『Fate/stay night』ギルガメッシュの宝具を“誰でも展開できる”ARがすごい 開発者・kiyo氏に聞く制作の経緯

ARデベロッパー・kiyo氏インタビュー

 株式会社Psychic VR Labが提供する、アーティストのためのXRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」。スマートフォンに同名のアプリをインストールすることで、誰でもARコンテンツを楽しめるのが特徴だ。そんなSTYLYを使ってゲーム『Fate/stay night』に登場するキャラクター・ギルガメッシュの宝具(同作における強力な武器)「ゲート・オブ・バビロン」をAR上に再現したアーティストがいる。作品はTwitterでも話題になり、さまざまなユーザーがゲート・オブ・バビロンを"展開"する様子が見られた。

 制作したのはインタラクティブエンジニア・ARデベロッパーのkiyo氏。氏はARを使ってアニメやゲームの世界を再現する活動をしており、別プロジェクトにおいては「NEWVIEW AWARDS 2021」のファイナリストにも選出されている。今回は彼にメールインタビューを敢行。「ゲート・オブ・バビロンAR」制作の経緯やARコンテンツへの思い、クリエイターとしての視座に迫る。

ーーゲート・オブ・バビロンAR、楽しませていただきました。ほかにも、ゲームやアニメの場面をARで再現する取り組みをしていますが、こうした表現活動を始めた理由や背景について教えて下さい。

kiyo:自分は本業でARを含む比較的新しい技術を用いたコンテンツを制作するエンジニアをしており、自身の技術向上のためにも、それらの技術を用いたプロトタイプ・習作などをプライベートで作ったりしています。友人と一緒に制作して、作品として発表することも多く、それらが自身の表現活動の出発点となっています。

 最近、ゲームやアニメの場面を再現したものに取り組んでいる理由としては、「AR技術を使ったコンテンツに、既存のエンターテインメントの技術を転用できないか」と考えたことがきっかけです。ARという技術は、『Pokemon GO』などのコンテンツで一般的になり、知られてはきています。 ただし、まだ一種「手品」や「飛び道具」的なものと捉えられがちで、コンテンツとしてもその域を出ないものが数多く存在しているのが現状です。

 そうではなく、ARコンテンツをもっと自分たちに馴染みのある、それこそゲーム・映画・アニメと同じレベルで楽しめて感動できるものに進化させる必要があり、そして私もそういうレベルの作品を提供していかなければならない。

 そのために今遊ばれている既存のエンタメから輸入できる演出や技術を見つけられないだろうか、その試行錯誤の一環として、「ゲーム・アニメ・映画の表現を再現し、体験できるAR作品」を作り始めました。

ーープロとしてのARクリエイションを更に発展させるための試行錯誤の一貫だった、ということですね。プロになる以前も含め、これまではどのような制作活動をしていたのでしょうか。

kiyo:学生時代にAR技術を研究していたことが、今のこの技術を使って制作を行っている原点になります。 当時から、いい意味で「AR」であることを意識されない、「技術の説明をしなくても体験が伝わるコンテンツ」というものを研究・制作していました。

 その後、研究していた技術を生かして広告系のイベントやキャンペーンなどのコンテンツ制作に従事し、現職ではエンジニアとしてエンターテイメント施設のアトラクション開発を行っています。そこではARを含めた新しい技術を用いながら、「技術と体験が溶け合ったコンテンツ」を制作しているのですが、 この「技術と体験が溶け合う」という視点は普段自分がTwitterなどで発表しているデモでも一貫してこだわっている点です。

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