表現の“場”はリアルからオンラインへ DJカルチャーの構造変化は何をもたらすのか
ナイトクラブや音楽フェスの会場で観客を盛り上げるDJ。
“アガる”音楽から“チルアウト”できる音楽まで、フロアの熱気に応じて様々なジャンルのダンスミュージックをかけるのがDJの仕事だ。
ひと昔前までは、ターンテーブルの上にアナログ・レコードを乗せて行うDJプレイが主流だったものが、時代の変遷とともにDJ機材が進化。
今ではPCやUSBに曲を入れておくだけでDJプレイが可能になったこともあり、DJデビューするための敷居が下がっている。
さらには2010年頃からのEDM(Electronic Dance Music)の台頭や海外発の都市型フェスの上陸、そして最近では映画『とんかつDJアゲ太郎』の上映など、DJがより身近に感じられるようになったのではないだろうか。
コロナ禍でイベント出演が制限されるDJ
DJプレイを披露するためにクラブへ何度となく通い、ダンスフロアで踊る聴衆の前で選曲したダンスミュージックをかける。
同じ空間で音楽を共有しながら、体を揺らしたりお酒を飲んだりしてナイトライフを満喫する。
経験を積んだり、人脈を築いたり、チャンスを掴んだり…DJにとって、クラブやイベントといったリアルな場は欠かせないものだ。
しかし昨年、予期せぬ新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な蔓延によってエンタメやイベント業界は多大なるダメージを受けてしまった。
相次ぐイベント興行の延期や中止。営業自粛に追い込まれ、廃業を余儀なくされるクラブやライブハウス。
こうした中、現場で活躍するDJにとってもイベントへの出演機会が激減し、活動自粛に追いやられる事態となった。
DJのライブ配信につきまとう“権利処理”の壁
活動の場所を失ったDJは、表現の“場”を「リアル」から「オンライン」へと求めた。
クラブでのDJから、オンラインによるライブ配信へ切り替え、DJ活動の継続に励んだのだ。
だが、そこには一筋縄ではいかない“権利処理”という大きな壁が立ちはだかっている。
音源の原盤を持つ音楽レーベルやレコード会社から使用許諾を得るための「原盤権(著作隣接権)処理」と、楽曲制作したアーティストから使用許諾を得るための「著作権処理」。
どちらもオンライン上でDJプレイを“合法”に行うためには必要な処理であるが、現行法に沿ってDJを行おうとすれば、プレイリストの楽曲全てに対してレーベルやアーティストから使用許諾を得るためのアクションを起こさなければならない(自作の楽曲や著作権フリーのものは除く)。
本件の詳しい説明は弁護士の水口瑛介氏が記載したこちら(https://note.com/eisukemizuguchi/n/n932136d2c9e4)の記事が非常に参考となるわけだが、要はYouTubeや17LIVE、Pocochaなど、動画配信プラットフォーム上において著作権法に則った形でDJプレイを行なわなければ、場合によってはアカウント停止処置を受ける可能性があるということ。
ネット上では、上記の内容を知らずに配信したことでアカウントが停止された、対象の配信が削除された、といった声も見られる。
コロナ禍でテレワークが推奨され、リモートワークやオンライン会議が普及するビジネス業界とは裏腹に、DJ業界はオンライン化への移行に対して二の足を踏んでいるのが現状なのである。