バンド&えなこ&BlackAIも登場 キズナアイがバースデーライブで見せた“VTuberの先駆者”ならではの魅力

キズナアイ“VTuberの先駆者”としての魅力

 今年の6月30日に5回目の誕生日を迎えたKizuna AI。彼女のバースデーライブ『Kizuna AI 5th Birthday Live “A.I.Party 2021”』が、東京・Zepp Hanedaで開催された。

 この『A.I.Party』は、過去にも毎年6月30日に開催されてきたファンにはお馴染みのバースデーイベントの最新版。もともとは有観客の会場を舞台に、VTuberのゲスト参加やミニコーナーなど音楽以外の要素も加えたファンミーティング企画としてスタートし、コロナ禍で迎えた昨年は、前日深夜からはじまるバースデーカウントダウン生配信に変更。そして今年は、自身にとって約2年ぶりとなるリアル会場での音楽ライブとして開催された。

 そもそも今年のKizuna AIは『Kizuna AI 2nd Live “hello, world 2020”』や『Kizuna AI Virtual US Tour』など、バーチャル空間に二次元/三次元のゲストを招くことで両者の境界線をなくすようなライブを開催していたが、久しぶりの有観客ライブとなるこの日はいわばその逆。今度は現実の会場にKizuna AIが溶け込んで次元の壁を越えていくライブとなった。

 オープニングSEとして「Hello, Morning (DJ TORA A I.Party 2021 EDIT)」が流れ、スクリーンに公演ロゴが映されると、まずは「new world (Prod.Yunomi)」でライブがスタート。以前の公演とは異なり、この日は過去のライブでもDJを担当してきたDÉ DÉ MOUSE、Awesome City Clubのモリシー、元Sawagiの雲丹亀卓人、LITEの山本晃紀による豪華なバックバンドが生演奏で公演をサポート。ここに近年のライブでお馴染みの女性ダンサーたちも加わり、Kizuna AI自身も早速ホイッスルで会場を盛り上げるなど、リアル会場の様々なサポートメンバーたちと手を取るような雰囲気でライブを進めていく。

 中でも序盤に印象的だったのはDÉ DÉ MOUSEがこの日のために特別なバンドアレンジをほどこした「meet you (Prod.DÉ DÉ MOUSE)」だ。この曲ではダンスミュージック色全開の原曲とは異なる、カッティングギターを活かしたファンキーな人力ダンスグルーブを披露。間奏では一気にエレクトロ色が強くなるなど、バンド/クラブサウンドを行き来して会場を盛り上げる。続いてVTuber界でも「歌ってみた」が流行している「KING」のカバーでは、細かいハイハットを生かしたドラムとギターリフが際立つバンドサウンドに乗せて情感たっぷりの歌声を披露。この楽曲が活きるのも生バンドを従えた今回ならではだ。

 この日は照明などの演出も3次元のバンドの演出などに近いシンプルなもので、生演奏を生かした現実空間ならではの“雰囲気”自体が舞台演出として機能しているように思える。

 とはいえ、「世界中のみんなと繋がりたい」というKizuna AIの思いを反映した、彼女の真骨頂ともいえるダンスミュージック仕様のパートも健在。中盤にバックバンドがステージを去り、Kizuna AIとダンサーによるパートがはじまると、「miracle step (Prod.Nor)」では歌詞にあわせて観客とクラップで盛り上がり、「over the reality (Prod.Avec Avec)」ではMoe ShopによるリミックスVer.で会場をさらにダンスフロアへと変えていく。続いてMoe Shopがプロデュースを担当し、今年のUSツアーでお披露目された「RADIO LOVE HIGHWAY」がはじまると、完全なるソロパフォーマンスで会場を盛り上げていった。

 こうした中盤で特に盛り上がったのは、人気コスプレイヤーのえなこを迎えた「Touch Me」だろう。この曲では突如ゲーミング衣装に着替えると、同じ衣装を着たえなこがステージに登場。揃いの衣装による次元を超えたコラボレーションが実現し、お互いにボーカルをリレーしながら会場を盛り上げる。途中4人のダンサーも加えた6人が横一列になって踊る様子は、現実世界にKizuna AIが溶け込むことを目指した今回のライブらしい風景だった。

 以降はモリシーのギターを生かしたアコースティックVer.での「future base (Prod.Yunomi)」を経て、「Sky High (Prod. Yunomi)」では歌い出しでパフォーマンスをしながら新衣装に早着替え。続く「melty world (Prod.TeddyLoid)」では、「声出せなくても、コメント参加でも、もっともっと熱量伝えてー!!」と観客を煽り、間奏のダンスパートでは会場が一気にEDMのフェスのような雰囲気に。「やっと会えたね。オンライン参加のみんなも、(中略)次は絶対現地で会おうね。AI Party最高!!」と観客に伝えてライブは終盤に差し掛かる。

 ここで披露されたのが、6月末に配信限定でリリースされたばかりの新曲「First Light」だ。これまでの歩みを振り返りながら、未来への思いを歌う雰囲気の楽曲は、5周年を迎えたKizuna AIの過去と未来とを繋ぐような楽曲で、これまで出会った多くの人との繋がりの力を信じて、さらに先へと踏み出していく彼女の姿が想像できるものになっている。

 続く「AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)」では、8人のダンサーが登場して華やかに会場を盛り上げると、その後バンドがステージに戻ってきてKizuna AIの髪色が金髪に変わり、「mirai (Prod.☆Taku Takahashi)」で本編が終了。生バンドならではの人力ドラムンベース的な要素などを含む、これまでとは一味違ったパフォーマンスで未来への思いを歌い締めくくった。

 その後は、以前から普段の動画/配信や歌ってみたなどに登場してきたKizuna AIの別人格、BlackAIに関するプロジェクトの始動などが告知されると、アンコールでBlackAIがライブに初登場して「うっせぇわ」をカバー。Kizuna AIの歌声とは180°違う、クールでささくれだったボーカルは新鮮で、ライブだからこそ別人格ならではのギャップがより際立って聞こえる。彼女がライブに加わることで、選曲の幅もますます広がりそうだ。

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