特集「Web3によって変化するエンターテインメント」(Vol.1)

「原宿カルチャー」と「Web3」は似ている? MetaTokyo鈴木貴歩&アソビシステム中川悠介と考える

エンタメ全体が「文化輸出」に注力していく必要がある

ーーメタバースという概念は普及してきていますが、Web3に関する日本の動きは、ビジネス界隈で先行してさまざまな取り組みが動いているのに対し、エンタメ界隈では初動が遅いイメージがあります。

中川:日本のテック業界とエンタメ業界が乖離しているのが、昔からの大きな課題だと思っていました。アメリカの場合、両業界が近しく、何かを始めるにしても初期の段階から一緒に混ざって取り組んでいくのがスタンダードになっています。日本はどうしてもエンタメ業界の方からテックに乗っかってくる場合が多い。そういう意味で言うと、こうした慣習が「グローバルへ打って出る際に足かせになっているのでは」とずっと感じていたんです。

 なので、今回メタトーキョーに最初の段階から参画しているのも、「Web3やメタバースの概念を浸透させる」というミッションと、普段僕たちがやっている「タレントやアーティストをどう売っていくか」を考えることに同じような感覚を持っているからです。要は、表現の仕方次第なんだなと。Web3やメタバースをわかりやすく翻訳して伝えていくことができれば、エンタメ業界にいる人たちでも理解して進めていけるようになるんじゃないかと思うんです。いまって「味を知らないものは食べない」ような食わず嫌いの状況になってしまっていて、そこに入っていく勇気とスピード感が大切なのではと考えています。

鈴木:今後はエンタメ全体が「文化輸出」に注力していく必要があると思っています。マクロな視点で見れば人口減少のこともありますし、テクノロジー視点で言えばストリーミング配信やデジタル配信など、世界でマネタイズできるネットワークや手法が今までにないくらい存在しています。その中に今度はメタバースが登場し、暗号通貨を通じてマネタイズできる環境が生まれた。アバターに着せる服やアクセサリーも売れるようになったわけですが、これはいままでのライブグッズを販売したりすることの延長として捉えることもできます。「デジタル化すれば世界に販売できる」というように、今までの考え方をアップデートすれば、新たな道が広がっているというのを日本でもっと発信していくためにも、メタトーキョーが起点になれるようにしていきたいと思います。

ーーバーチャルの世界に興味はあるけれど、「なにをしていいかわからない」と思うクリエイターも多いなか、そこを支援していく立場のプレイヤーも必要になってきますよね。

鈴木:メタトーキョーの面白いところは、NFTとメタバースの両方を活用しているところなんです。NFTに関してはアートや音楽、アバターのグッズなどをマネタイズして流通させられるのが特徴です。ただ、NFTの隆盛はニュースで見たものの、それをどう楽しめばいいのか想像しづらい部分もある。そのため、メタバース上の空間で誰かに見せたり語ったりといった体験を伴うことで、腑に落ちる人も多い印象を受けています。こういった両面を設計して実行できるのがメタトーキョーの特徴であり、強みだと思っています。

日本のフードカルチャーもWeb3と親和性が高い

ーーメタバースが発展すれば、音楽やアート、ファッション以外のエンタメ領域にも拡大していくと予想していますが、メタトーキョーとしてどんなカルチャーを巻き込んでいきたいですか。

鈴木:基本的にポップカルチャーと括ることができるものであれば、メタトーキョーと親和性があると思います。将来的には「フード(食)」も十分可能性があると感じていて。というのも、昔から日本の食を世界に発信するということが幾度も行われており、文脈があるからです。味わってもらうのは無理だとしても、日本の米や酒、果物などにはさまざまな作り手のストーリーやクラフトマンシップがある。それを世界の人に知ってもらうためのブランディングとして、大いに活用できるのではと考えています。さらにNFTを発行すれば、そこにフードコミュニティができていき、新たなシナジーが生まれることにもつながるでしょう。

中川:メタバースやWeb3の世界では、「仲間としてやっていこう」という感覚を持てるので、同業の仲間たちも全て巻き込んでいく気概を持って取り組みたいと考えています。また、アソビシステムとしてもポップカルチャーはもちろん、会社として扱えるコンテンツはすべてメタトーキョーと親和性があると思っています。加えて、同業他社のコンテンツも扱えるようにも将来的にはしていきたいですね。

鈴木:たとえばイベントを盛り上げたいとなれば、顧客の囲い込みや他社との差別化をする方向性に議論が進みがちですが、メタバース全体を盛り上げていくためには先程も言ったとおりストック(蓄積)の場所として機能する必要がある。例えばメタトーキョー内にあるブランドが建物を建てたとしても、競合として捉えるのではなく、そのエリアを盛り上げる仲間として見ることが大事だと思います。ノウハウを蓄積していき、さまざまなアーティストとコラボしていければと考えています。

ーー逆に、Web2からWeb3に移行していくことで、相性が悪くなったり通用しなくなったりするものはあるんでしょうか。

鈴木:既存のビジネスにおいての「囲い込み」といった考え方は、Web3では機能しなくなると思いますね。これは今後のエンタメビジネスのあり方と一緒で、個で活躍できる、頑張れるアーティストやクリエイターを囲い込もうとしても無理なわけです。メタトーキョーのパートナーになってもらうプレイヤーを囲い込むのではなく、オープンにいろんなネットワークのなかで、パートナーの実績や得意分野を持ち寄ることでさらに広がっていくイメージを持っています。

中川:僕を含め、エンタメ業界は、NFTとメタバースとWeb3がどういう関係性になっていて、これからどうなっていくのかについて把握しきれていない人が多いと思うんです。関連する情報がたくさんあるなかで、しっかりと理解していくことで、仲間を増やしていくことをまずは考えていきたいですね。

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