“禁断の関係”に惹きつけられる理由 『金魚妻』『私が獣になった夜』などから考える

 恋愛のタブーを描いたドラマは、いつの時代も私たちを惹きつける。1990年代に放送され、社会現象を巻き起こした『高校教師』(TBS系)が、その最たる例だろう。教師と生徒が、タブーな恋に落ちていく姿が話題を集め、最高視聴率33%を記録した。2014年に大ヒットしたドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系/以下、『昼顔』)も、夫以外の男性に惹かれてしまった笹本紗和(上戸彩)の葛藤を描いた物語。最近では、篠原涼子が不倫妻を演じたドラマ『金魚妻』(Netflix)が多くの反響を呼んでいる。

 “禁断の関係”に迫るドラマは、なぜこんなにも人々の心を掴むのだろう。本稿では、その理由を考えていきたい。

 冒頭で触れた『金魚妻』は、タワマンに住むセレブ妻が、不倫にのめり込んでいく姿を描いた作品。Netflixグローバル・トップ10にもランクインしており、いま最も注目を集める不倫ドラマのひとつだ。タブーのなかでも、“不倫”を扱った作品は、先の展開が読めないから面白い。多くのラブストーリーは、ヒロインの恋が成就するまでのプロセスを描くのに対して、不倫ドラマは着地点が想像しづらいのが特徴である。

 『金魚妻』も、そうだ。主人公の平賀さくら(篠原涼子)は、夫からDVやモラハラを受けている。その救世主として存在するのが、不倫相手の豊田春斗(岩田剛典)だ。観ている側からすれば、「春斗といた方が幸せなのでは?」と思ってしまうが、そう簡単にはいかない。さくらは既婚者であり、不倫の事実がバレたらおそらくひどい仕打ちが待っているから。ならば、どうすれば……と問題を“自分ごと”にしていくうちに、いつの間にか感情移入している。

 不倫をしてはいけない。他人の家庭を壊してはならない。そんなことは、誰しもが分かっている。不倫ドラマを観たからといって、「じゃあ、私も……」とタブーな世界に足を踏み入れる人はなかなかいないはずだ。たった一度の過ちで、どれだけのものが失われるのかが、作品のなかで苦しいほどリアルに描かれているから。

 ただ、人生を諦めていた彼女たちが、恋をすることでふたたび自信を取り戻していく姿は、悩んでいる人の希望になりうるのかもしれない。不倫を描いた作品は、リアルとファンタジーの絶妙なバランスが、ヒットの鍵を握っている。“する側”が抱えている問題をリアルに描くことで、視聴者に感情移入させることができるのだ。

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