福岡は世界を目指すスタートアップにとって“最適な都市”なのか 現地起業家の証言から考える、充実した官民の支援と「場所」の豊かさ

福岡はスタートアップに“最適な都市”?

 トークセッションの二幕目「銀行に求められる創業支援」には、イジゲングループ株式会社 代表取締役社長の鍋島佑輔氏、株式会社PECOFREE 代表取締役の川浪達雄氏、キャンプ女子株式会社の橋本華恋氏、株式会社西日本シティ銀行 ビジネスサポートセンター福岡 創業カウンセラーの吉松博臣氏が登場。モデレーターは一幕目と同じく、株式会社Zero-Ten Park 常務取締役の勝呂方紀氏が務めた。

左から鍋島佑輔氏、川浪達雄氏、吉松博臣氏、橋本華恋氏。

 イジゲングループ株式会社、株式会社PECOFREE、キャンプ女子株式会社の三社に共通するのは、いずれも西日本シティ銀行が創業支援をした企業であること。

 イジゲングループ株式会社は、大分・福岡・宮崎の3拠点を持ち「企業のDX支援」を行う会社。傘下にはクリエイティブの会社やソフトウェア会社などが存在し、西日本シティ銀行とは提携関係にある。株式会社PECOFREEは、食堂の会社の取締役を務めていた川浪氏が、コロナ禍に直面したことで起業した学校への配達を行えるモバイルオーダーサービス「PECOFREE」を運営する会社。イジゲングループとのジョイントベンチャーでもある。キャンプ女子株式会社は7年間一般のサラリーマンとして勤務した橋本氏が「キャンプのある豊かな生活」を多くの人に届けるべく起業。いまでは7万人超のフォロワーを誇るインスタグラムアカウントを中心に多岐にわたる事業を手がけており、アウトドアやファッションを盛り上げている。

 また、西日本シティ銀行の創業支援に関する取組みも吉松氏から語られた。専門スタッフ・創業カウンセラーが常駐するNCB創業応援サロンを大名と小倉に設置しているほか、創業期の企業が抱える幅広い資金ニーズに対応しており、借入期間は最長10年まで設定できる。CAMPFIREとタッグを組んだクラウドファンディング事業や、NCBベンチャーキャピタルとは共同でエクイティの支援を行っているほか、PR TIMESと連携したプロモーション補助なども行なっている。

 

 

 この回はまず、「西日本シティ銀行との連携で役立ったエピソード」の話題からスタート。鍋島氏は「ビジネスマッチングを毎週くらいの頻度でしていただいたことは大きかった」、川浪氏は「コンテストで最優秀賞をいただいて日経新聞に掲載されたことで、他メディアからの取材も増えた」、橋本氏は「西日本シティ銀行さんのアプリに広告を載せてもらい、LINE友だち登録が1000人から7000人に増えた」ことを挙げた。第一幕の方でマッチングの重要性には触れたこともあり、ここで興味深い事例は川浪氏と橋本氏が挙げた“プロモーション支援”だろう。銀行が支援するのはあくまでお金で、そこに人脈をつなげることの重要性が大きいと触れたばかりだが、広報的な支援まで加わるとなると、起業家にとってはこれ以上ないサポートとなる。そういった広義の支援をしてくれる地銀がいるというのは、スタートアップを福岡でやる大きなメリットのひとつであることは間違いなさそうだ。

 続いての「スタートアップ企業が真に求めている銀行のサポートとは?」というトークテーマについて、鍋島氏は「”真に”となるとお金の話は切り離せない。スタートアップは短期間で急成長させなければならないため、キャッシュやエクイティは絶対に必要」、川浪氏は「食品関係の事業をやっている以上、総合商社などと取引が生まれることは大きい。頻繁に担当者さんがオフィスにいらしてくださり紹介もいただけるので、それらをあらゆる企業にできると大きい」、橋本氏は「次の事業をやるとなったときの資金のサポートと、達成可能になるような計画立案を二人三脚でやってもらえる環境」と挙げた。このテーマについてはそれぞれが熟考し、悩みながら答えているように感じたうえ、回答も三者三様で面白い。各社の企業が持つ特徴や手がける事業のジャンルなども大いに影響していそうだが、やはり銀行には資金面での絶対的な支援はもちろん、あらゆる役割が求められる時代になったといえるのかもしれない。

 最後のテーマは「銀行はどうすればスタートアップ起業の良きパートナーになれるのか?」というもの。川浪氏は「立ち上げ当初の苦しい1~2年目のスケールするまでの期間を担当さんが二人三脚でサポートして”良きパートナー”であってくれた。今後もこの場所を通して支援をしていってほしい」、橋本氏は「逆にスタートアップがどうしたら銀行のよきパートナーになれるかを考えたい。どうしたら出資したいと思えるかを各自が考えるべき」と、それぞれ現状の支援に満足していることを明かした。ここで興味深かったのは鍋島氏の「良きパートナー=良き相談相手であること。経営者は孤独で辛い立場でもあるので、そこで距離が近い相談相手になっていただけることは大きい。もう一つはやはりお金。スタートアップの元になるお金の部分や、最近の連帯保証を外そうという取り組みなど、どんどん起業家のリスクヘッジをしてくれることで、グッと距離が近くなるのでは」という発言。吉松氏は「基本的には保証人に頼らない形でいきましょうということで、財務型・担保型・金融機関支援型を推奨しているが、スタートアップでなかなかそこの型に嵌めることは難しい」とフォローしたが、たしかにこれが実現すると起業へのハードルはさらに下がりそうな試みだ。

 これを受けて、吉松氏は「私どもが考えているのは、スタートアップ企業さんを含めてソリューション・リレーションのベストミックスが大事だということ。スタートアップ企業に限らず創業前と創業時・創業後にそれぞれのフェーズとニーズがあって、変化していく。そこをベストミックスでご提案・サポートをタイムリー・スピーディーにさせていただくことが、良きパートナー構成を作れることになると思う」とこのテーマについて締めた。たしかに、起業家が抱える課題は人それぞれで、業界ごとに越えなければいけない壁は微妙に違ったりしている。もちろん審査をクリアしなければならないという壁はあるが、受け持った銀行側が柔軟に対応するという姿勢を示してくれることは、現在頑張っている起業家にとっても、これから起業を考える人たちにとっても非常に心強い。

 最後に、今回取材した「The Company DAIMYO」だけでなく、「The Company」は福岡中心部を根城にする起業家のほか、福岡の中心部で拠点を設けたい県外企業も対象にしているという。大企業のサブ拠点としても活用できるので、東京とは空気を変えて、この豊かな空気で醸成された福岡のスタートアップとコンタクトを取ってみたいという企業は、ぜひ活用することをおすすめする。

■施設概要
「The Company DAIMYO」
受付時間:平日9:00-19:30 (土日祝定休日)
TEL:092-600-0910
延床面積:約250坪
住所:福岡県福岡市中央区天神2-5-28 天神西通りセンタービル5F・6F (総合受付6F)
アクセス:福岡市営地下鉄「天神駅」、 西鉄「福岡(天神)駅」

〈プラン別月額料金・利用時間(税込)〉

・フリープラン、固定ブースプラン、オフィスプラン共に契約時、事務手数料(月額利用料の1ヵ月相当額)が必要。
・オフィスプランは契約時、敷金(月額利用料3ヵ月相当額)が必要。
・オフィスプランの電気利用料は別途請求。

■関連リンク
「The Company DAIMYO」公式WEBサイト:https://thecompany.jp/multi-location/daimyo/

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