キッチンのDX化は“ロボットアーム”の時代に? 上海には初の「AIコミュニティ食堂」も開店
無人コーヒースタンドやミルクティースタンド、アイスクリームスタンドなど、ロボットアームがすでに日常にとけこみ、飲食店でも急速にDX化が進む上海。
2021年7月、新たに「虹橋AI社区食堂(以下AI社区食堂)」がオープンした。「社区」とは、中国語で、コミュニティ、地域を指す。この名の通り、地域のコミュニティ食堂のことで、地域に密着し、安全、安心の食品をコストパフォーマンス良く提供する食堂というコンセプトだ。ここまでだと、いたって普通の食堂なのだが、他と大きく違うところが「AI」を活用したサービスを提供する「スマート食堂」であることだ。
この「スマート食堂」で最も注目されているのが、キッチン(厨房)で、ロボットアームが調理をする点だ。「AI社区食堂」の紹介によると、このロボットアームは、一度に100種類以上の料理を調理することができるという。オープン当初は、このロボットアームの調理光景を見ようと、周辺以外から多くの“体験客”が訪れ、長蛇の列ができるフィーバーぶりだった。
人気のロボットアームがどのような動きをするのか。実際に店舗を覗きに行ってみる。平日12時30分頃に訪れてみると、食堂の外まで列ができていたが、さほど待たずに中へと入れた。
食堂内には、一般のメニューを調理するロボットアームと麺作りをするロボットアームがあるが、両方とも稼働していなかった。聞いてみると現在、ロボットアームは、営業時間前の仕込み時間帯のみ稼働しているとのこと。待機中の状態で、ロボットアームが調理している“姿”を見ることができないが、将来的には、営業時間内も稼働するようになると言う。
今のところは、店内に流れるPR動画でその作業過程を“見学”⁉︎することができる。 例えば、麺づくりのロボットアームは、利用客が、どんぶりを指定の位置におくと、ロボットアームが自動的に動き出し、麺をゆで、湯切りをするなどの動作を行う。完成まで1〜2分。トッピング具材は別途用意されている。
ところで、これらロボットアームの存在を除けば、ごく普通の食堂という感じだが、イメージは日本での学食や社食と言うと分かりやすい。昼食時では、調理された料理がフードウォーマーに入って並ぶ。好きな料理を選び、最後にレジで支払いをする。料理はどれも中華の定番メニュー。
前述したように、この「AI社区食堂」における注目は、ロボットアームによるスマート調理ではあるが、実際それ以上に驚くのが、支払い時のスマートレジだ。トレイを指定された位置に置くだけで、AI認識で、料理の識別や価値計算され価格が表示される。その時間、まさに秒殺!驚くほどのスピードと正確さだ。
もちろん、支払いの基本はモバイル決済によるキャッシュレスが主流だが、顔認証やデジタル人民元の利用にも対応している。ただ、利用客の年齢層が高いため、モバイル決済だけでもすでにハードルが高いようだ。そのため、年配者に便利なように、シニアカードなどによる支払いにも対応しているし、レジ周りにスタッフがいて、これらの「スマート決済」に慣れない年配者の利用をサポートしている。それでも、慣れてくれば無人化が可能なほど、シンプルな操作と簡単な流れで支払いができる。
ちなみに、食堂は、支払いが終わると、空いている席を探すというセルフサービス。この「AI社区食堂」の営業時間は、朝(7:00-9:00)、昼(11:00-13:00)、夜(17:00-19:00)とそれぞれ2時間。料理の価格は、一皿3.5元(約60円)〜。利用客からは、「種類が豊富なので、選択肢も多く、安価なうえ、味も悪くない」と好評価を得ている。