“アラサー”にはなぜ「リアルな恋愛ドラマ」が刺さる? 3つの作品から分析

 恋愛ドラマのタイプも様々だが、昨今は身に覚えのあるような「リアルな恋愛ドラマ」が支持されている。そしてその傾向は“アラサー”と呼ばれる30代前後の年齢層に寄りつつあり、作品のテーマになることも多い。今回は3つのドラマを例に挙げ、恋愛ドラマにリアルさが求められる理由を探っていきたい。

 まずは、俳優たちのドラマチックな恋模様が観られる『ドラ恋』シリーズ最新作『恋愛ドラマな恋がしたい ~ Kissing the tears away ~』を紹介する。男女8人の俳優がキスシーンありのドラマを演じ、その裏側で起こる当人たちの恋模様も追いかける本番組。ドラマパートでは“涙のキス”がテーマだけあって、単なるハッピーエンドや感動の涙には終わらず、失恋や片想い、嫉妬などの心情が色濃く滲み、“本当に欲しいもの”がなかなか手に入らずジタバタもがく女性の姿が描かれる。

 本作では、恋愛や男女間の甘くて綺麗な部分のみを切り取ることがなく、剥き出しの感情にフォーカスされる。“思い通りにいかない恋愛”がテーマであることが多いため、どこかに不足を抱えている登場人物や“幸せなはずなのに(傍目からは幸せに見えるのに)何か物足りない”という虚無感、心に巣食う寂しさが現実味を帯び、既視感を感じてしまうのだ。

 さらにこのストーリー展開に、『ドラ恋』特有の俳優同士のリアルな恋愛模様も相まって、演じる彼らも今まさに“思い通りにならない恋愛”の渦中に身を置いているのだと二重の切なさを実感させられる。その感情やままならなさを芝居に乗せてぶつけてより情熱的な演技を見せてくれるからこそ、より説得力が増し、胸に迫るものを感じさせられるのが『ドラ恋』の醍醐味だ。

 綺麗事だけではない恋愛や男女間の機微についてリアルに描かれているのが、“女だって本能のままに求めたい夜がある”をテーマに描かれる『私が獣になった夜』だ。

 第二作目『私が獣になった夜~名前のない関係~』ではサブタイトルにある通り“友達以上恋人未満”や“女性側には秘めた好意があるものの身体だけを求められる関係”など一筋縄ではいかない厄介な“名前のない関係性”の中で渦巻く女性心理が詳らかに描写されている。

 複雑な女心に火が着いたりスイッチが入る瞬間、ふとしたきっかけを見逃さず、とても丁寧にエモーショナルに見せてくれるのが本作の特徴。また、主人公の女性自らの働きかけや意志によって最終的には話が進み、主導権が女性側にあるところも大きく、女性からの共感の声や支持も多いだろう。

 そして、女性自身が、他の誰でもない自分自身のために“自分の物語”を選択し、その中で生きられている。「女性らしく」ではなく「自分らしく」が求められている昨今にフィットした新しいアプローチが織り交ぜられているからこそ、今の自分と重なるのではないだろうか。

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