストは、Netflixの検索フィールドで「SpatialAudio」と検索すると確認できる。

(画像=Netflixより)

関連記事