25年前、静かに発売されて埋もれていった「現代を舞台にしたゼルダ」な名作『マーヴェラス ~もうひとつの宝島~』が残したもの

「チームプレイ」を前面に出したゲームデザインと、印象深いストーリー

 それほど、当時の宣伝と、それにともなう知名度の低さが惜しまれるほど、『マーヴェラス』は名作だった。現代の世界観で作られた『ゼルダの伝説』であり、『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』を始めとする任天堂のコマンド選択型アドベンチャーゲームの要素を融合させた、集大成とも言える内容に完成されていたからだ。

 数ある魅力の中で、象徴的なものを3つ挙げるなら、ひとつは「チームプレイ」をテーマにしたゲームデザイン。3人の少年たちを場面に応じて使い分け、時に協力させながら様々な謎を解き明かしていく展開の数々は、まさに本作特有のものだ。少年たちの個性付けも小柄な「ディオン」は足が速い、身長の高い「ジャック」は機械の使い方に長けている、そして体格の大きな「マックス」はパワフルなアクションと力仕事を得意とするなど、分かりやすく設定されていて、どこで活躍させればいいかが一目で付くようになっている。

 設定とは裏腹に遊び方が単純なのも秀逸な部分である。基本的に「リーダーハット」と呼ばれる帽子を被ったキャラクターを動かせば、あとの2人は自動的に付いてきてくれる。個別に動かす時も「リーダーハット」を被らせるキャラクターをRボタンで切り替えるだけな上、それぞれのアクションも専用のボタンが割り当てられているようなことはないので、皆が同じ感覚で動かせる。移動中、散らばってしまった場合でもYボタンの「ホイッスル」を吹くと、瞬時に集合もしてくれる。

 あくまでもいま、3人が同じエリア内にいた時における話で、別々のエリアに散らばって単独行動していると集合はできない。だが、「トランシーバー」のアイテムを用いて交信すれば、「リーダーハット」を切り替えて行動させることも可能だ。こういった操作や仕様周りに分かりやすく、使いやすくするための工夫が徹底されていて、複雑そうな印象からは想像もつかない遊びやすさが確立されている。

 謎解きもそのテーマに沿ったものを多数収録。また、「サーチシステム」なる独自要素も搭載している。Aボタンを押すと指のカーソルが現れて、画面上の細かい所を自由に調べられるようになるというものだ。

 さらにキャラクターたちを近づけて調べると、対象が拡大表示され、右側に「コマンドウィンドウ」が表示。より細かい部分を調べたり、3人が一致団結して重いものを持ち上げたりする協力技「チームワーク」を使ったり、「アイテム」を用いて効果を確かめられるようになるのだ。こうした隈なく調べ尽くす謎解きという謎解きも本作特有のもので、ゼルダとは似て非なる魅力と面白さが演出されている。

 コマンドウィンドウの仕組みも『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』に代表されるコマンド選択型アドベンチャーゲームのそれであり、まさに双方がコラボレーションしたようなユニークなゲームデザインにまとめられているのだ。

 コマンド選択型アドベンチャーゲームの色が濃く出ているのは謎解きだけではない。ふたつ目の魅力たるストーリーとその構成もそのひとつだ。本作は章単位でストーリーが進行していく仕組みで、同時に冒険の舞台も移り変わるようになっている。つまるところ、広大な土地を探索する要素はない。また、それぞれの章で訪れた舞台も、やること全てが終わって次の章へ移ると二度と帰って来れなくなってしまう。終盤になると、いままで行った場所へ自由に行き来できるように、みたいなこともなく、本当に一度きりなのだ。

 それもあって章ごとの密度は濃く、とりわけストーリー、登場するキャラクターは一度会ったら忘れられなくなるほど強烈な印象を残すものになっている。さながら「一期一会」を強く出した作り込みが図られているのである。

 大筋も紛うことなき冒険活劇で、様々な土地で起きる事件に巻き込まれながら、担任の先生を助け出すために少年たちが力を合わせて立ち向かう様が心を打つ。さらに章ごとにストーリーの作風、題材が異なるのも面白い。

 そして、最後のみっつ目の魅力が、どこか『ゼルダ』にありそうなネタがあちこちに散りばめられていること。ただ、謎解きは露骨にオマージュしたものは少なく、似ているようで全く違うネタが多い。逆にアイテムにはそれっぽいものが幾つかあり、例えばディオン専用の「ダッシュブーツ」は、ゼルダで言うところの「ペガサスの靴」そのまんまなものになっている。これ以外にも「なんだかそれっぽい……」と思わせる要素があちこちに仕込まれているので、ファンならじっくり観察してみると面白いかもしれない。

 ほかにも、有料式ながら、謎解きに詰まった際に活躍してくれる小鳥の「ピラック」による優れたヒント機能、特定の章に限定的に用意されたアイディア満載のボス戦、バリエーションに富んだ音楽と、素敵な所は語り尽くせないほどある。

 それだけに当時、無名のまま終わったのが惜しい。もっと色んな人に遊ばれてよいゲームなのにと、プレイした人間ならば思ってしまう作品なのである。

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