ゲーム機における“マイクロ化”のトレンドはなぜ起こった? 単なるノスタルジーで終わらない理由を考察

“マイクロゲーム機”なぜ流行?

 2020年10月6日、セガから『ゲームギアミクロ』が発売された。これは1990年発売の『ゲームギア』を縮小したサイズで復刻したもので、昨今の”旧世代ゲーム機のマイクロ化”のトレンドにも乗ったものであると想定できる。何故ゲーム機のマイクロ化がここまでプッシュされているのだろうか? 今回はその理由について考察していく、

単なるノスタルジーに留まらない旧世代ゲームの魅力

 旧制第ゲーム機のマイクロ化の発端といえるのが、『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』だ。その後、『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』『メガドライブミニ』『プレイステーションクラシック』と次々と同様のコンセプトのハードがリリースされている。ニンテンドークラシックシリーズは発売当初、入手が困難なほどに売上を伸ばし、アメリカでは現行機である『PS4』や『Nintendo Switch』の販売台数を超えたという(2018年6月中。参考:https://kakakumag.com/game/?id=12560)。なぜ、今になって旧世代機がこれほど評価されているのだろうか?

 旧世代ゲーム機を復刻するのであれば、そのメインターゲットは当然ながら当時ゲームを遊んでいた30代以上の人々だろう。現在スマートフォンなどでプレイできる旧作ゲームソフトは数多くある。しかし、当時の手触りにできるだけ近い形で遊びたい、というユーザーは少なくないはずだ。このように”郷愁”に訴えかけたことも、マイクロゲーム機が成功を収めた一因であることはいうまでもない。

 また、ゲーム機を一つ購入するだけでいくつもの名作タイトルを遊べることも魅力といえるだろう。近年リメイクされている『聖剣伝説2』や『ファイナルファンタジーⅦ インターナショナル』のオリジナル版のほか、現在もシリーズが続いている『ゼルダの伝説』や『ファイアーエムブレム』などを遊べるラインナップも嬉しい。しかし、これらの理由だけではここまでのヒットを説明しきれないのも事実だ。

高精細になりすぎたゲームのトレンドに対する反動か

 マイクロゲーム機のトレンドの裏には、現行コンシューマ機のゲームに対する反動があるのではないだろうか。これは、高精細になったゲームに疲れてしまう層が一定数いるためだ。

 ゲームは日々進化を続けており、シームレスな世界やフォトリアルなグラフィック、全編フルボイスで進行するイベントシーン、映画並みの演出など旧来のゲームハードでは困難だったことも実現可能となっている。これらの要素は我々を驚かせる一方で、プレイヤー側の”想像の余地”が減ったことを嘆く声も少なくない。テキストだけで進行する会話には、声がついていないからこその味があったし、派手なムービーがないことにより、却って小説の行間を読むようなゲームの楽しみ方があった。また、広大な世界を冒険できることが当たり前になると、『オープンワールド疲れ』といった言葉も生まれてしまった。

 このように豪華な演出や広大なフィールドに疲れてしまった人々が、旧世代機のコンパクトにまとまった世界に流れていくことは想像しやすい。日々進化する最新鋭のゲームトレンドに対する反動こそが、マイクロゲーム機のトレンドを生み出しているのではないだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる