Clubhouseのオマージュアプリ“Crabhouse”誕生秘話 開発者がサービスにかける思い

Clubhouseのオマージュアプリ“Crabhouse”誕生秘話

 最近話題を呼んでいる、招待制の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。

 “音声版Twitter”との呼び声も高く、一般ユーザーはもとよりインフルエンサーや芸能人もClubhouseのアカウントを開設し、新たなムーブメントを巻き起こしている。

 コロナ禍でリアルでの出会いの場が減り、人間関係の希薄化が際立つ中、Clubhouseは音声で気軽に繋がれる新たなSNSコミュニティとしての側面を持っているのが特徴だ。

 国内外問わず、普段関わることのないような人の話を聞くことができ、時にはスピーカー(話者)として自分の意見を発することもできる。

 ClubhouseはこれまでのSNSにはないユニークさを秘めており、ユーザーによって雑学や教養、情報収集、ビジネスなど様々な用途で利用されている。

 しかし一方で、急速にサービスが広まったことによる揺り戻しも見られるようになった。

 招待制アプリということで、当初は特別感や真新しさでユーザーが飛びついたものの、「意識高い人の集まり」や「クラブハウスマウント」などと揶揄される言葉が広まり、早くも“Clubhouse疲れ”を感じるユーザーも出てきている。

 さらに最近では、Clubhouseの音声データが中国政府に筒抜けとなっている可能性が取り沙汰され、セキュリティ面の不安も浮上した。

 今後の動向や一挙手一投足が注目されるわけだが、ブームの最中に“Clubhouse”ならぬ“Crabhouse(カニのおうち)”というアプリが登場し、本家に負けじ劣らずな「バズり」を見せた。

 Crabhouseの開発元は株式会社GAIBAKO代表取締役社長/トライバルデザイナーのGAI氏。

 一体どのような経緯からCrabhouseを立ち上げたのか。そして、サービスにかける想いとは何か。

 その真相に迫るべく、GAI氏に直撃取材した。

複雑なゲームは時代錯誤。シンプルで面白いものだからこそ、受け入れられる


 GAI氏はUnityプログラマーでありながら、細密画やトライバルデザイナーとしても活躍するクリエイターである。かつてはDJやフォトグラファー、イベントオーガナイザーなどマルチな活動を行っていたことから、常に“面白いこと”へのアンテナを張っている、というバックボーンを持っている。

 それゆえ、本家のClubhouseが日本で話題になった頃、GAI氏も流行りに乗ってダウンロードしたそうだ。

 しかし、使い方が全くわからず、「『もっとシンプルかつ楽しめるものはないか』と考える中で「Club」ではなく「Crab(カニ)」にするというアイディアが降って湧いた」とGAI氏は言う。

「最初は語呂合わせですね。Clubhouseをもじったオマージュのアプリを作れば面白いのではという思いがありました。『「Crab(カニ)』の『house(家)』なわけなので、みんなが集まるカニの家を作ろうと。アプリを開くとカニが現れ、何気なしに眺めながら癒される空間を作りたかった。カニの増減を楽しんだり、吹き出しから現れるカニの声やゆるいBGMを聞いたり。シンプルイズベストという言葉がありますが、今の時代は複雑なゲームだと受け入れられない。Crabhouseも『誰もが簡単に楽しめて、かつ面白くてネタになるもの』を意識しましたね」

流行っているうちにリリースすれば“バズる”可能性が高い

 またCrabhouseの着想から開発、リリースまでわずか3日で行ったことも特筆すべきことだろう。

 なぜスピード感にこだわって開発を行ったのか。リリースまでにどんな苦労があったのか。

 GAI氏は次のように吐露する。


 「Clubhouse疲れやフリマアプリで出品される招待枠などに対して、皮肉っぽい雰囲気をゲームで表現したかった。連日のようにSNSでClubhouseに関する投稿が見られたので、『これは流行っているうちにリリースした方が、大勢の人の目に留まる』と考えました。これはアプリダウンロード以外にも当てはまると思いますが、サービスが伸びる要素は3つあります。まず、ローンチする時期、次に話題性、そしてスピード感。特に急激に伸びるサービスは落ちるのも早いので、人気が落ちる前に仕掛けた方がいい。まさにスピード勝負なわけですね。これら全ての要素を加味してCrabhouseを3日でリリースさせました」

 リリースするにあたって最も苦労したのは、“カニの出現する位置を決めること”だったという。

「実を言うと最初の段階ではカニの出現位置が全部一緒だった(笑)。でもそれだと意味がないことに気づいて。ユーザーが端末からアプリに入った時に、カニをどこに出現させるかというロジックを考えるのがすごい大変でしたね。ユーザーによってスマホ画面のサイズが違うため、そこの塩梅をどうするか。色々と試行錯誤するうちに今の形に落ち着いたのですが、ロジックを組み立てるのに丸一日かかりました」

リリースから2日目で取材殺到。6万ダウンロードを達成

 2月7日の日曜にCrabhouseを無事リリースし、GAI氏のTwitterでも投稿したという。ただ投稿した初日は、通常のツイートと同じくらいのリツイート数だったそうだ。

「リリース初日はあまり手応えを感じられず、バズる兆候もありませんでした。ただ、翌朝になってから急に広がり始めたのです。月曜の朝でちょうど通勤の合間にTwitterを見て知った人がリツイートしてくれたことで、一気に伸びたと思っています。その日のうちに2万リツイートくらいまで到達し、そこから取材依頼が殺到しました。夕方には日本テレビ『news zero』の取材を受けるなど、2日目は想像を遥かに超えるバズりを経験した。Webメディア、動画メディアなど、あらゆる媒体に露出してCrabhouseが注目されるようになりましたね。こうした反響のおかげもあり、2日で6万ダウンロードまで到達できました。あまりにユーザーが一度にCrabhouseへ接続したことで、一時はオーバーフローの状態になってしまい、『カニが出現しない』という不具合も発生するくらいの盛り上がりを見せた。現在はサーバーのアップデートをかけて対応したので、以前よりは負荷に耐えられるようになっていると思います」

Crabhouseのロゴ

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