Netflix、ゲーム事業参入は前途多難? GAFAの“苦戦”から考える
動画サブスクサービスの最大手Netflixは、2021年第2四半期の決算報告を行った。その報告において、新規事業にチャレンジすることが明言された。このチャレンジを報じた海外メディアは、Netflixの行方に立ちはだかる壁は大きいと見ている。
ゲームを出すにはちょうど良い時期
Netflixが20日に発表した2021年第2四半期の決算報告レターによると、同四半期の売上高は約73億ドル(約8,000億円)で成長率は19.4%であった。売上高は前年同時期より増えているものも、成長率は前年同時期の24.9%から鈍化している。この決算から同社は堅調に成長しているものも、コロナ禍によって新規加入者が激増した「コロナ特需」は明らかに終焉したと言える。
決算報告レターでは新規事業に言及している箇所があり、新たにゲーム事業を手がけることが宣言されている。具体的には以下の通り。
「また、『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』などのインタラクティブなコンテンツや『ストレンジャー・シングス』のゲームなど、ゲームへの展開も初期段階で進めています。ゲームは、オリジナル映画、アニメーション、台本のないテレビ番組への進出と同様に、当社にとって新たなコンテンツカテゴリーのひとつと考えています。ゲームは、映画やシリーズ作品と同様に、追加料金なしで会員の皆様のNetflixサービスに含まれます。当初は、主にモバイル端末向けのゲームを中心に展開していきます。(中略)オリジナル番組の提供を開始して約10年が経過した今、会員の皆様がゲームにどのような価値を見出しているのかを知るには、ちょうど良い時期だと考えています」
Netflixのゲーム事業進出を報じた大手メディアCNBCの21日付の記事は、同社のゲーム事業には同社が制作してきたオリジナル動画シリーズやおすすめアルゴリズムといった知的財産が大いに活用されるだろう、と述べている。
GAFAも苦戦するゲーム市場進出
実のところ、Netflixのゲーム事業進出には布石があった。先週の水曜日、同社がFacebookやElectronic Arts(EA)、そしてZyngaで幹部を歴任してきたMike Verdu氏をゲーム開発担当バイスプレジデントとして迎えたことが報じられていたのだ。この報道をうけてBloombergは19日、同社のゲーム事業進出に関するコラム記事を公開した。
Bloombergの記事は、今や巨大市場になったゲーム市場にNetflixが進出することを大いに評価している。しかし、同時に異業種企業が同市場に参入することの難しさも指摘している。例えば、Googleが始めたクラウドゲームサービスStadiaは苦戦しており、Amazonが昨年6月にリリースしたゲーム『Crucible』はわずか数週間で撤退を余儀なくされた。AppleのApple Arcadeは、ゲーム市場を再編するほどのインパクトを残せていない。このように資本力と技術力のあるGAFAであっても、ゲーム市場で成功するのは容易ではないのだ。
Mike Verdu氏の人選にも疑問の余地がある。Verdu氏がZyngaに在職していた最後の期間には、同社の株価が下落している。
まとめると、Netflixがゲーム市場に参入しても、そう簡単には既存市場の秩序が崩れることはないだろう、というのがBloombergのコラム記事の見立てである。