特集「Web3によって変化するエンターテインメント」(Vol.1)

「原宿カルチャー」と「Web3」は似ている? MetaTokyo鈴木貴歩&アソビシステム中川悠介と考える

経済圏内での「囲い込み」から「共存」へと変わっていく

約5時間で完売した「メタトーキョー」のデジタル・パスポート「MetaTokyo Pass」

ーー「囲い込み」に関しては、どうしても大企業が覇権を握りたいがため、自分たちでプラットフォームを構築し、自社の経済圏に取り入れるケースも少なくないと感じています。これは、Web3の考え方である開かれた非中央集権の概念とは逆行してしまっていると言えるかもしれません。この辺はどのような所感をお持ちですか。

鈴木:プラットフォームを作り、自社の経済圏に取り込んでいくというビジネスは、Web3が発展すれば少なくなるのではと思います。「『体験』と『価値』は一箇所に集中できない」と思っていて、NFTを理解するにはOpenSeaがわかりやすいけれども、そこで買ったマテリアルを飾る場所はメタバース上になるとか、一方でアートのNFTを買うならFoundationがよいとか。

 色々と選択肢があるなかで、それらを有機的に繋げられることがWeb3の良さであり、その根本にある思想とも合致していると認識しています。普及はこれからだと思いますが、暗号資産のウォレットを通して、どんどん連携していく様には今までにない広がりを感じています。それが伸びていったとき、メタトーキョーでやろうとしている世界も近づいてくると考えていますね。

中川:経済圏を作りたい大企業に対して、僕たちのチームとしての役割も明確に見えてくると思っていて。むしろいままでと比べて大企業と組みやすくなったと感じています。誰もが中途半端なプラットフォームを構築する時代でもなくなってきているなか、メタトーキョーはどこのプラットフォームに依存するわけでもない。経済圏ごとにコンテンツの出し方や作り方なども、いろいろと模索していけるのではと考えています。

ーーWeb3の世界でメガベンチャーが出てくれば、またその中でGAFAの構築したような中央集権構造が小さい単位で生まれる可能性もありますよね。

鈴木:自分自身、Spotifyなどの音楽ストリーミングの可能性を初期から感じていて、日本で広める役割もさせていただきました。その可能性は今でも変わらないことですが、同時に仕組みの欠点として見えていなかった「ユーザーが多くなってきたことで生じる歪み」を直さなきゃいけない側面も出てきている。他方Web3の世界でも、緩やかな連携みたいなところはなくならないと思いますが、プラットフォームに何かをフックアップしてもらう場合、ユーザーが自分の好きな体験やコンテンツをいろんなプラットフォームで作れるのが、ある種Web3的な考え方だと言えます。

 それが意識されるなら、Web2と全く同じような状況は生まれないでしょう。たとえば、メタバース上に建物を作るといっても、コロナ前であればそんなに簡単なことではなかったものが、今だとWeb3やDecentralandなどの特性を踏まえて、非常にやりやすくなっている。こうしたところの可能性をもっと追求していきたいですね。カルチャーファーストを軸に、表現と経済圏を広げていくための最新のやり方を見出していければと考えています。

中川:Web2の概念がだめだから、なくなるから。といって、Web3に着目するというのはそもそもの考えとして持っていません。そうではなく、Web3の言葉の響きやその先にある可能性が面白いなと思って、メタトーキョーをやり始めたんですよ。それは、エンタメに事務所が必要か否かの問題にも通ずるところがあります。今までは選択肢が少なすぎたために、例えばデビューするならレコード会社とメジャー契約したりするだけだったわけです。

でも、いまの時代はなんでもできるので、レコード会社と契約する以外でデビューする方法はいくらでもある。また、音楽についてもコロナ前は有観客のライブ一択だったのが、コロナになってオンライン配信も盛んに行われるようになり、リアルとオンラインのハイブリッドが注目されるようになった。何かが悪いから何かをやるという発想ではなく、Web2からWeb3へと先に進んでいくなかで、それぞれが共存する形になっていくと考えています。

原宿カルチャー黎明期のカオス感と近いWeb3の世界

ーー最後に、メタトーキョーが目指す短期的なビジョンとして、具体的に描いているものがあれば教えてください。

鈴木:1つ目はリアルなカルチャーをWeb3化することで、世界的な大ヒットを生み出すこと。2つ目が、Web3ならではの新しいエンタメやIPを創って大ヒットを生み出すこと。両方同じことではありますが、やり方は全く異なると思っていて、まずはその2つに注力していく予定です。

中川:今回のメタトーキョーって、いままでの僕らが出会ったいずれの概念とも違うと感じているんですね。すべてが新しく思えるところが、過去に原宿カルチャーを作ったときや、きゃりーぱみゅぱみゅを生み出した頃の感覚に似ていると思っています。

ーーその当時の中川さんの心境としては、ワクワクした気持ちが強かったんですか?

中川:そうですね。ワクワクした感情を持ちながらやっていました。

鈴木:新しい何かを生み出すときって、相当カオスな状態のなかから道筋を作っていくわけですが、当時と今と比べて中川さんはどう感じていますか?

中川:昔は何をしていいのかわからなかったため、自分たちでとにかく動き回っていたんです。情報は来るものではなかったので、足で動いて情報を取りにいってましたね。一方で、今の時代は情報の伝達が速すぎて、いろんなことが瞬時に動いていく。速度がカオスを生んでいるような気がしています。

鈴木:個人的な意見としては、情報を選択するスピードも速くなきゃいけないと考えています。やはり今の世の中では、自分の求める情報が100%揃うことはないに等しい。だからこそ、カルチャーが大事になってくると思っていて、そこに紐づく情報をいち早くキャッチし、すぐに行動することが肝になってくるでしょう。もし合わなければ、次のプランを考えてまた行動に移していく。この繰り返しになっていくと思いますね。海外に比べて、日本のエンタメシーンがテクノロジートレンドを取り入れるのが遅いと言われる背景には、「情報が揃うまで待ちたい」というマインドセットがあったからかもしれません。

 K-POPのグローバルな拡がりも素早い動きがベースになっていました。また重要なのが人的ネットワークです。

 いま、メタトーキョーや私が関わっている他のエンタメ x Web3プロジェクトを通じて、グローバルの人的ネットワークが急速に繋がってきています。その中には“久しぶり!”という知り合いもいて、改めて人の繋がりが全ての起点になっていると感じています。そうした世界の人的ネットワークとのハブにメタトーキョーもなれると考えています。

(メイン画像=Unsplashより)

関連記事