令和に黒電話とスマホを併用? 大正・昭和時代を愛すモダンガール・淺井カヨが語る「スマートフォンとの付き合い方」

令和に黒電話とスマホを併用する理由

  スマートフォンを肌身離さず持ち歩き、暇さえあればSNSや動画配信サービスを覗く生活が当たり前となった昨今。そんな生活に欠かせない存在であるスマートフォンと、「黒電話」を併用している人物がいる。「日本モダンガール協會」代表の淺井カヨだ。

 淺井は大正から昭和初期頃の文化をこよなく愛し、その研究を重ねるだけでなく、自身の生活にも忠実に取り入れている。2016年には当時の様式を用いた「小平新文化住宅」を構え、夫である音楽史研究家・郡修彦とともに暮らし始めた。自宅の玄関先にある黒電話は今でも使用しているなど、当時のものを生かしながら生活を送っている。

 そんな古き良き生活を続ける淺井が、なぜ最先端のスマートフォンを手にしたのだろうか。現代を生きる「モダンガール」がスマートフォンとどう向き合っているのか話を聞いた。

「古い」「新しい」でものの価値を判断していない

ーー大正から昭和初期頃の文化を取り入れ始めたきっかけについてお伺いできますか。

淺井カヨ(以下、淺井):実家が旧家だったため、納屋があったり、農具があったりと古いものに囲まれて育ちました。その影響で幼少期から古いものに興味はあったのです。また、小学生の時に愛知県にある「明治村」や岐阜県の「日本大正村」に行ったことで明治時代や大正時代の建物に興味を持ちました。

小平新文化住宅

 自分自身に取り入れ始めたのは2004年の時。大正時代風の格好で参加するお花見会があって、そこに初めて参加したときに自分なりのモダンガール風の格好をしました。そうしたらだんだん格好だけではなくて、生活にも当時の暮らしを取り入れたくなって。古道具屋でいろいろと購入して試したりしていました。その後、家そのものを昭和初期の形にしたいという思いも芽生え、結婚したことをきっかけに2016年に家を建てました。

ーー当時使われていたものを生活に取り入れる基準などあるのでしょうか。

淺井:必ずしも「当時のもの」である必要はないと思っています。今作られたものでも、自分が気に入った、自分に合うものであれば購入します。例えば「大正バスケット」は当時の工法により、現代の職人さんが作ったものです。わたしは「新しい、古い」でものの価値を決めているわけではなく、使われている素材や色、形そのものに惹かれているので、今作られたものも選びます。また、「アラジンのストーブ」も1930年代に誕生して、今も作られていることに敬意を持って、今作られたものを使っていますね。

 一方で「木の脚立」などは、自分の好みに合う形や色のものが見つかっていません。それで、当時の物が一番自分にとって合うため、使用しています。そういったものは当時のものを探すしかないです。また、ミシンや柱時計、黒電話なども当時のものを使っています。これらは当時、ある程度量産されていたので、今でも直せるものが多いのです。希少性はありますが、修理する技術が現在でもあるので使っています。本当に貴重なものは博物館などにもお貸しすることがあるので使わずに保管していますね。

ーー「もの」にこだわりを持って、大切に使われていることが伝わっていきます。特にお気に入りのものはありますか?

淺井:「柱時計」はわたしの実家にあったもので、壊れていたのですが修理して使っています。小さい頃から見ていたので、思い出深いものです。

ーー当時のものを探すのは大変そうですが、どのように探されているのでしょう。

淺井:確かに大変ですね。高価であったり、見つからないこともあるので。ただ、欲しいものがあった際に、真っ先に骨董品屋に出向くのではなくまずは最新の製品を見に行っています。椅子が欲しければ椅子の専門店、冷蔵庫が欲しければ家電量販店など、今あるもののなかで最高のものを見に行くのです。

ーー意外です。なぜ古いものを好きと分かりながら最新のものから見るのでしょう。

今でも使っている黒電話

淺井:好きなものだけの中から選ぶよりも、自分にとって苦手だと考えていたものも見た上で自分にとって一番良いと思うものを選びたい方です。自分の生きている場所は好きなものに囲まれていたいですし、見ていて心地の良いもの、様々なものを見て比較した上で自分に一番合っているものは何かを探したいと思いました。

 最先端のものを見に行って、素地や質感、形を見て、やっぱり自分の家や生活には合わないと感じたのであれば、古いもの、もしくは伝統工芸品など形式を受け継いでいるものを探しに行く。その工程を様々なものに対して応用していくと、多くは自分が好んでいる時代のもの、もしくは昔のものを作り続けている今のものになっていくのですね。

スマートフォンの購入は「二段階認証」がきっかけ

ーー古き良き生活を楽しみながら2009年からはその様子をTwitterで発信されていますよね。Twitterはパソコンなどで利用されているんですか?

淺井:そうです。父がパーソナルコンピューターを自作する趣味があり、それを使っていた関係でかなり前から。パーソナルコンピューターは情報発信だけでなく、昔のことを調べることにも活用していますね。

ーーパーソナルコンピューターがあればインターネットもSNSもできますが、なぜスマートフォンを購入されたのでしょうか。

淺井:昨年の3月に、ベトナムへ旅行に行ったんです。その際にパーソナルコンピューターでTwitterにログインしようとしたら二段階認証が必要になって。電話番号がないとTwitterにアクセスできなくなってしまった。黒電話では対応できないですし、Twitterは10年以上利用していてフォローしてくださる方もいらっしゃるので辞めたくないなと思い、スマートフォンを購入することにしました。

ーー電話番号が必要なのであればガラケーの選択肢はなかったのですか?

淺井:会社に勤めていた際に渡された携帯電話を使用していたことが一度だけありますが、ものすごくストレスでした。当時は電話が基本だったので、常に誰かからかかってくるかもしれないというものを持ち歩くのがあまり好きではなくて。スマートフォンであれば基本的なやりとりはテキストですし、好きなタイミングで返信できるので今なら持てるかもと思い購入しました。

ーーちなみに、スマートフォンはどこで購入されたのですか?

淺井:新宿のアップルストアです。今は機種変更で購入される方が多いみたいで、新規で購入するわたしに店員さんも驚いていました。3時間くらいかかりましたね。旦那はずっとPHSを使っていて、サービスが終了するタイミングまで使ってからスマートフォンを購入していたのですが彼の場合はスムーズでした。

夫である音楽史研究家・郡修彦(左)、淺井カヨ(右)

ーースマートフォンではどんなアプリやサービスを使っているのでしょうか。

淺井:メッセージアプリは「フォートトーク」を使っています。安全性が高いものを使いたいので。TwitterのほかにFacebookやInstagramを使っています。

 Twitterは自分で撮影したもの、Instagramは写真家さんなど他の方に撮っていただいたものを発信しています。メインはTwitterを使っていて、最近Instagramを始めたのですが、わたしの名前のハッシュタグがありました。

ーーご自身で撮影されているTwitterのお写真はスマートフォン のカメラで撮影されているのですか?

淺井:最近はそうですね。以前はフィルムカメラとデジタルカメラで撮影をしていたのですが、スマートフォンのカメラでも高画質で撮れますし、簡単に画像の加工などもできますので。

ーーカメラは大正・昭和のものをお使いなのですか?

淺井:1930年代のフィルムカメラから現代のデジタルカメラまで、被写体によって使い分けています。デジタルカメラを使う際には、アダプターを使ってレンズを1930年代のものに替えています。ドイツの「ゾナー」のレンズを使っているのですが、当時の雰囲気や独特の風合いを出すことができます。



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる