Game Music Works of Revo――作曲家デビューから『ブレイブリーデフォルトII』までの軌跡

『ブレイブリーデフォルトII』

 『ブレイブリーデフォルトII』の楽曲制作においてRevoは、〈前作『ブレイブリーデフォルト』と全く同じキャライメージになる曲は作らない〉という鉄の掟を自らに課した。メインテーマ「再び希望へ向う序曲」は、前作の「希望へ向う序曲」のモチーフを織り込みつつ、さらに新たなテーマを提示している。また、前作の「戦いの鐘」と同様にブラスサウンドがリードする通常戦闘曲「再び鳴り響く戦いの鐘」は、Revoが長年アイデアを温めていたという自信作だ。イントロの前にさらに瞬間的なイントロが入るという形式は、往年の『ファイナルファンタジー』シリーズの戦闘曲のオマージュである。さらにメインメロディは『ファイナルファンタジーV』の通常戦闘曲(バトル1)を彷彿とさせるものがあり、二重にニヤリとさせられてしまう。そのほか、スパニッシュなエッセンスを濃厚に押し出した「航海の業」「暴風をも従える術とは航海の業」、桜庭統もかくやな変拍子キーボード・プログレッシブ・ロックを聴かせる「生存本能は牙を剥く」など、新たに盛り込まれたテイストにも注目したい。そして本作におけるもっとも大きな音楽的トピックが、フィールド曲やダンジョン曲に複数のアレンジが用意されているところだろう(天候や風景の変化に合わせてアレンジを変えたダンジョン曲は、CD4枚組の初回限定版に収録されている)。インタラクティブ・ミュージックにもう一歩踏み込んでいるのだ。Revoはインタビューでこう語る。

“Revo 『ブレイブリーデフォルト』のときは、森や洞窟、建物の中など、最低限の曲を用意していました。でも本来であれば、普通の森と雪が積もっている森は、同じ音楽じゃないはずです。真摯に情景を描写するなら。ゲーム音楽は、いろいろな制約の中で作られてきた歴史があり、工夫の中で生まれた名曲も多いです。でも、容量があるんだったら別曲とは言わないまでも、別アレンジの曲を当てられたらいいなと僕は考えていて。それが実現したい胸熱感のひとつでした。”

▼『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く(ファミ通.com|2021年2月19日 https://www.famitsu.com/news/202102/19214618.html

“Revo:そもそも国がいくつかあって、文化圏も全く異なるわけですよね。文化が異なるなら、同じ音楽にはならないだろうというのが基本的にありました。街だとそれがすごく分かりやすく出るわけですが、フィールドだって、砂漠だったり草原だったり、景色が違いますよね。もともと、この『ブレイブリーデフォルトII』自体が、それぞれの国の違いをわかりやすくデザインしたゲームだったので、そこまでわかりやすく変えているんだったら、音楽もそうすべきだろうと思いました。前回はそこまで曲数が入らなかったので、地域差ではなく、昼/夜の時間軸に楽曲をリンクさせていたのですが。”

▼【インタビュー】Revo、『ブレイブリーデフォルトII』全楽曲担当で明かす“世界の広げ方”(BARKS|2021年3月5日) https://www.barks.jp/news/?id=1000197927

 音楽で作品世界をどこまでも豊かに広げてゆくRevoが、次に目指す地平はどのようなものになるのだろうか。彼のチャレンジはこれからも続いていくことだろう。

※記事初出時、公式発表にない不確実な情報が掲載されておりました。訂正してお詫び申し上げます。

■糸田 屯(いとだ・とん)
ライター/ゲーム音楽ディガー。執筆参加『ゲーム音楽ディスクガイド Diggin' In The Discs』『ゲーム音楽ディスクガイド2 Diggin' Beyond The Discs』(ele-king books)、『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)。「ミステリマガジン」(早川書房)にてコラム「ミステリ・ディスク道を往く」連載中。

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