にじさんじ・椎名唯華の葛藤と進化 問題児キャラを"個性"に変えた、仲間との交流と結束

 笹木の引退当日には、花畑チャイカと共に「にじさんじレジスタンス」を結成する。以前から話題に挙げていたこのコンビは現在でも続く名物コンビであり、椎名にとって花畑は自身の行く末を変えた一人だと言えよう。

 大人数が参加するイベントに出演しても出演者の輪からすぐに離れようとしたり、運営とのやりとりでトラブルを起こしたりしていた椎名には、やはり「絡みづらい」という認識が先行していたところ。そんな折、花畑は「にじさんじをぶっ潰す」という茶番(?)芸を通し、彼女の面白さや魅力を強く引き立て、彼女と多くの時間を過ごすことになる。

 たとえ椎名が配信中に周囲に対して攻撃的なことを口走っても、すぐにチャイカから理路整然とツッコミを返され、弱気な言動へと立ち返っていくという一連の流れ。こうした2面性とギャップは「問題児」キャラから「三下」キャラへ、どこか憎めない愛らしさとなって彼女のイメージを変化させていくことになる。

【漫才】椎名唯華、おでんに浮いてる白いアレの正体を知ってしまう【花畑チャイカ / 椎名唯華】【にじさんじ / 公式切り抜き / VTuber 】

 2019年4月17日、自身にとって初めての生誕祭となった配信では、「笹木への卒業メッセージのお返し」という意味合いでゲーマーズメンバー全員と舞元啓介からのお祝いメッセージが送られたり、椎名を慕うリスナーが誕生日企画として『Minecraft』上で大規模なワールドと建築物を制作し、椎名はチャイカと共にそのプレゼントを楽しんだ。

 「ライバーやってて良かった」と言葉をこぼし、ライバーにもファンにも愛され始めた椎名。4時間近いアーカイブのなかで、2019年4月当時の彼女の心境・状況、元ゲーマーズメンバーへの想いを語っている。

【#椎名唯華生誕祭】4月17日を共に迎えよう!(*^-^*)【椎名唯華/にじさんじ】

 そこから約2年、彼女は少しずつ変化を遂げていくことになる。チャイカを通じてSEEDsメンバーとの交流が増え、舞元啓介・鷹宮リオンの2人とはその後も大きく関わっていくことになる。

 舞元とは『実況パワフルプロ野球』の大会企画で名勝負・名シーンを配信するきっかけを生み、鷹宮とは「にじさんじレジスタンス」と「でびリオン」として交流したことがきっかけになり、その後も「Lilly Crown」「月下の桜」「にじさんじGALS」など多くのコラボ配信を共にする仲となった。

 このほかにも、イベントなどの舞台裏での絡みも多く、苦手なホラーゲーム配信で強い味方になってくれる剣持刀也、イラストレーターの神岡ちろるを同じ親に持つホロライブの猫又おかゆ、元にじさんじネットワーク所属で「クズ」をキャラにしている天開司など、にじさんじ内外で多くの交友関係を築くようになった。

 2020年には『Apex Legends』を中心にしたゲームのカジュアル大会にも多く出場するようになり、e-sports界隈のプロプレイヤーやストリーマーらとも交流を持ち始めるなど、それまでとは別のシーンに顔を覗かせたのも印象深い。

 加えて彼女は、月に一回欠かさず自身のリスナーを集めて、「近況について・今月の配信予定について・今後配信してほしいゲームタイトルについて」をまったりとトークする「ゴリスナー総会」や、猫又おかゆとの不定期な雑談系ラジオ配信「神岡家の気まぐれにゃじお」など、ゲーム配信だけでなく雑談配信を多めに取ることでリスナーとトークを重ねている。

 そこで見る彼女は、普段見せる姿と打って変わって、無言の時間もあるほどにゆるい時間を作り、コメントから話題を見つけ出してマイペースにトークを広げていく。昔のように不満を露わにすることもあれば、嬉しかったことを声に出して嬉しがったりと、自分の気持ちや想いの丈をしっかりと自身のファンに届けている。ヘニャヘニャと笑いながら会話を進める彼女のマイペースぶりは昔と変わらない。

 いかに忙しい時期といえども、ファンと交流する場を設けてペースを崩さずに配信を続けているのを見れば、彼女にとって「会話をすること」「気持ちを打ち明けること」がいかに重要なことなたのかがわかる。

 とある配信で花畑が「椎名は遅刻したり運営に怒られたりしてますけど、それがもう面白い。そのままで居てくれ」と話したことがある。その言葉の通り、彼女は当初の問題児ぷりをポップでコミカルなゾーンにまで落とし込み、今では自身の強烈なキャラクターにして、現在まで活動を続けている。

 そこに至るまでの継続を支えたのは、かつては距離を置いていた仲間であり、彼女を見守っていたファンであることはいうまでもない。友達がほとんどおらず、孤独感に苛まれていたデビュー当初の彼女は、もうここにはいない。

 にじさんじ内のイベントに多く出演してきた彼女にとって、4周年イベント『FANTASIA』への出演は大きな意味を持つだろう。「辞めてやろうと思った」から「ライバーになれて良かった」となった1年を経て、にじさんじ内でも指折りの人気者となった今、椎名はにじさんじにとって初めてとなる共通衣装を着飾ってファンの前に立つことになった。

 そばには長きに渡って支え合ってきた盟友・笹木咲もいる。彼女はどんな想いでこのライブを迎えるのだろうか。

関連記事