SteamのポータブルゲーミングPC「Steam Deck」は、ポータブルゲーム機の“ルネサンス”を到来させるか?

 ゲーム配信プラットフォームを運営するSteamが、新たなハードウェア製品を発表した。この製品は、2021年になって再発明されるようになったあるゲーム文化の一翼を担うことが期待されている。

Steamをいつでもどこでも

 Steamは16日、ポータブルゲーミングPC「Steam Deck」を発表した(トップ画像参照)。この製品は、PCでSteam配信ゲームをプレイする体験をそのまま携帯できることを目指して開発された。それゆえ、携帯できるからと言って、スマホゲームがプレイできるわけではない。

 Steam Deckのデザインは、デバイス中央部にディスプレイがあり、その周辺に各種ボタンが配置されている。ディスプレイの解像度は1280 x 800、リフレッシュレートは60Hz、そしてタッチ操作に対応している。また、BluetoothとWi-Fiで接続でき、2~8時間の連続プレイが可能だ。

 Steam Deckを起動すると、Steamライブラリが表示される(下の画像参照)。ライブラリのデザインははPC版を踏襲しており、既存のSteamユーザならばすぐに使えるだろう。PCでSteamをプレイした後に、その続きをSteam Deckでプレイする(もしくはその逆)クラウドサーブにも対応している。

 Steam Deckはストレージサイズに応じて3つの価格帯が容易されている。具体的には、64GBで399ドル(約44,000円)、256GBで529ドル(約58,000円)、512GBで649ドル(約71,000円)だ。初期発売地域はアメリカ、カナダ、欧州連合、イギリスであり、2021年12月から出荷される。日本を含めたその他の地域は、2022年中に出荷予定である。

痛みを伴った価格設定

 ゲームメディアIGNは16日、Steamの共同設立者であるゲイブ・ニューウェル氏にSteam Deckについて尋ねたインタビュー記事を公開した。ニューウェル氏は、同製品の価格設定に関して「苦痛に満ちたもの」だったと表現している。また、価格設定は長期的な戦略を念頭において行われ、そうした戦略の目標とは新たな「製品カテゴリーの確立」であるとも語った。

 以上のニューウェル氏の発言より、Steam Deckの販売から生じる利益はそれほど多くなく、優先されるのは同製品の普及であることが推測される。

 Steam Deckの発表に反応したゲーム業界の著名人には、Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOがいる。同CEOは、Steam DeckがWindows や(Epic Games Storeのような)サードパーティのゲームストアをインストールできることを激賞したツイートをしている(下のツイート参照)。なお、Windowsやサードパーティコンテンツがインストール可能なことについては、Steam Deckの開発者サイトのQ&Aで明記されている。

 スウィーニーCEOがSteam Deckを激賞するのは、現在Epic GamesとAppleのあいだで係争中の「フォートナイトの乱」が関係している。Epicはサードパーティのゲームメーカーに課されるプラットフォーム使用料の徴収方法が独占禁止法に違反しているとして、Appleを訴えている。この訴訟のねらいは各ゲームメーカーが自由にゲーム課金の支払い方法を定められるオープンなモバイルゲームプラットフォームの実現にあるのだが、Steam DeckはこうしたEpicの理想を実現するポテンシャルがあるのだ。

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