社名変更にショート動画の強化……Facebookから「Meta」へ大きく舵を切った“若者獲得作戦”は成功するのか?
10月28日、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、社名を「Meta」に変更すると発表した。SNSの枠を超えて事業を展開していくことを示すためだという。
同社は昨今、個人情報の流出問題や、不適切なコンテンツへの不十分な対応、さらには元社員による内部告発などによって、世間からの強い批判にさらされている。また主力のFacebookやInstagramの成長も鈍化しており、今回の社名変更は、この危機的状況の打開策の1つであるようだ。
問題の軽視に不正疑惑……Facebookを揺るがせた内部告発
現在Facebookが苦境に立たされている大きな要因の1つに、同社の元プロダクトマネージャー、フランシス・ホーゲン氏による内部告発が上げられる。
ホーゲン氏は、同社の幹部らはプラットフォームが一部の若いユーザーに悪影響を与えているのを認識していながら、問題を見過ごしてきたと主張。米ニュース番組に出演した際には、「安全性よりも、自分たちの利益を優先する会社の姿勢に強い警戒心を抱くようになった」と語っている。
また主力サービスであるFacebookやInstagramの若年ユーザーが減少し、特にFacebookでは急速な高齢化が進んでいるにも関わらず、会社が成長を続けていることについても不信感をあらわにした。同社がユーザーの詳細な年齢分布を隠し、全体的な数字のみを示すことで、何年もの間、投資家や広告主に誤った指標を共有していたと主張している。10代・20代の利用者数と利用時間が減少していることを投資家に開示しなかったため、米国の証券法に違反しているというのだ。
またFacebookとInstagramは成長戦略の一環として、ユーザーに複数のアカウントを作成することを推奨していた。2018年にさかのぼる内部調査では、若いユーザーに複数のアカウントを作成させることで、エンゲージメントが大幅に増加しているように見せかけていたという。複数アカウントの作成によってユーザーの減少が覆い隠されただけでなく、場合によっては、一部の広告主に二重(複数)の広告費を請求していた可能性も浮上している。調査によれば、重複するアカウントが削除された場合、大規模な広告キャンペーンでは5〜8%、オーディエンスが減少すると推定されている。
この主張が事実ならば、ユーザーにも広告主にもあまりに不誠実な態度だ。
リールとメタバースの強化で、再び若者の心をつかめるか?
山積する問題を受けてか、ザッカーバーグ氏は第三四半期の電話会議にて、「プラットフォームを30歳未満の人々にとってより魅力的なものにするために、会社を改革する。結果として年配のユーザーを失うことになったとしても、若者を取り戻すことが優先事項だ」と述べた。この改革には、何年もの時間を要するだろうとしている。
Facebookは10代の利用者の減少を受け、2016年に若者向けのサービスを担当する「ティーンズチーム」を立ち上げ、さまざまな対策を講じてきた。しかしその努力も虚しく、2021年のデータでは、10代・20代の利用時間、投稿の頻度、メッセージの送受信、新規登録のすべての項目において、減少傾向にあることが明らかとなった。また若年ユーザーは、ショート動画プラットフォームのTikTokに、FacebookやInstagramの2倍以上の時間を費やしていると推定している。
そんな同社の“若者獲得作戦”の1つが、TikTokに似たショート動画機能、Reels(リール)の強化だ。ザッカーバーグ氏は「リールはすでにInstagramのエンゲージメントの推進力となっており、大きな可能性に満ちている。私たちはリールが成長し続けることに期待していて、今後ストーリーと同じくらい重要な機能となるだろう。また来年にはInstagramとFacebookの動画機能をさらにアップデートし、ユーザー体験の中心的ツールにする予定だ」と述べている。
そしてもう1つの作戦が、新しい社名のとおりメタバース事業への注力だ。同社はすでに、VRヘッドセットのOculus Questや、VR空間の「Facebook Horizon」などをリリースしているほか、メタバース構築に向けてEUで1万人を雇用すると発表しており、本領域における先駆者ポジションを確立しようとしている。