『ファイアーエムブレム無双』が見せる新たな『風花雪月』の可能性 目まぐるしく忙しいが、本編ファンは通るべき作品

 2022年6月25日、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』がリリースされた。こちらは、2019年に任天堂からリリースされた『ファイアーエムブレム 風花雪月』とコーエーテクモゲームスの『無双』シリーズがコラボレーションしたタイトルとなる。今回は、本編ファンの視点から、こちらのタイトルを実際にプレイしたレビューを紹介する。まだ購入を迷っている方の参考になれば幸いだ。

3ルートのストーリーが展開 本編と同じく時間泥棒な作品

 『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』について語る前に、本編『ファイアーエムブレム 風花雪月』について簡単に紹介しておこう。

 『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、一言で表せば「学園モノと戦記モノが融合したシミュレーションRPG」である。プレイヤーは各国から若者が集まる士官学校の教師となり、生徒たちを導いていく。士官学校には「アドラークラッセ」「ルーヴェンクラッセ」「ヒルシュクラッセ」の3つの学級があり、プレイヤーが担任する学級によってストーリーや使用できるユニットが大きく異なるのが特徴だ。周回ごとに新たな発見があるタイトルといえる。

 『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』においても、選択したクラスによってストーリーやユニットが変わるという点は共通している。なお、筆者はレスター諸侯同盟の生徒で構成される「金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)」を選択しており、こちらの記事で使用されている画像はすべて「黄瞭の章」ルートのものとなっている。

 しかし、今作では本編とは大きく異なるストーリーが展開される。本編の主人公であり、各学級の先生を担当した「ベレト/ベレス(初期設定名)」は、序盤では士官学校に一切関わってこない。そんな先生の代わりに士官学校の級長たちと出会うのが、今作の主人公である「シェズ(初期設定名)」だ。シェズは士官学校の生徒たちと同年代であるため、教師ではなく同級生として彼らと関わっていくことになる。一方、選んだクラスによってストーリーや使用できるユニットが変わるのは本編と共通している。一周あたりのプレイにかかる時間も長く、本編と同じく時間泥棒のタイトルといえるだろう。

 また、今作はコーエーテクモゲームスの「無双」シリーズとのコラボレーションタイトルではあるものの、そもそも本編の『ファイアーエムブレム 風花雪月』はコーエーテクモゲームスとインテリジェントシステムズの共同開発である。そのためか、グラフィックスやキャラクターの描写などの違和感がほとんどなく、原作を遊びこんだプレイヤーであっても馴染みやすい。コラボレーションタイトルである以上に「もう一つの風花雪月」として完成された作品だと感じられる。

ユニットや前哨基地を強化する二つのパート

 ゲームの大まかな流れは、「軍備パート」「進軍パート」「戦闘パート」に分かれている。

 一つ目の「軍備パート」では前哨基地内を自由に散策し、仲間と交流したり、ユニットを訓練したりすることができる。本編における「自由行動」パートに相当するパートだ。前哨基地は本編における「ガルグ=マク修道院」に比べれば手狭だが、やれることは相変わらず多い。

 ユニットの訓練や武器の売買、錬成といった基本的な軍備だけでなく、料理を振舞って仲間と交流する要素も本編から引き継がれている。また、本編の「お茶会」に相当する遊びとして、「遠乗り」という要素も用意されている。やることが多すぎて戸惑うユーザーもいるだろう。各機能は少しずつアンロックされていくほか、チュートリアルが入るなど親切な設計にはなっているものの、最終的に前哨基地に備わる機能はかなりのボリュームを誇る。面倒であれば軍備パートをなおざりに進めても構わないが、一部のクエストではやはり苦戦を強いられることになる。

 続いての「進軍パート」は、フォドラのマップ上で領土を拡大していくパートとなる。本作はエピソードごとにメインクエストとサイドクエストのマップが用意されているが、メインクエストの舞台が本陣から離れている場合がある。その場合には、サイドクエストをこなして自軍の領土を拡大しながら、メインクエストが用意された目的地を目指していくことになるのだ。また、いきなりメインクエストを目指して進行するのではなく、寄り道をしながら侵攻することで、施設拡張のための資材が手に入ったり、ユニットの能力を強化できたりといったメリットが生まれる。

 一方で、寄り道せず素早くメインクエストをクリアした方が「名声値」と呼ばれるポイントを多く得られる。名声値は各ステータスを強化できるアイテムと交換することが可能だ。このように、サクサク進めたいユーザーにもある程度配慮されているのは嬉しい。

目まぐるしく動く戦況に振り回される多忙な戦闘

 続いて、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』のメインコンテンツともいえる戦闘パートだ。今作の戦闘パートは、本編の戦略性を取り入れつつアクションに仕上げており、非常に忙しい。かつて遊んだ無双シリーズには「難しいことは考えず一騎当千の武将の気分を味わえる爽快なアクションゲーム」という印象を抱いていたが、今作のイメージはそれとは大きく異なるものだ。

 まず『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』の戦闘パートでは、基本的に4人のユニットを選出して戦うことになる。各ユニットは自分で操作できるだけでなく、特定のユニットや拠点を攻撃させたり、防衛させたりといった指示をすることも可能だ。この指示こそが本作の戦闘パートのキモとなっている。

 その理由として、本作の相性補正や戦況の目まぐるしい変化が挙げられる。本作では武器・兵種による相性の影響が強く、相性が悪い相手と戦えば与えられるダメージ量が減り、苦戦を強いられる。しかも、各マップがそれなりに広いだけでなく、突然敵の増援が現れたり、勝利条件が変わったりと戦況の変化が目まぐるしい。一人のユニットだけですべての戦場をカバーするのは困難といえる。

 したがって、効率的に攻略するためには、戦場全体を見渡し、ユニットに的確な指示を出しながら戦う必要があるのだ。「あの拠点はどのユニットで攻略するべきか」「市民の防衛はどのユニットで行うのが的確か」「増援で弓兵が現れたから相性が悪い飛行ユニットを下げなければ」など、戦況に応じて考えなければならないことは山ほどある。目の前の敵だけに集中していると、拠点が陥落させられたり、防衛対象だったユニットが撃退されたりといった憂き目を見る。

 このように戦場全体を見渡す戦略性が求められるのは、本家『ファイアーエムブレム』ではお馴染みの要素だ。しかし、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』ではこれをほぼリアルタイムでこなさなければならない。そのため、本作の戦闘パートはもはやアクションゲームやシミュレーションゲームの域を超えているといっても過言ではない。むしろ『Age of Empire』などのリアルタイムストラテジーゲームに近い忙しさがある。

 とはいえ、今作は難易度「イージー」が用意されており、難易度についてはいつでも変更できるようになっている。アクションが苦手な人は難易度を下げて遊ぶのもいいかもしれない。

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