『Weekly Virtual News』(2022年5月16日号)

VTuber・ぜったい天使くるみちゃん帰還の衝撃ーーGWに起こった「黎明期」を振り返る動きと、新たな技術の萌芽

 今年のゴールデンウィークは大きな衝撃とともに明けた。2018年の黎明期に存在したVTuber・ぜったい天使くるみちゃんが、4年ぶりに姿を現したのだ。

2022の君へ

 ぜったい天使くるみちゃんは、2018年の1月に活動を開始し、「VTuber同士のコラボ」の先駆けともいえる配信を行った一人として知られる。そしてたった1ヶ月で姿を消し、VTuberの歴史において半ば“伝説”のように語られてきた存在だ。

 突然の復活に界隈は沸き立ち、急遽彼女が開いたTwitterスペースには、深夜にもかかわらず1000人以上の人が集まった。2018年の黎明期より活動してきたVTuberたちも集結し、さながら同窓会のような雰囲気が生まれた。たった4年、されど4年。VTuber界隈は、4年という期間が十分すぎる厚みを生むほど、多くの出来事が生まれた世界なのだ。

 一方で、当時を知らなければ、彼女の帰還の衝撃を推し量るのは難しい。ぜったい天使くるみちゃんの復活に触発されてか、各所では「VTuber黎明期とはどうだったのか?」と振り返る動きが見られた。

VTuber黎明期を教えてもらう【Twitterスペースアーカイブ】

 とりわけ大きな動きは、『VRChat』などの体験漫画を手掛けるインフルエンサー・リーチャ隊長によるTwitterスペース企画だろう。自身も2018年デビューのVTuberにして、黎明期からのVTuberファンである九条林檎を招き、VTuberの黎明期について解説してもらうという企画だ。

 当時の複雑な状況をわかりやすく伝える九条林檎の語りと、VTuberについては知らないリーチャ隊長の真摯な傾聴、さらに、同じく2018年デビューVTuberの東雲めぐやユキミお姉ちゃん、株式会社HIKKYの育良啓一郎氏による、異なる視点から当時の振り返りが重なり、2時間近くの談話は史料として大きな価値を得ている。当時を知らない人にとって、この企画は数年先まで必聴となるだろう。

【凸OK】2018年の #VRChatを振り返る会【#VRChat】

 そして、VTuberと同様に、黎明期のVRChat文化についても振り返りの動きが生まれつつある。VTuberのおかつゆうすが企画した配信は、黎明期の日本人コミュニティの集会所「Fantasy Shukai jou」にて、黎明期を知る人と当時を振り返るというものだった。ところが、時間が経つにつれてたくさんの人が訪れ、気がつけば収容人数の限界まで人が集うお祭り騒ぎとなった。そのカオスな活況は、「日本のVRChatのはじまり」のひとつを再現したものだった、と言えるかもしれない。

目標は世界一のメタバースイベント!!【大蔦エルの所信表明】

 そうしたVTuberと『VRChat』のはじまりを振り返る動きの中で、中京テレビ アナウンサー部所属のVTuberアナウンサー・大蔦エルが、メタバース上での活動を宣言した。彼女もまた2018年から活動する息の長いVTuberだが、本格的な体裁の動画をさっそく投稿しており、本腰を入れた新展開と見込まれる。VTuberとメタバースの交わりは昨今増えつつあり、さらにその黎明期を振り返る動きが見られた週で、こうした動きが生まれたのは興味深い。かつては混ざり合っていたVTuberも『VRChat』の文化圏は、いま再び混ざり合おうとしている。

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