宝鐘マリン「マリン出航!!」が見せてくれた、VTuberがけん引するアニメ表現の未来形
ホロライブ所属のVTuber宝鐘マリンが、4月27日に公開したオリジナル楽曲「マリン出航!!」のMVが大きな話題を呼んでいる。公開から1日目に100万回再生を突破、1週間もせずに200万回再生も突破するなど、破竹の勢いをみせているからだ。
今回は作曲家として言わずと知れたアニソン界の大御所、田中公平が参加している。田中は宝鐘マリンがファンであると公言する『サクラ大戦』シリーズにも深く関わっており、宝鐘マリンが「大きな夢」と語るこのコラボレーションには、ファンも喜びの声をあげている。
そしてこの「マリン出港!!」の MVの存在は、今後のアニメ表現に大きな変化を促すかもしれない。そう感じさせるほどの、衝撃的な出来事だった。
近年のMVにおけるアニメ表現の進化は、目を見張るものがある。アニメ表現を多用するアーティストといえば、amazarashiや近年ではEveの存在が目立つだろう。amazarashiはボーカル・ギターの秋田ひろむが、顔を出すことに積極的ではないため、匿名性を守るためにはうってつけの演出だといえる。そしてEveはそのアニメPVのクオリティの高さも話題となり「平行線」のMVをはじめ、多くの作品がアニメファンからも注目されている。
MVやCMのような短編アニメが、大規模な商業アニメ作品のヒットにつながったケースはいくつもある。たとえば坂本真綾が2007年に発表した「ユニバース」のショートフィルムでデビューを果たした劇団イヌカレーは、後にTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の異空間設定などを担当しており、独特な表現が社会現象とも呼べる大ヒットを呼ぶ要因の1つともなった。
また、いまではアニメ映画監督の代表格といえるほど名を知られている新海誠も、多くのCM作品を手がけている。Z会の『クロスロード』の映像表現が『君の名は。』の制作にも影響を与えているほか、大成建設のCMでも華麗な映像美が話題を呼んでいる。このように、CMやMVなどの短いアニメ表現が、その後に大作商業アニメ作品に昇華されていき、大きな話題となることも少なくない。
それでは、最も注目すべきアニメMVはどこにあるか。それはVTuberである。まだその文化が生まれてから歴史の浅い文化にも関わらず、その成長には目を見張るものがある。
いまでも多くの企業系VTuberが「歌ってみた」やオリジナルの音楽を発表しているが、その映像に関しては、プロのイラストレーターが描き下ろした数枚のイラストを元に、映像編集ソフトの加工によって映像を成立させている作品も多い。視聴者が楽しむ分には、魅力的な歌声とイラストがあれば成立していた。
しかし、近年ではアニメを用いたMVも増えており、特に4月27日に公開された「マリン出航!!」のMVは、すでに個人が出資して制作するレベルを遥かに超えており、驚きの声が上がった。元々宝鐘マリンは年1回ほどのペースでオリジナルソングを発表しており、その度に話題を集めていたが、今回はアクション作画の緻密さや、宝鐘マリンらしいお色気作画に至るまで、アニメ表現として高いレベルに舌を巻く。