にじさんじは、バラバラな個性による“青春の集合体”だーー『にじFes 2021』に感じたこと
2月26~28日の3日間、『にじさんじ Anniversary Festival 2021』(以下『にじFes 2021』)が開催された。
このイベントは、VTuber事務所にじさんじの3周年を記念したもの。コロナ禍の影響を受けてオンライン中心に移行し、一部ライブ企画は東京ビッグサイト青海展示棟Bホールのリアル会場でも開催された。期間中は所属人数が100人を超えるこの事務所ならではの多様性を伝えるように、「レバガチャダイパンステージ」、「ド葛本社ステージ」「VACHSSステージ」「月ノ美兎&樋口楓&Rain Dropsステージ」などを筆頭に、歌やゲーム、ミニ講座まで様々な企画が用意され、イベントで3Dモデルが初披露となるライバーも。全体を通して、年に一度のにじさんじの学園祭のような雰囲気になっていた。今回はリアル会場で開催された「にじさんじ Anniversary Festival 2021 前夜祭 feat.FLOW」と「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow! 東京リベンジ公演」の様子を振り返ってみたい。
会場に向かうと、まず目を引くのは、ずらっと並んだファンからのフラワースタンドやグッズなどの展示スペース。中でも印象的だったのが、壁一面にずらっと並ぶライバー直筆の3周年書初め。ほとんど大喜利と化した回答のひとつひとつには各ライバーの個性がしっかりと出ていて、『にじFes 2021』は「フェス」と言っても音楽フェスではなく、むしろジャンル不問で色々な「楽しい」の形を詰め込んだお祭りだということが伝わってくるようだ。
26日に前夜祭として開催された「にじさんじ Anniversary Festival 2021 前夜祭 feat.FLOW」は、直前に公開された3周年記念曲のひとつ「虹色のPaddle」を提供したFLOWとの対バン形式。バーチャル×リアルの対バンは、(対バンをどう解釈するかが難しいため)前例がなくはないものの、今回のようにリアル会場で本格的に行なわれるのは世界初のこと。にじさんじからは樋口楓、剣持刀也、緑仙、三枝明那、加賀美ハヤト、星川サラの6人が出演し、FLOWとともにバーチャル×リアルが文字通り競演するライブがスタートした。
この日は全体の構成もまさに対バン形式。まずは開始早々、FLOWとにじさんじメンバー6人が全員登場し、「色とりどりの個性が集まっているにじさんじならではの選曲」として、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のOPテーマとして知られるFLOWの「COLORS」を披露。その後、加賀美ハヤトが「FLOWさんとの対バンを意識して」とPENGUIN RESEARCHの「決闘」を歌うと、にじさんじライバーのソロパフォーマンスコーナーへ。それぞれに楽曲の世界観に対応した映像なども使って盛り上げていく。その後、樋口楓&緑仙&星川サラが「KING」を、加賀美ハヤト、三枝明那、剣持刀也がNeruの「イドラのサーカス」を披露した。
また、この日印象的だったのは、時おり使われていたステージ奥のカメラを使用したAR演出だ。この技術はWANIMAやLDH系、EGOISTなどの公演の他、Kizuna AIの1stライブやにじさんじの過去のライブ、そして今回の『にじFes 2021』にもかかわっているクリエイティブスタジオwamhouseが手掛けていて、FLOWの背後にAR技術でにじさんじライバーを登場させることで、両者が同じステージに立つことを可能にしていた。また、ステージ横に設置された左右のスクリーン部分までステージが延長されており、ライバーがメインステージとこの延長ステージを自由に行き来しながら会場を盛り上げる様子も印象的だった。
その後はじまったFLOWのライブパートでは、「さぁここからは、FLOWと遊んでください!」という声をきっかけに、「Re:member」や「新世界」を披露。自身も「観客を目の前にしたライブは1年振り」とコロナ禍でのこれまでを振り返りながら、流石のステージングでぐんぐん観客を引き込んでいく。本編最後は、そこにふたたびにじさんじメンバーが登場し、全員でFLOWの「GO!!!」を披露したあと、にじさんじライバー6人だけがステージに残り、FLOWが提供した新曲「虹色のPuddle」を歌ってステージを終えた。
にじさんじの3周年に際しては、周年を記念したアニバーサリーソングがいくつか用意されているが、「虹色のPuddle」は、FLOWらしい真っすぐなメロディと歌詞が印象的な楽曲。アンコールでは、ふたたびにじさんじライバーとFLOWがステージ上に揃い、それぞれのメンバーが混ざり合ってボーカルリレーをしながら、同曲をふたたび披露。ステージ前方に位置するFLOWと、ステージ奥のにじさんじライバーがお互いに顔を見合わせたりもしながら、リアルとバーチャルの境目を溶かすような雰囲気でライブを終えた。