肉を焼くだけのゲームが、こんなに面白いだなんて……人気VTuberの配信から考える、シミュレーター作品の奥深さ
5月21日に鮮烈なデビューを果たし、わずか14日間で公式YouTubeのチャンネル登録者が100万人を突破したVTuber・壱百満天原サロメ(にじさんじ)。このスピード感はこれまでのVTuberの中でも最速であり、彼女の影響力は昨今のVTuber界隈で随一と過言ではないだろう。
VTuber史上最速。にじさんじ・壱百満天原サロメがYouTubeチャンネル登録者数100万人を初配信から14日で突破
ANYCOLOR株式会社が運営するVTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」の所属ライバー「壱百満天原サロメ(ひゃく…
壱百満天原サロメは自身のチャンネルで『BIOHAZARD 7』や『グランド・セフト・オートV』といったビデオゲーム作品の実況プレイ動画を投稿(配信)しているが、中でも話題の的になったのは『Yakiniku Simulation』というシミュレーターのプレイ配信。彼女はチャンネル登録者100万人突破を祝うべく、バーチャルの肉を焼きながら約1時間にわたってお嬢様トークを敢行。この配信の同時視聴者数は11万人を記録したほか、配信中の印象的なワードがそのままTwitterのトレンド入りを果たすという光景も見られた。
そこで今回は、壱百満天原サロメの配信を盛り上げた2つのシミュレーター作品にフォーカス。概要やゲーム性を踏まえつつ、シミュレーター作品の味わい深さ、並びにプレイ配信の見どころについて考える。
※シミュレーションゲーム:現実の事象・体験を仮想的に行うコンピュータゲームのジャンルの一つ(参考:Wikipedia)。本稿では同ジャンルを便宜上、”シミュレーター”と呼称する。
細分化が進むシミュレーターの世界
まずは冒頭で取り上げた『Yakiniku Simulation』から見ていこう。同作は6月3日にリリースされたシミュレーター作品。Steamの販売ページに「黙々と肉を焼き、食べ続ける焼肉シミュレーションゲーム」とある通り、プレイヤーは皿から肉を掴み上げ、焼き網に並べてこんがりと焼き上がるのを待つ。そして丁度よい焼き加減になった肉から取り分けていき、タレをつけて口へと運ぶのだ。
こうした実際の焼肉とほぼ変わりない作業を繰り返し、時間終了までに肉をたべ続けてスコアを稼ぐ……というのが同作の流れ。開発元は“ご飯やビールを用意すれば何種類ものプレイに応用可能”とユニークな遊び方を提唱しているものの、基本的には「肉を焼いて食べる」ことに特化した作品である。シミュレーターに分類するか悩ましいゲーム性ではあるが、題材のキャッチーさが話題となったのか、本稿執筆時点(6月15日)で112件の「非常に好評」レビューを獲得済み。また、205円という価格の安さもプレイヤー数の増加に寄与していると見られる。
続いて紹介する『Euro Truck Simulator 2』(ETS2)は、壱百満天原サロメが5月28日の配信でプレイした作品だ。リリースされたばかりの『Yakiniku Simulation』に対し、『ETS2』は誕生からすでに9年が経過。今年でリリース10周年という節目を迎える。同作は2008年に始動した「Euro Truck Simulator」シリーズの第2作目。タイトル名の通り、ヨーロッパ圏に拠点を置く一介のトラックドライバーとなり、さまざまなミッション(貨物輸送)をこなして資産を形成。イギリスやベルギーなどの国々を気ままに巡りつつ、入手したトラックのカスタマイズに勤しむこともできる。
同作は車を運転するゲーム作品ではあるが、あくまでもメインは“トラックによる貨物輸送”。ゆえに激しい競争要素は存在せず、「道交法を遵守した安全運転」「ゲーム内ドライバーの体調管理に配慮したスケジュール」……等々、現実のトラックドライバーを彷彿とさせるリアルな行動が求められる。ユーザーからの評価も高く、Steamの販売ページには約39万4千件の「圧倒的に好評レビュー」が並んでいるほか、PC Gamer(海外メディア)によるゲームアワードで2012年度のベストシミュレーション賞を受賞している。今なお熱い支持を得ているシミュレーター界隈の十年選手だ。