『ポケモンGO』『ドラクエウォーク』『ピクミン』……行動経済学から見る、位置情報ゲームがヒットする理由

 『Pokémon GO(以下、ポケモンGO)』や『ドラクエウォーク』など、数年前からゲーム世界と現実世界がミックスした所謂“位置情報ゲーム”が人気を博している。

 位置情報ゲームは、ゲーム内でしか触れ合えないキャラクターと、現実世界で触れ合える感覚を堪能できる。くわえて、外出する・散歩するモチベーションにもなるため、健康面から見ても人気の理由なのかもしれない。

 2021年11月上旬には、『Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)』がリリースされ、今後も位置情報ゲームは注目されるだろう。とは言え、実際に位置情報ゲームが支持を集めている理由は明確ではない。行動経済学に精通している明治学院大学経済学部准教授の犬飼佳吾氏に話を聞いた。(望月悠木)

ゲーミフィケーションの成功

――なぜ位置情報ゲームは人気なのですか?

犬飼佳吾氏(以下、犬飼):これまでのゲームといえば、家庭の据え置き型ゲームの延長線上にありました。スマホのアプリゲームもありますが、基本的には据え置きゲームをスマホでプレイできるようにしたものです。一方で、『ポケモンGO』や『ドラクエウォーク』の前身である『Ingress(イングレス)』が2012年にリリースされたことで、一気に風向きが変わりました。

明治学院大学経済学部准教授の犬飼佳吾氏

――どのように変化しましたか?

犬飼:ゲームのプレイという本来の目的を超えて、現実の空間にゲームの要素を取り入れる“ゲーミフィケーション”を見事に実現しました。『Ingress』の登場は、ゲームというコンテンツに新しい可能性を見出したと思います。ポケモンやドラクエは、元々人気ゲームです。その作品内に登場するキャラクターを軸に、現実世界での探検性という臨場感を加えることで、巧みにゲームの質を高めました。これが、『ポケモンGO』や『ドラクエウォーク』が成功した理由ではないでしょうか。

ノスタルジーを刺激する

――街中では『ポケモンGO』や『ドラクエウォーク』を集団でプレイするオフ会的な交流も見られます。真新しさや健康面だけでなく、コミュニケーションツールとして優秀な側面が伺えますね。

犬飼:ネットワーク系のゲームは、ゲームそれ自体の楽しみはもとより、コミュニケーションツールとしての側面も併せ持っています。他者とのつながりを求めるという行為は、ヒトという種がもつ最も基本的な欲求の一つです。位置情報ゲームは、仮想世界と現実世界をうまく行き来できることにより、社会的なつながりを作りやすい土壌を持っているのではないでしょうか。

――位置情報ゲームに熱中する人の、具体的な特徴はありますか?

犬飼:ポケモンやドラクエは、少し前に流行ったゲームのキャラクターが登場するため、ある種のノスタルジーを刺激しています。そのうえで、現実世界と仮想世界をミックスした“拡張現実(AR)”的な世界観を取り入たことで新しい方向の娯楽性を生み出すことに成功しました。そのため、明確な調査は行っていないため明言できませんが、「思い出に浸りたい」という欲に加えて、金銭的にも余裕のある30~40代がハマりやすいのではないでしょうか。また、性格的な特徴で言いますと、収集癖があるような人々の感性に触れるゲームづくりをしており、そういう人も熱中しやすいと思います。

関連記事