【特集】社会は「ひとり空間」を求めている(Vol.2)
「ソロワークスペース」やYouTuberの支援まで 個人活動の場所を提供するスペースマーケットがコロナ禍で捉えた変化
コロナ禍により、簡易的な防音室や駅中のリモートボックス、娯楽施設のソロワークプランなど、社会における「ひとり空間」が求められその需要は高まっている。本特集では、ひとりひとりに合わせた空間を提供し、サービスや製品を販売している企業に、今後の社会における「ひとり空間」の重要性についてインタビューしていく。
スペースのシェアリングサービスとして数々の場所の貸し借りを提供するプラットフォーム「スペースマーケット」。コロナ禍において誰しもが経験し、いまではスタンダードとなったテレワークに対しても「ソロワークスペース」を提供し、人々が集まる場所からひとりで作業する場所へ、ユーザーの場所に対するニーズを急速に変化させた。また、ビジネス利用だけでなく、YouTuberをはじめとした動画クリエイターへ支援を行うなど、横の展開も進めている。コロナ禍で大きな変化を目の当たりにしたスペースマーケットは、今後どのような空間を提供していくのだろうか。株式会社スペースマーケットのCSO・井上真吾氏に話を聞いた(リアルサウンドテック編集部)
コロナ禍における「スペースマーケット」の利用の変化
ーーコロナ禍において「スペースマーケット」の利用にはどんな変化がありましたか?
井上真吾(以下、井上):以前は大人数でパーティをしたり、セミナーを開いたりという用途が大半でしたが、コロナ禍になり、利用する方々の人数が7〜8人から4人くらいに減りました。ビジネスの利用では圧倒的に1人での利用、プライベートでの利用は2〜4人くらいが増えています。ビジネスはもちろんソロワークでの利用、プライベートではカップルや家族など少人数での利用が増えたんです。
また、都心以外のエリアでの利用が増えました。これまでは大人数で集まる時にみんなが行きやすい渋谷、新宿、池袋などの都心での利用が多かったのですが、コロナ禍によってテレワークなど個人で使う方も増えたため、大宮、船橋、川崎など少し郊外のターミナル駅の利用が増加しました。みなさん自宅から近い場所を選ぶようになられたのかと。
ーー感染拡大により世間の情勢の変わり方はかなりスピードが早かったと思いますが、どのように顧客のニーズに対応していったのでしょう。
井上:世間の情勢に合わせて実際の利用や予約の傾向などを分析して徐々に適応していきました。ホスト(レンタルスペースを提供する側)さんへ呼びかけて除菌グッズの提供や、換気の徹底などをしていただいたりとか、プロダクト的にはそういったお部屋が探しやすいよう、検索画面に感染対策に関するチェックボックスを追加したりなど。ユーザーさんも必然的に感染対策を徹底しているお部屋を選びますから、その需要は伸び、段々と整っていきましたね。
ーー感染症対策に関してはかなりシビアに考える方もいそうですが、トラブルなどはなかったのですか?
井上:もちろんゼロではありませんが、ホストさんもユーザーさんもシェアリングサービスを理解されてスペースマーケットを利用している方が多いので、そこまで起きませんでした。というのも、お部屋を借りたあとにレビューを書くシステムが備わっているので、お互いに気持ちよく貸したい、借りたいという使い方ができているのが大きいと思います。
ーーその他、コロナ禍による変化はありましたか?
井上:スマホからの予約が増えたことですかね。これまでは大人数での利用が多かったため、肌感としてリードタイムが1週間程度ありました。コロナ禍に入ってからは利用する人数が減ったため、予約までの意思決定の速度が上がったんです。だからこそモバイルファーストとなり、スマホからの利用が増えたのかなと。
コロナ禍の外出規制に合わせて「ソロワークスペース」の需要にも変化が
ーースペースマーケットで展開している「ソロワークスペース」では会議室、ホテル、カフェ、ワークボックスなど様々な場所を提供していますが、どんな方からの需要があるのでしょうか。
井上:ホテルの一室などは半日〜1日その場所で過ごすという方が利用されます。家では過ごせないから場所をがっつり移して仕事しようという方ですね。このホテルの利用はコロナ禍の初期、緊急事態宣言など、外出への規制がかなり厳しかった頃から需要がありました。そしてだんだん規制が緩くなったり、解除されたりして人が外へで始めるとカフェなどのオープンなスペースやワークボックスへの利用が増えました。
ーー様々なソロワークの場所を提供して気づきなどはありましたか?
井上:いまは、コロナ禍の初期よりも働き方に個人差が出てきたことで、求められるスペースが様々になってきましたね。コロナ禍初期に人気のあったホテルの一室は利用料金としては他のスペースに比べて高くなります。初速も良かったですし、我々としてもニーズがあるだろうなと思っていたのですが、供給に比べて需要は限られている状況です。現在テレワークが推奨されているとはいっても、出勤とテレワークのハイブリッド働いている方もいたりと様々です。ホテルの需要が伸び悩む一方で、1時間〜2時間くらいの短時間で利用できるワークボックスは、場所や時間帯によっては混雑していることもあるので、こういった需要と供給のバランスは難しいなと感じています。
ーーいろいろなひとりでの働き方を提案しているからこそ、ユーザーを一緒くたにすることができない動きが見えてきたのですね。ほかに課題に感じたことなどありましたか?
井上:ソロワークスペースを探したいというユーザーさんに対し、スペースマーケットを使えばいいんだという認知はまだまだ少ない気はしています。「渋谷 カフェ 集中」のようにGoogleなどで検索して、様々なサイトを比較して探す、という方が多い現状かと。スペースマーケットを使えば場所やワークスタイルに合わせて検索ができる、という認知をもっと示していかなければと思っています。
ーーちなみに、ソロワークで人気のある場所はどちらでしょうか。
井上:いまは外出への規制が少なくなってきたので、ワークボックスの需要は高まりましたね。また、ワークボックス自体も増えてきているんです。「テレキューブ」や「ステーションワーク」など様々なメーカーのものが出始め、駅などで見かける機会が増えたことで利用する人も増加したのかと。
また、オフィスにワークボックスを導入している企業もあるんです。オープンスペースでそれぞれがオンライン会議をしていたら、声がぶつかってしまったり、ほかの方の邪魔になってしまったりしますよね。でも会議室は増やせないし……という新たな需要により、オフィスに導入されているんです。