『遊戯王 マスターデュエル』待望の新パックリリースも多くの課題。最大の問題は「自動デュエルBot」への対応

『遊戯王 マスターデュエル』が抱える多くの課題

 1月にリリースされて以降、累計ダウンロード数が2000万を超えるなど人気を博している『遊戯王 マスターデュエル』。リリースから約3カ月が経過し、初の新パック・新カードが実装され新たな局面を迎えている。そんな本作だが、好調の裏で様々な問題にも直面しているようだ。今回は、そんな『マスターデュエル』の現状を紹介・分析していこうと思う。

新規カード追加も低い環境の流動性。後追い型のDCG故の難しさ

 今回追加されたのは「ビヨンド・ザ・スピード」と「ルーラーズ・マスク」の2パック。前者には強力なシンクロモンスターである「フルール・ド・バロネス」が、後者にはアナログTCGで環境上位に位置する「デスピア」テーマがそれぞれ収録されているものの、どちらも現在のマスターデュエルのカードプールでは本領を発揮しきれていないのが現状だ。

 それに加えて、追加カードに合わせて既存の強力なカードに対する規制が行なわれなかったこともあり、ランクマッチで当たる上位のデッキの顔ぶれは変わらず、所謂「環境デッキ」はリリース当初から変わっていない。

 とはいえ、月初めはランクがリセットされるため、多くのプレイヤーは最高ランクに到達するまで既存の強力なデッキを使用することが予想される。これが落ち着けば、新カードを活かしたデッキを見る機会も増えるだろう。

リリース前から話題になったフルール・ド・バロネス
リリース前から話題になったフルール・ド・バロネス

 マスターデュエルで実装されているカードは、アナログTCGの後追いとなっており、今回登場したカードも、アナログ版で約1年前にリリースされたものが中心となっている。そのため、どのデッキが強いかは事前にある程度分かっており、新規のカードの強さを試してみたり、新たなコンボを探すといった創意工夫が他のDCGと比べてし辛いのが実状だ。

 DCG自体が、ゲーム内報酬やランク戦で上位を目指すことがモチベーションになりやすいため、勝てるデッキが求められがちだ。その故、『マスターデュエル』から遊戯王を始めた新規層やライトユーザーは、自分でデッキを構築するよりも、有名プレイヤーの作ったデッキや、過去の大会で実績を残したデッキをコピーして使った方が効率が良い。もちろん情報が多いおかげで、誰でも簡単に強いデッキが組めるのはメリットではあるし、コピーしたデッキを自分なりにアレンジするのはまた別の面白さがある。

 もちろん、アナログ版の収益を考えると後追い実装は致し方ない。それに加え『遊戯王』独自の理由として、非常にルールが複雑で、似たようなテキストのカードでも裁定が異なったり、効果の処理が「調整中」の状態が長く続くものも存在するため、ある程度の期間を明けてからの実装はやむを得ないだろう。

 それでも、環境に流動性がなければマンネリ化に陥り、ユーザーが離れていってしまう。そうなる前に、独自の禁止・制限カードの設定や、カードの追加が必要なのではないだろうか。

常に改善されていくイベントに期待

 マンネリ化を防ぐには、既存のカードプールとは異なるルールで行なうイベントも有効だ。『マスターデュエル』ではこれまで、月1回特定の召喚法や、レアリティに絞ったイベントを行なっており、4月にはシンクロ召喚をテーマにしたイベント「シンクロフェスティバル」が行なわれている。

 『マスターデュエル』のイベント運営は、ユーザーの声に対応するのが早く、好印象だ。2月に行なわれた「エクシーズフェスティバル」では、報酬を効率よく集められる自爆デッキの流行と、運営の迅速な対応が話題となった。

『遊戯王マスターデュエル』自爆デッキへの迅速な対応に称賛の声 ライトユーザーを見捨てない運営の気概

1月18日に配信開始された『遊戯王マスターデュエル』(以下、マスターデュエル)。2月17日から2月24日までの期間、「エクシーズ…

 また、イベントのルールに合わせてデッキを組まないといけないのは、無/微課金ユーザーにとっては厳しいが、「シンクロフェスティバル」では、誰でも使用できる「レンタルデッキ」も中々に強力で、参加の敷居がかなり低くなっているのも好感が持てる。

 もちろん、イベント運営に課題がないわけではない。3月に行なわれた低レアリティ限定の「NRレアリティフェスティバル」では、細かい禁止制限を設けたものの、特定のテーマが非常に強力だったため規制不足が指摘されていたし、「シンクロフェスティバル」や「エクシーズフェスティバル」では、ピックアップされた召喚方法を使用しないデッキも多い。イベント向けの禁止制限や、特定の召喚方法にミッションで報酬を与えるなどの施策がとれるだろう。

 また、カードプールを狭めると相手の展開に対抗するカードも減り、逆にデュエルが長期化・ワンサイドゲームになりやすくなるのも難点だ。1ターンの長さは通常のランク戦と共通する課題なので、効果処理のエフェクトを早くするなど、『遊戯王』のプレイフィールを失わない範囲で対策してほしい。

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