板金職人が「6輪のクラシックF1カー」を自作 2年以上をかけた企画から伝わる“ものづくりの楽しさ”

 ものづくりを通して生活に彩りがついた経験はあるだろうか? プラモデルやラジコン、DIYや裁縫などで経験した方も多いかもしれない。

 今回はそんなものづくりのお話。YouTubeにて2020年6月から続いているCBR WATAHIKIチャンネルの「自作6輪F1カープロジェクト」動画を紹介する。なんとクラシックなF1カーのレプリカを自作するというプロジェクトである。

Tyrrell P34 ものつくり総集編 (F1, 6輪, ティレル, ロニーピーターソン)

 まずレプリカ元のオリジナル車両、タイレルp34について。この車両はイギリスのタイレル(ティレル)が開発し、1976年と1977年にレースに参戦したF1レーシングカーだ。何といっても特徴的なのが前4輪、後ろ2輪の6輪車であるということ。空気抵抗を低減する目的でフロントタイヤを小径4輪化しフロントウィングに隠れるデザインとした。だが、リアタイヤは変更なく通常サイズで大きかったため前面投影面積に違いがなく空気抵抗は期待通り減少しなかった。しかし、ブレーキ性能向上とタイヤ接地面積の増加によりブレーキングにおけるアドバンテージは得られるとされた。

 そんな特徴的なレーシングカーのレプリカをつくる今回の製作者は、ヒストリックポルシェを中心に自動車修理やレストアなどを行っている方。旧車への板金などを行っており、今回の6輪F1製作技術につながっているようだ。

 2020年6月からスタートしたこの製作プロジェクト。冒頭の動画は2021年9月投稿の総集編だ。最初はタミヤ製1/10ラジコンから型紙をつくり、ビッグスケール車両を製作。拡大法で形状をそのまま拡大し製作している。アルミを中心としてつくり、この段階では1/2.5のサイズである。これはカートのリアタイヤを基準に決定したものだとか。そしてこの経験を経て、タミヤの1/12模型、1/10ラジコンを元に1/1を製作することとなった。回し者ではないがタミヤモデルのクオリティの高さにも驚かされる。

 リアウィングから始まり徐々に形作られていくのが順を追ってわかる。ボディもアルミの板金・溶接技術を駆使して自作している。市販車からも使える部品を採用する。多くの名車といわれる車種のパーツが流用されている点も面白い。特徴的なフロント足回りは2台分の部品を使用。また、エンジンについてはオリジナルでは(フォード)コスワース製V8であるが、こちらではスズキのバイク「隼」のものを採用。オリジナルのエンジンほどのパワーを受け止めるシャーシをつくるのは難しいためこちらのエンジンを採用したとのこと。それでも高出力バイクのエンジンなので十分面白そうだ。ホイールもまずは既存レーシングカー用のものを流用している。

 一方で、自作している範囲も広い。フロント足回りは4輪をステアリング操作できるように自作パーツも取り入れて機能するものを作っている。構造、製作の詳細は「Tyrrell P34製作No」の動画シリーズで細かく見ることができる。名車のレストアを手掛けているからこその流用や自作パーツの発想かもしれない。このプロジェクトを通して新たな加工技術も身につけられたようで、ものづくりの面白さが伝わってくる。アルミを叩いて綺麗な面を作り出していく板金技術はまさに職人芸だ。

 そして完成後に初走行する様子も動画になっている。まさに感動の瞬間。完成まで約2年。ガレージから自力で出てくるレーシングカーは、夢のような光景だ。

TyrrellP34 ついに走る姿を!

 その後、サーキットでの初テストで駆動系の溶接が剥がれるトラブルが発生。急遽現地での溶接を行い、しっかりとサーキットを周回している姿を見せることができた。しかし、最後にはまたも溶接剥がれが発生し、後日この問題や他の改善点の対策をし、リベンジ走行にチャレンジすることとなった。

【全開走行】Tyrrell P34 Sパワースライドだ | オートランドテクノ | 水戸道楽TV

 その後、アップデートを経て、なんとモータースポーツ競技にも参加。ジムカーナ(パイロン等で指定されたコースを走破するタイムで競う競技)にてクラス2位を獲得する。急激な加減速が存在する今回の競技内容、この車両の完成度を示す結果にもなったようだ。

 このプロジェクトを見ていると、自分の「好き」で作り出すものはつくり手の独自性があってとても興味深く、面白い。そして自分でつくり上げることでそれがスキルになることもある、ということを感じさせてくれる。時間をかけ、徐々に完成させていくものづくりは日々の生活に彩りを与えてくれるものなのかもしれない。



関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる