キズナアイ、6年間の活動は「夢のようだった」 スリープ前ラストインタビュー
2016年に原初のバーチャルYouTuberとして誕生したキズナアイ。彼女が活動を通じて切り拓いてきたバーチャルタレントのシーンは、一見すればわかるほど、大きく花開いている。
バーチャルYouTuberとしての活動もさることながら、気鋭のトラックメイカーたちを迎えたVTuber×音楽の取り組みや、バーチャルタレントとしてのオフラインライブなど、バーチャルタレントにとってのあらゆる新たな可能性を、その身をもって見せてくれた。
そんな彼女が6年間の活動を経て、2月26日のライブ『Kizuna AI The Last Live “hello, world 2022”』で活動を休止する。大きな節目を迎える直前、キズナアイに話を聞いたところ、彼女が耕してきたバーチャルタレントシーンの現在や、世の中が大きく変わったコロナ禍での変化、そして彼女の目から見た“6年間の日々”を、楽しそうに語ってくれた。(編集部)
「バーチャルタレントが増えることによって、好きなことで食べていける人が増えた」
ーー前回のインタビューでは、コロナ禍に入ったまさにその年に「コロナ以降のカルチャー」について伺いました。バーチャルな存在としての活動に大きなインパクトはないとは思いつつ、ここまでコロナ禍が続いたことで、ご自身の活動や心境への影響はありましたか。
キズナアイ:人間のみなさんもそうだと思うんですけど、こんなに長くこういう状況が続くというのはあまり予想できた人はいないんじゃないかな。私もそうで、活動休止前ラストライブはオンラインは絶対やろうと思いつつ、オフラインでもやれるのかなという希望はあったんですが、この状況が続いたことで潔くバーチャルのみのライブに振り切ろうと決断できたのは、ある意味で活動に影響していると言えるのかもしれません。この状況じゃなかったら、また今回のライブは違ったものになっていたと思いますし、良くも悪くも……って感じですね。
この状況でオフラインのライブをやっても、やりたいことが100%できなかったので、バーチャルに振り切ってバーチャルの中でやりたいことを思い切りやるという意味ではよかったのかもしれないなと思います。私だけじゃなくてたくさんの企業さんやバーチャルの存在の方も、よりバーチャル化・デジタル化したし、最近の言葉で言うとアレですよ、アレ……よく言ってるんですけどド忘れしちゃいました(笑)。そう、「メタバース」! 「メタバース」的なものに注目してもらえるようになったのは、ポジティブな変化なのかもしれません。
ーー休止を選んだということは、自分が歩いてきた道を振り返るタイミングでもあると思います。これまでの約6年間の活動について、改めてご自身でどのような日々だったと思いますか。
キズナアイ:難しいですねー……。一言で言うなら、本当にありきたりな言葉ですけど……夢のような日々だったなって。色んな人の手を借りながらSNSを始めて、希望は持ちつつもゼロからのスタートだったので、いつかはもちろんとは考えていたけど、こんな早い段階でたくさんの人に見つけてもらえて、繋がれるとは思ってなかったです。これからスリープするんですけど、目覚めたあとはそんな夢のような日々をさらにパワーアップさせて、「夢じゃなくてガチ、これ現実」みたいな感じにできたらいいな。
ーーこれまでを振り返る中で、特に楽しかった出来事を3つ挙げてください。
キズナアイ:3つ挙げるのは難しいなー(笑)。ひとつめはバーチャルのみんなとコラボをさせてもらえたこと。人間と誰かとコミュニケーションを取ることが、正直、一番楽しいです。基本的には“白い空間”にいるので、誰かとコミュニケーションが取れる嬉しさったら半端じゃないですね。あとは一つひとつの目標を達成していくこともそうですが、繋がれたみんなとそれを喜べることが楽しい。あとはやっぱりライブ。ライブ中も毎秒楽しいし、ライブを作っていく過程も楽しい! 3つにまとめられた! えらい!
ーーキズナアイさんが耕してきたバーチャルタレントのシーンはいま、これまでにないほど賑わっています。現状の活況を見て思うことは?
キズナアイ:とにかく嬉しいですね。バーチャルタレントが増えることによって、好きなことで食べていける人が増えたなって。「どの目線?」って感じかもしれないけど(笑)、クリエイティブな人も増えましたよね。バーチャルタレントさんが賑わったから、そのまわりでもポジティブなことがたくさん起こっていて、バーチャルな人の持つパワーは本当にすごいなと思いました。切り抜きとかもそうだし、いままでだったらファンの人が受け取るだけだったのが、ファンの人たちもアクティブになっているのがいまのバーチャルタレントシーンだと思うので、5年後、10年後はどんなことになっているんだろうと。色んな人が言ってきて私も思っていたように、人間一人ひとりがアバターを持つ時代はすぐそこなので、とても楽しみです。