ももクロプロデューサー・川上アキラ×『ABEMA PPV ONLINE LIVE』仕掛け人・藤井琢倫が考える 2021年、オンラインライブの課題と進化
オンラインライブにおける現場の課題
―― 現状、オンラインライブにおける課題はどんなところにあると思いますか?
川上:藤井さんとは立場が違いますけど、アーティストマネジメント側はお客さんとの共通の体験をする時間をいかに楽しんでもらえるかを中心に考えています。その方向性は多分通常のライブをやっているのと配信ライブやっているのと変わらない。だから先ほども言ったように「今の僕らにできることを突き詰めたエンタメ」を作るという考え方が一番大事ですね。
オンラインライブの技術がしっかりあることは確かです。アイデアも。ただ、実際に形にしようとすると費用やマンパワーなど、まだまだいろんな制約がある。そこが追いついて一緒に伸びていけたら、もっとすごいことになっていくのは間違いないと思います。
藤井:確かに、今の技術を最大限生かそうとすると膨大なコストがかかりますよね。本来はアナログだったものをオンライン化するとコスト構造が大きく変わり、利益改善につながるはずなのですが、まだファンの方々に何が喜んでもらえるのかを色々と試しているフェーズでコストをかけたライブが中心ですよね。
―― では、その課題を解決していくためにはどうしたらいいでしょうか。
川上:昨年夏にも、藤井さんたちと『ももクロ夏のバカ騒ぎ2020 配信先からこんにちは』でご一緒させていただいて、ひとつのマリーナを借り切ってライブハウスではできないようなライブを配信しました。今回の映像技術を駆使した『PLAY!』も、いずれもその時期にお客さんに提供できる最大限のライブを作ることを意識しています。お客さんを入れられないのであれば、入れられない状態でのベストを尽くす。方法はどうであれ、それだけを大事にしています。いつだってお客さんが一番なので。
藤井:リアルライブと違う点として、技術だけでなく演奏する場所の選択肢が広いという点はありますよね。2020年のオンラインライブは無観客なのに大きな会場でXRを駆使したコストも大きくかかるし、派手な演出をするアーティストが多かった印象があります。でも、たとえば思い出のライブハウスで行うとか、コロナで卒業式ができないから学生のために学校でライブをするとか、カラオケ店を復活させるためにカラオケ店を使ってライブをするとか。映像もスマホで見ている人が大半です。極端な話、スマホで撮影してもいいのかもしれません。ビジネスにしていくためのチャレンジはまだまだできると思います。
川上:単純に、「ライブはライブハウスでするもの」という固定観念があると思ってて。『ABEMA PPV ONLINE LIVE』の技術があれば場所の制約なくVR、XRなどを使って画を変えて、場所の特性に合わせた企画が実現できる。
藤井:今後リアルライブが戻ってきたときに、「オンラインライブはコンセプト重視で」などの棲み分けが生まれてくるのかなと思います。
川上:オンラインライブはオンラインライブで好きなので、リアルライブが戻ってきても残り続けて欲しいですね。「どんな技術を使って演出をしたら面白いか」はやってみないとわからない。オンラインライブではまだまだ試せることがあると思います。
―― ももいろクローバーZのメンバーの方々は、今回の『PLAY!』の手応えをどのように話されていましたか?
川上:終わった後の満足度や興奮度は、通常のライブと変わらないくらいのテンションでした。夏のライブはある程度想定内だったというか、通常のライブの枠組みでも考えられる範囲でのことだったんですけど、今回に関しては「ライブってこうだよね」という感覚がガツっとハマった感じがありましたね。カウントダウンラウンジとか、視聴者の投票でリアルタイムにセットリストが変わる演出など、視聴者と一緒に作っていく感覚がアーティスト側の高揚感につながったと思います。
藤井:ライブが終わった後のコメント、感想合戦がめちゃくちゃ盛り上がるんですよね。モニター上にお題を出して、視聴者の方々にコメントしてもらうんですけど、アクティブ率がめちゃくちゃ高くて。
川上:ももクロのファンは昔からコメントと親和性が高いんですよ。コロナ禍に限らず配信はずっとやってきていたので。リアルなライブのときも終わってからの感想合戦が醍醐味なとこもありますし。
例えば『灰とダイヤモンド』って曲の中で「砂にまかれても」という歌詞を佐々木彩夏が落ちサビで歌いあげるところがあるんですけど、曲が始まったときから「今日は巻かれないぞ」と皆でつぶやき合うっていうお約束があって。で、「砂にまかれても~」ってなったら「まかれた~」ってなるっていう(笑)。それはコメントをしながら楽しむ文化ですよね。 こういった文化が生まれたのは、実況をしながらというところからですよね。