体内にチップを埋め込んで決済が可能に? 専門家は安全性を主張し、EUでは半数が「検討する」と回答

 機器に手をかざすだけで、すぐに支払いが完了する。未来の技術のような話だが、すでに実用化されている。

 初めて人間にマイクロチップが埋め込まれたのは1998年だが、商業的に利用できるようになったのはここ10年の間だ。中でも、決済ができる埋め込み型のマイクロチップについては、イギリスとポーランドの企業であるウォレットモール社が、2021年に初めて販売にこぎ着けたばかり。

 創業者で最高責任者のヴォイテック・パプロタは「リオのビーチで飲み物、ニューヨークでコーヒー、パリで散髪の支払い、あるいは地元の食料品店での支払いに利用できます」と利便性を謳う。「非接触決済が可能な場所であれば、どこでも使えます」。

 ウォレットモール社のマイクロチップは、重さ1グラム未満で米粒ほどの大きさ。同社によると、マイクロチップは埋め込んだらすぐに機能し、体内でしっかりと固定される。一般的な非接触タイプのデビットカードやクレジットカードによく見られる技術に似た仕組みで、充電も不要。規制当局の認可を得ていて、安全性も確かだという。同社はすでに500個以上のマイクロチップを販売している。

 オランダ在住で警備員をしているパトリック・パウメンは愛用者の1人だ。2019年に左手の皮下に非接触型決済のマイクロチップを埋め込んだ。お店やレストランでお金を払うたびに、レジの店員が驚いて大騒ぎになる瞬間がお気に入り。

 体内に入れると聞くと、どうしても体に埋め込むときの痛みが気になるところ。パウメンいわく「人に肌をつねられるときと同じくらい」とのこと。

 多くの人にとってマイクロチップを体に埋め込むという発想はぞっとするものだが、2021年にイギリスとEUの4,000人以上を対象に行われた調査では、51%が「検討する」と回答している。

 しかし、埋め込み型のマイクロチップには懸念を示す研究者もいる。将来ますます高度になり、個人情報が搭載されるようになると、その安全性は不確かだ。個人情報や位置情報の流出が考えられるし、高度な組み込みチップについては、慎重な見方が多い。

 埋め込み型のマイクロチップは、決済以外でも実用化され、好例もある。

 ウィンチェスター大学でイノベーションと起業家精神の分野で上級講師を務めるスティーブン・ノーサムは、2017年に埋め込み型の非接触マイクロチップを製造するバイオテック社をイギリスで創業した。

 同社は障がい者を対象に、ドアを自動的に開けることを可能にするマイクロチップを販売している。毎日問い合わせがあり、すでにイギリス国内で500個以上を販売した。

 ノーサムは「この技術は、すでに何年も前から動物に使われている」「非常に小さくて不活性な物体です。リスクはありません」と安全性を主張している。

(画像=Walletmor社ホームページより)

(Source)
https://www.bbc.com/news/business-61008730
https://walletmor.com/

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