生誕30周年を迎える「星のカービィ」 最新作にも受け継がれた“カービィらしさ”の本質とは?

 “何でも吸い込むまん丸キュートな食いしん坊”でお馴染み「星のカービィ」(以下、カービィ)。ゲームクリエイター・桜井政博氏の手によって生み出されたこの愛らしいゲームキャラクターは、2022年4月27日で生誕30周年を迎えることになった。

星のカービィ ディスカバリー 紹介映像

 これまでに発売されたシリーズタイトルのソフト総売上は3800万本以上(世界累計)、ゲーム作品だけでなくマンガやテレビアニメといったメディアミックス展開が盛んに行われ、作品の世界観をモチーフとしたコラボカフェ及びグッズショップも誕生。そして「カービィ」シリーズのアレンジ楽曲が第64回グラミー賞に選ばれたりと、ゲーム業界を中心に多方面から注目を集め続けている。

 そんな「カービィ」シリーズの根底に通じる魅力とは一体何なのだろうか。今回は3月25日にリリースされたばかりの最新作『星のカービィ ディスカバリー』(ディスカバリー)のゲームシステム等も参照しつつ、「カービィ」シリーズ特有のエッセンス、およびシリーズ共通の本質的な魅力を掘り下げる。

3種類の基本アクション&コピー能力で駆け抜けた30年間

 「カービィ」シリーズの魅力を論じる前に、まずは原点のゲーム性やシリーズの周辺情報を軽くおさらいしておこう。

 1990年4月27日に送り出された第一作目『星のカービィ』(ゲームボーイ)について。2000年当時のインタビューによると、桜井氏は「初心者用のゲームを作る」ことを開発コンセプトとして掲げていたようだ。ゆえに、『星のカービィ』には敵キャラと接触しただけでは即ミスにならないような「バイタリティ制」(ライフ)のほか、ジャンプ中に空中を浮遊できるホバリングアクションが導入されている。

星のカービィ プレイ映像(ニンテンドー3DS バーチャルコンソール)

 カービィを標榜する「吸い込み&吐き出し」アクションも第一作目から実装済み。頭上から踏みつけたり、パンチやキックで打撃を加えずとも、敵を吸い込んで吐き出すだけで完結するアクションゲーム初心者でも分かりやすい仕様になっていた。

 こうした3種類の基本アクション(吸い込み・吐き出し・ホバリング)に加えて、次作『星のカービィ 夢の泉の物語』(ファミコン)では早々に「コピー能力」が扱えるように。敵を吸い込んで吐き出す以外の選択肢として、”飲み込んだ敵キャラクターの能力をカービィ自身が取り込める”ようになったのだ。「ソード」「ファイア」「スパーク」等々のコピー能力はそれぞれ特性が違うため、真価を発揮するためにはプレイヤー側で上手く使い分ける必要があった。

任天堂公式HPより

 とは言えゲームバランスが難しくなった(上級者向け)のではなく、『夢の泉の物語』のメインユーザー層は『星のカービィ』と同じくアクションゲーム初心者。それでいて、コピー能力の実装によってゲーム性に広がりが生まれた……という印象だ。

 以後、「カービィ」シリーズは作品を重ねるごとに「マルチ協力プレイ」や「コピー能力の合体」などの課題を実現させ、同時に「カービィ」の新たな方向性を見出そうと多数のスピンオフタイトル(パズルゲームやレースゲームなど)を展開してきた。また、ゲーム機の2画面&タッチ操作をフル活用した『タッチ!カービィ』(ニンテンドーDS)をはじめ、各プラットフォームの機能を生かした新機軸が組み込まれることもあった。

任天堂公式ストアより

 しかし、基本的には上記で述べた3種類の基本アクション(吸い込み・吐き出し・ホバリング)とコピー能力がシリーズの軸になっており、30年経ったいまもなお伝統的に受け継がれているのは間違いないだろう。そして、シリーズ伝来の基本アクション群に基づくシンプルなプレイフィールこそ、「カービィ」シリーズの魅力を紐解く重要なカギになるのだ。

魅力の源泉は「初心者でも楽しめるゲームバランス」

 「カービィ」シリーズが秘める魅力をメカニクスの観点からシンプルに言えば、やはり“ゲーム初心者でも十分に遊べるマイルドなゲームバランス”ではないだろうか。

 2Dアクションゲームとして展開を続けてきた「カービィ」シリーズは、上述のバイタリティ制を筆頭に、普段アクションゲームに触れないライトユーザーが遊んでも楽しめる仕組み作りが見受けられる。それはステージ構造しかり、ギミックや敵キャラクターの配置も同様だ。豊富なコピー能力の数々も複雑なようで個性がハッキリしており、一目見るだけで用途が分かるものも多い。

星のカービィ スーパーデラックス プレイ映像(Wii Uバーチャルコンソール)

 なおかつ、シンプルにまとめられたカービィの操作方法が遊びやすさに大きく寄与している。各タイトルごとに多少の違いはあれど、アクションの大部分は「敵を吸い込む→飲み込む or 吐き出す」「空中を浮遊して足場を渡る」といったもので、直感的に分かりやすい。

 特にホバリングアクションは一種の発明で、足場から落ちたとしても(ある程度の猶予があれば)復帰できるし、落とし穴を越えて足場を渡るような場面でも、ふわふわと浮いたまま容易に突破できる。総じて見るに、「カービィ」シリーズの魅力はこうした基本アクション群に基づいた“唯一無二の遊びやすさ”にあるのではないだろうか。

 ちなみに桜井氏は前述のインタビューにて、「カービィ」シリーズのイメージに対し、「子ども向きというパブリックイメージがあるが、あくまでも初心者向けである。だから難しいところもあるし、スピード感だってある」とコメントしている。魅力の源泉はゲーム初心者でも遊べるバランスにあり、一方でゲーム上級者の欲求にも耐えうる要素が組み込まれている……と言うわけだ。

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